55 夜の闇と裏腹の心
『36 (8年前) わたしたちはここで会ってはいけない』
以前掲載の⬆と合わせて読んでいただくと理解が深まると思います。
「滅びるって···········ダメダメダメ!
私は大丈夫だって!自分で何とかするしさ!
カインは思い詰め過ぎだって!」
「カイン様、アリス様のご様子を伺う限りでは心配ないのではないでしょうか?
あの国は政権争いよりも、経済界での争いが激しいと聞きます。CP党内に守られていれば安全でしょう。
それに···········このまま、この国にアリス様のお体を留めて置くほうが命の危険だと思われます。
アリス様の身の安全を保証するような盟約をCP党首としっかり交わしてはいかがでしょうか?」
「うん、このまま一緒に死のう」
「「············話、聞いてない」」
青褪めた3人は、話の決着は後回しにすることにした。
空襲警報は止んでいたので、みんなシェルターからのそのそ出て自分の配置へ戻って行く。
カインは大分弱っていて、私達は支えながらカインを部屋へ連れて行った。
カインをベッドに寝かせて、サディス様が挨拶をして立ち去ってからも、私は傍らの椅子に座って見守っていた。
「アリス··········」
ふと、私にカインが小さな声をかけてくる。
「カイン?寝てなかったの?休まないとダメだよ」
私はカインの手を握る。
「············戻って来てくれてありがとう」
「ふふ、『なんで帰ってきたの』と言ってたのに、相変わらず心が裏腹なんだから·······」
「でも、分からないんだ。アリスに此処にいて一緒に死んで欲しいのか、例え別の場所でも生き延びて欲しいのか」
「うん。私もカインに生き延びて欲しいよ」
カインはなぜか不思議そうな顔をした。
「アリス、·········俺は木人形だよね?
木人形も死んじゃう?」
「!?」
「あの時、アリスが俺を呼んだんだ。俺は··········何処か遠くで寝ていたけど強く引っ張られて·············聞こえたアリスの声が懐かしくて、急いで目を開けたんだ」
「カ、カイン········ダメ!思い出したらダメだよ·····!し、死んじゃう!木人形も死んじゃうのよ!
自分を疑ったら消滅しちゃう!」
私は狼狽えた。木人形は自分の正体を知ると、自分の存在に疑いを持って魂が消滅してしまうのだ。
私もいつの間にか当時の事を思い出していた。
城の亡くなったはずの人達を木人形にした事。魂が消滅しないように皆の記憶を消して回った事。自分の記憶も消してしまった事。
カインは優しく言った。
「大丈夫だよ。俺はもうとっくの前に思い出してたから。
あの時·······目を覚ましたら、泣いている姉さんがいた。何度も呼びだしておいて、その度に俺が敦忠だって分かると決まって泣いたよね。
あれは、他の誰かを呼んでいたの?」
「···············」
「そうだ、きっと、この身体の本当の持ち主の魂だ。
それが分かったから、最後に呼び寄せられた時、俺は知らないふりをした。だって、もう姉さんを泣かせたくなかったんだ。
そうして暫くは本当に忘れていた。俺がこの身体にとって偽りの魂だってこと」
「カ、カイン、どこにも行かないで、偽りだなんて言わないで·············」
死なないで·····
私は泣きながら必死でカインに縋った。
私は身体を起こしたカインに抱き締められる。
「行かないよ。だって俺は姉さんに作られたんだよ。俺が姉さんを疑うわけないじゃない?
姉さんがいる世界が俺のいる世界だから」
私達は抱き合ったまま、いつの間にか泣きつかれて寝てしまったみたいだ。
目が覚めると、辺りは真っ暗でもう夜中かもしれない。
カインは隣ですやすや眠っている。
「カイン、··············私どうしたらいい?」
独り言を言ってみる。
一緒にここで潰えるのもいいかもしれない。
でも、国のために、いいえ何よりカインに生きていて欲しい。例え木人形でも。
それには私はここに居られない。
「何でカインに聞くの?アリスの意志は?」
急に元気な声がした。
見るとカインが起きて、ベッドの上に座っていた。
えっ········、さっきまで会話も途切れ途切れでグッタリしていたのに?
カインは窓からの月光を背後に、こちらを見つめる双眸は爛々と光っている。
「ところで、何でこんな夜中にカインとアリスが二人で同じベッドにいるわけ?··········これって浮気!?」
青筋を立てている彼は、彼だ。
「アシェル!」
アシェルは私を引き寄せ手にキスをしようとして、
『いけない、いけない』と言っている。
どうやらこれはカインの身体だと思い直し止めたようだ。
「ねえ、二人で何してたの?何もしてない??」
うん、この探るような言い草、とってもアシェルだわ
私は不謹慎にも和んでしまう。
「具合の悪いカインに付いてたのよ。ずっと話してたけど、途中で疲れて眠くなっちゃって·········寝ちゃった」
胡乱な瞳のアシェルは言った。
「全く·········あっちではアリスの中身が無くなって大騒ぎなんだけど。やっぱり本体に戻っちゃってたんだね。
良かったよ、カインの木人形の身体が無いと僕もここに来られなかったよ。
·············で、アリスはどうするの?」
「うん、戻るよディスィジュエス共和国に」
そう言うと、アシェルはポカンと口を開けた。
「え、本当に?ちゃんと悩んだ?」
「うん、それに軍事的協力が得られるならこの身体も持って行く」
「ええええっ!?カインは許したの?」
「私の意志って言ったでしょう」
「そ、そうだけど。なら早くその身体から出てさ、中身だけでも、あっちの木人形に戻ろうよ。意識が無い方がこの身体も龜とかに詰めれるからさ」
私の手をすりすりして本体の感触を楽しんでいるくせにアシェルはずいぶんな言い草だ。自分の生きてるはずの身体が龜に詰められてぞんざいな扱いを受けるのは複雑な気分だけど。
「分かったわ!········えいっ!」
「···············?
アリス、今何かした?」
「···········どうやって中身を移動するのよ?」
思えば以前は意識して本体から抜け出したわけでは無かった。
私は本体から抜け出す感覚がさっぱり分からなかった。
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