59 白い結婚は誰がために カインside
久々にカインの視点です。
(追記:2025.3.24)
言葉のイメージの相違から、『編入』から『併合』に戻しました。m(_ _)m
「この王女の『白い結婚』とは?
『人質』という話ではなかったのですか?」
サディスが険しい顔で質問する。
条約を確認する側近たちからも疑問の声が飛び交う。
「カイン王太子!ご覧下さい!」
俺の隣に座るサディスが書類を突きつけてくる。
急いで確認すると、確かに『人質』と記載されている書類と『白い結婚』と記載されている書類と二部ずつあるようだ。
『結婚』とは、アリスにとって穏やかではない。
ミシェルが、子供だからとアリスとアシェルを追い出したので、当の本人はこの場にいない。
「それは······」
ミシェルは言い淀んだが、続ける。
「我が国でも協議をしたところ、一番これが国民の納得を得られるという結論に達しました。
失礼ながら、我がディスィジュエス共和国とエヴァグリーン国との経済的な格差は大きい。
周囲国の安定は国防上我が国にとっても重要とはいえますが、ここまで完膚無き状態では、今更多少の軍事的な援助をしても巻き返しは不可能でしょう」
「むむっ、しかし、それなら敵国カメリア合州国との講和を仲介してくれるという話は?」
某重役貴族が思慮深く尋ねる。
「もちろんします。
しかし、私はその前に両国の『統合』を提案したい。
一つの国となってからならばこちらも軍事につぎ込みやすくなります。我が国は戦局を打開するだけの用意はあります。カメリア合州国を叩きのめしてから休戦に持ち込む。講和はそれからです」
「とっ統合!!? 一つの国!!?」
王の側近と重役の歴々は顔を一斉に青ざめ顔を見合わせる。
「一つの国になるにしても今の状況であれば、『併合』という、我が国にエヴァグリーン国を吸収する形が自然ではあるのですが、それでは実質エヴァグリーン国の消滅になってしまいます。それでも援助は行き届かせ、新しい国民に不自由はさせないつもりですが·······」
「『併合』すれば、消滅··········」
『併合』とは、複数の物を合わせて一つにする事で、一つの大きな物へ他の物が取り込まれるイメージだと思う。
それに対して『統合』とは、複数のものを一つに合わせてまとめる事で、それぞれを潰したりはせずに形を残したまま、一つのまとまりの中に入れられるイメージだ。
エヴァグリーン国にとっては地域名と権限が残る『統合』の形が最善だとは思う。
もし、どちらも行わずディスィジュエス共和国からの援助を受けられなければ、エヴァグリーン国はカメリア合州国の占領地となり果て、蹂躙され尽くし全ての富と資源は搾り取られ、国民を待っているのは貧えと死のみだ。
もはやこの国を助けようなんて国は他に皆無なのは皆、分かっていた。
「私は学生時代より歴史学を専門としてきました。この国の永き歴史には最大の敬意を払いたいと思っています。
今の両国のバランスの片寄った状態で『統合』は国民に理解が得られません。
元は一つの国であった両国です。王族の結婚をもって、王の権威と経済的な富とが統合し、新しい一つの国に生まれ変わることに歴史的大きな意味があると思うのです」
なるほど王族とは便利なもので、要はその血を結婚という形でディスィジュエス共和国に提供することによって、エヴァグリーン国の名実は消滅せずに残してくれるというのだ。
「王女が結婚をすれば『統合』
このまま人質であれば『併合』
それ以外は我が国は援助を考えておりません。
·············どちらでもそう悪い提案ではないと自負しております。どうかご決断ください。
私としましては、アリス王女と、恐れながら··········国家元首であるCP党党首のミシェル•カエーデ•フウ、私との結婚。
それが、悠久の歴史を誇るエヴァグリーン国の名を残す唯一の方法であると、ここに断言いたします」
一国の命運をかけて、会議は踊る。
皆一様に険しい表情だ。
「バカな、アリス様はまだ12歳だそ!?
まだ結婚できる年齢ではない!」
サディスが激昂している。
「はい。だからこその『白い結婚』です。
つまり、これは偽装結婚なのです」
俺はぴくりと眉を動かす。何を言い出したんだ。
「········偽装結婚?」
「はい。古より、結婚しても夫婦の間柄にならない形式だけの結婚をこう呼びました。
アリス様におかれましてはまだ12歳ですが、18歳ということにしていただいて、私と形ばかりの婚姻を結んでいただきます。
本来の18歳を迎えられましたら、離婚はして差し上げられませんが、名前を変えて他の方と結婚して新しい人生を送っていただいても構いません」
「········ミシェル。そんな都合のよい嘘を信じるわけにはいかない。それでは貴方の利点は何もないではないか?
·····後継ぎはどうするんだ」
「ありますよ?私には十分に。これが叶えば名実と共に大国がこの世界の東に誕生するのですから。
後継ぎは私に必要ありません。
私ももう50代後半で身体が弱く子供は望めません。今はこのような医療用木人形に入っております。
しかし、今後アリス様の血を継ぐ者達にはそれ相当の役職を約束いたします」
ミシェルは笑う。不敵に笑う。
俺の背筋にはびっしり汗が伝っていた。
「なるほど·····そこまで領土を広げたいか」
納得している側近達もいるが、おかしい。
『白い結婚』と言い出した時点でおかしい。
結婚できる年齢の16歳じゃないのもおかしい。
後継ぎが要らないと言い切るのもおかしい。
完全に優位な立場であるはずの側が持ち出す話ではない。
おそらくは、俺がこの話がどんなに好条件であろうと渋ると完璧にリサーチした結果なのだろう。
どこで聞きつけたのか知らないが、恐ろしい男だ。
それによく考えたら、我々に選択を迫っているようでその実は『人質』でも『白い結婚』でもアリスはディスィジュエス共和国へ手に入れるという周到ぶり。
俺はぞっとした。
俺は心配顔の重役や側近、貴族達の顔を見渡す。
「······これは、国の進退を決める重大な決断だ。
とはいえ、これはアリス王女の個人的な問題でもある。ごく僅かな身内である俺に決断を託してもらえないだろうか?」
皆頷いてくれた。
相手の真意の測りかねない契約は結ぶべきではないと
俺はここに断言する。
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