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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第二章

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60 節度を持つようにと言われる私 

私は会議から追い出されてしまった。


込み入った話だからとミシェルが私とアシェルに席を外すように言い、私はアシェルの案内で戦車の内部を見学していた。


ハッチからはしごで中へ下りると、内部は思った以上に狭くて圧迫感がある。


部屋を見渡すと人影が。

そこにはアシェルがもう一人座っていてびっくりした。

顔はこちらを向いているけれど、視線は天井を虚ろに眺めている。怖い。


「あ、これ?これ乗り換える為に持ってきたんだ」


「?」


「戦車ってものすごく揺れるからさ、あ、もちろんアリスの木人形も乗せてきたからね!」


もしかして、酔い止め対策!?


「それなら、最初から木人形で来れば良かったんじゃ······」


「何言ってるの?アリスがせっかく本体でディスィジュエス共和国に来てくれるのに、僕だけが木人形だなんて失礼でしょ?」


「えええ?そうかな·······」


そう言って木人形に乗り換えて涼しい顔をしているアシェルは、どこかズレている。

もう衣装のように着替える感覚だ。

さっきのスキンシップを交えた感動が半減したと思う。


「私はこのままでいいわ······」

せっかく本体に戻ったのが嬉しいので、私はこのままでいたいと思う。

それに、もう本体から木人形へ乗り移る方法が分からない。きっとすごく訓練が必要なのだ。




会議は終わり、真っ青な顔のカインが戻ってきた。


きっと大人に囲まれて、国の行く末を決める大事な話をして疲れたのだろう。

カインだって私と同じ歳なのに、王太子という立場から誰も子供扱いしてくれない。それに今は王も父である王弟もいないのだ。母である王弟妃は心労がたたって城から離れた実家で静養中らしい。

ちなみに王妃である私の母も同じく実家に戻っている。


············そして今日、私だって遠くへ行く。


「カイン?大丈夫?」


「···········うん、大丈夫!しっかり断っておいたから!」


「え?何を?」


カインはアシェルを見た。


「騙されたよ。君より君の上司の方がよっぽどヤバい奴だったよ。あの人、50代だって自覚あるの?·······全く何考えてるか分かんない奴だよ」


「うん、あの人イカれてるんだ。だからこそ、あの地位まで上り詰めれたという一面もある·········」


「なるほど」


カインは頷いている。


「!?何!?二人とも仲良くなっちゃってる!?」


私は置いてけぼりをくらって慌てた。


「実は僕、あの人の息子なんだけどさ」


「!?」

カインは知らなかったようで驚愕の顔だ。


「アリスが生まれた時さ、多分僕はもうすぐ2歳って時だったんだけど、母とは離婚、僕は養子に出されてさ。その時のミシェルの発言が、

『彼女がこの世界に生まれて良かった』

だったんだって。

皆、愛人にその子供が生まれたから離婚するんだって思ったけど。それから再婚するわけでも子供を引き取るでもなし、謎だったんだって。

今考えると、あれアリスの誕生のことだったのかなって」


「何、それ·········俺は本気で怖い·······吐きそう······」


カインはますます青ざめて座り込んでしまった。


うん、『建国物語』マニア、引くよね。

ミシェルのそれには『建国物語』の『王女』の話から始めないとだわね············

私はカインに『建国物語』クラブの話とそこで聞いた話も掻い摘んで話した。


「それなら、俺も知ってる話だな。前世······いやかなり昔に読んでたし」


「そうよね。二人で読んだもんね」


前世の子供時代に二人で読んだのをちょっと思い出す。

私達はアリスとカインの思い出より前世の右月と敦忠の方が断然多い。私はあまり前世を覚えてないのが残念ね。

カインと目が合ってふふっと笑いあった。


「ねえ、二人は兄妹だよね?アリスからそう聞いてるけど!」

アシェルが焦ったように聞いてくる。

カインがムッとした顔をした。

「義理だけどな」

「アシェル!()()よ?」

「義理でも姉弟でも何でも!節度を持ってよ?」

「···········節度って、さっき叱られて小突かれてた奴が言っていいセリフじゃないな」


「·······って義理ぃ!?」

「私達は従姉弟なのよ」

そういえば、アシェルに言ってなかったかもしれない。

じゃあ結婚できるじゃん!完全に浮気じゃん!

と騒いで困る。


カインもアシェルの嫉妬深さに辟易していた。


「本当に困った親子だよな········じゃあさ、その調子で息子のお前が責任持って父親の王女への暴走を止めてくれよ」


「···········善処するよ」

暴走って?否定はしないのね、アシェル。


「本当に頼むよ。もうこの国は消えたっていいんだから。君の国の一部にしてもらえればさ」


「カイン!?会議ではそんな話をしたの?

だめよ。国は残さなくちゃ。せめて名前だけでも·······」


「アリス」


カインは真面目な顔をしていた。

少し怒ってる?


「気づいてた?········この国の王族はもう君しか残っていないって」


「えっ········でも、他には·······?」


確かに、いない?

先の度重なる内戦と戦争と今回の空襲で、王族は尽く、臣下へ降嫁した元王族ですら亡くなっているとカインは言う。

私は突然に現実を付きつけられて、頭が動かなくなった。


「僕も父も王ももう死んでるんだ。

生き残ったのは、君ただ一人だ」


「············」

あまりに重い現実に私は固まってしまう。


「この国はもはや君そのものだ。これ以上ないくらいシンプルだ。名前が消えようが、国が消えようが君が残ればいい。

だって考えてもみてよ、王族のいないエヴァグリーン国に何が残るの?それならディスィジュエス共和国になったって変わらないって。後は生活ができれば十分。

皆もう国に望むことは他に無いんだって。

豊かさだけならきっともうすぐ隣から雪崩込んでくるから」


「そ、そうなの?」


経済的な援助の要請は上手くいったようで良かったと、私は胸を撫で下ろす。

カインの大仰な話はまだ終わっていなくて、徐ろに私の手を握って真剣な眼差しを向けていた。


「だからお願いだ。

誰にも自分を蹂躙されないで、節度を持って生きるようにね?」


「へっ」

どういう意味?

手がますます、ぎゅう〜と、痛い。


「ねえ、アリス」

アシェルが、後ろから肘を突いて、もじもじして聞いてくる。


「僕との結婚の話カインにした? このシスコン手強そうだよ。早くしてよ。アリス修道院に入れられちゃうよ·······」


「今、できる雰囲気だと思う?」


私は顔を引き攣らせて答えた。


読んでいただきありがとうございます!


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