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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第二章

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64 隠蔽された森のリリック

白い議事堂(ホワイトルーム)の片隅の、私の部屋にアシェルが来た。

この王女の絵本を見せたら、

アシェルはとても難しそうに眉を寄せ顰めっ面をした。


「これ?どうやって見つけたの?図書館のリストに載ってたの?」


「そういえば、この本、エヴリンが見つけたの?」


「これは、ミカエル様が持ってこられたのですわ!

『山の塗料』が載っていると仰られて。

アリス様が『山の塗料』を調べていらっしゃるのを知っていましたわよ?」


ミカエルがあの会話の後、絵本を見つけてくれてエヴリンに渡してたとは知らなかった。


「ミカエル·········?」


アシェルは怪訝な顔をして、


「あっ!覚えてるよ!ライラックシティで一緒になったって言ってた役人の男でしょ!?なんで図書館で会ってるの!?」

と騒ぐ。


「ア、アシェル。ミカエルとは、偶然会ったのよ?」

私はアシェルの勢いにおされて、言い訳も辿々しくなってしまう。


「まさか········あ、あ、逢引········」


アシェルは動揺している。呂律も回らないなんて。


「アシェル様!落ち着いて下さいませ!そんな風にいつもいつもお疑いですと、器の小さい男と見なされ、アリス様に嫌われてしまいますわよ!」


エヴリンが慌ててアシェルを宥めてくれた。


「はっ! それは困る!

··········ごめんよ。僕、アリスの事になるとおかしくなっちゃうんだ」


「ふふっアシェル様ったら」


「へへ·····」


「は、はは·······」


空笑いしたのは私だ。

エヴリンは丸く収まったとお気楽に笑ってるけど、私は正直反応に困る。

このぐらいで、文句言われたら堪らないわよ?



「だけど、この絵本の話、本物かなぁ?」


「偽物なんてあるの?」


「偽物っていうか、ディスィジュエス共和国では『建国物語』って有名だから、それを真似た王女が主役の二次創作物語が流行った時期があるんだよ」


「なるほどです。そういうの、二次創作物語って言うのですわね」

と感心するエヴリン。


「やっぱり!なんかおかしいと思ってたのよね。王女が木人形にお化粧して一目惚れなんて。しかも秘密の恋人よ?

まあ面白いかもしれないけど、俗っぽいかなぁって。

おまけに、最後結婚しちゃうのよ? 他のお話で違う人と結婚してたよね?」


「いや············」


「んっ?」


「···········これ以外の物語には『王女は18歳になって結婚した』としか記載はないんだ」


「でも、【森の王女と意地悪な結婚】のお話の筋からすると、ぽっと出のこの男と結婚したとなると、あまりに唐突じゃない?」


「そうだけど·······分からない、この【森の王女シリーズ】は別に話の構成が上手だから評価を得ているわけじゃないし」


「確かにそうね。史実を元にしてるのがウケてるのよね?」


「そう。『建国物語』研究会が一番気にしてるのはその叙情詩から拾える歴史的事実なんだ。

つまり、物語として優れているかどうかは問題じゃない。それに、そもそも作者は数名いるって話は前からあるんだ。」


「へぇ~じゃあ昔から二次創作が存在してたってこと?

しかも史実を元にした二次創作?

じゃあ、この話からも史実は拾えて、研究する価値はあるのかしら?」


「まあね、『山の塗料』と『魔法使い』については大いに興味があるな」


「私もよ。

だって、『魔法使い』が北の森で『山の塗料』を採集したんでしょ?もっと調べれば『山の塗料』への大きな手がかりが見つかるかも!

こうなったら、やっぱりこの絵本を研究会へ持って行って、皆で調査しましょう」



「うーん、止めておこう」


「え?何て?」


「うん、この絵本を『建国物語』研究会に持っていくのを止める。

··········この『妻子持ちの中年男』がさ、ミシェルとかぶるからさ。また現実と史実をごっちゃにされてもさ」


「ええ········」


「あら、考え過ぎではないですか?

この世の男性の何%が妻子持ちだと考えていらっしゃるのですか?」


エヴリンがツッコミを入れているが、

私もミシェルに関しては嫌な予感がするのよね。



こうして、


この【森の王女シリーズ】の怪しい異色作はアシェルによって隠蔽されたのだ。


読んでいただきありがとうございます!

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