54 例えこの国が滅びようとも君は アリスside
「ごめんね········」
「何が!?」
「私、いつも戦争の時いないんだもの」
「とんでもありません! アリス様、私達は戦争にアリス様を巻き込む事が一番怖いのです」
サディス様が真剣な顔をして告げる。
「アリスがあのマロウ家の息子と行っちゃった時は腹も立ったけどさ。これで良かったんだよ」
カインはあっけらかんと話す。
「二人して、そんな寂しいこと言わないでよ。
でもちょうどよかったわ!こうなったら、私もここで最期まで戦う!」
カインとサディス様は顔を見合わせた。
「ダメだよ、アリス。全く·······全然ちょうど良くなんてないよ。よりにもよって何でこんな時に戻ってくるんだよ。ここはもういいから戻りなよ」
「えっ·······!?」
私はカインが何を言ってるのか理解できなかった。
「アリス様、繰り返しますが、私達はアリス様がご無事なら御の字なのです。
こんな所で空襲に怯えさせることもない。
それだけが私達の救いでした。
いっそ、中身どころか外側もあちらの安全な場所へ人質として送れば良かったと思っているぐらいなのです」
「えええっ!?」
サディス様は大真面目な顔だ。
隣国で遊んでいた私にわざと意地悪言ってるんじゃないよね!?
「今までは、あの森の工房で私と近衛騎士のマシューでアリス様のお体を守っていたのですが、さすがにカメリア合州国の空襲が始まってからは難しく。見つかり難い場所とはいえ、攻撃を受ければあの木造小屋では一貫の終わりです。
というわけで、地下の防空壕がある城に戻ってきたのですが·····ここも万全とは言い難い」
「アリス、この国はすごく弱いけれど王族が残っている。
人が優劣を区別する方法には、能力で優劣を見分ける方法と、血で区別する方法がある。王族の血は何だかんだ高い価値がつくんだ。
しかもこのエヴァグリーン国は王の血を絶やさず万世一系で有り続けた歴史のある国だ。血に価値を見出す人々がいる限り、希少価値が付く。戦争に負けたらそれをどう利用されるか分からないんだ」
「そういえば、いたわね。ディスィジュエス共和国には王女と結婚したい輩が、わんさかと」
「だろうね。世界には共通意識として、教育を受けるにも仕事を選ぶにも住む場所やただ買い物したりクラブを利用するにも、特別待遇される存在がある。その一握りに入れば特権階級の生活と人生が約束されるわけだ。
俺達は前世を一般人として謳歌したから想像もつかないよね。
世の中にはその一握に入れないと人間じゃないくらいに考えてる輩が五万といるんだ。
その一握りに入るには色々方法があるけれど、各国の王族ももちろん含まれる。王族はそもそも特権階級の代名詞みたいな存在だからね。要は王族との結婚は手っ取り早い方法ってわけだよ」
「そっか、そういうこと·······」
ふと、世界一の観覧車でVIPルームに案内されたことを思い出す。あの時は運行会社の観光庁への配慮みたいだったけれど、ああいう扱いをいつも受けたい人々がいるってことだろう。
ディスィジュエス共和国にはそういう場所が多いのかもしれない。
「例えばディスィジュエス共和国には王族がいないから、その特権階級に入りたいなら相当な血の滲む努力が必要だろうね。能力にも限りがあるだろうし。せっかく一握りに入っても1代限りみたいな事も多いしね」
「私は一般人の生活しかしないし、興味ないんだけど········」
「まあ、こんなこと知らないで活用せず没落していく王族は多いだろうね。
とにかく世界ではそういう認識の奴らもいるって話。
アリスの生活には確かに関係ない話だけど······結婚する時は注意が必要だ」
私はミシェルの顔が思い浮かぶ。
「そっか、だからミシェルも奥さんと離婚してまで結婚したがって·········」
ようやく納得がいった。『建国物語』オタクなんて言って悪かったかしら。でも株は下がったわよ。特権階級に入りたいから求婚なんて浅ましい。
せめて国の為に結婚というなら、王女としては、政略結婚望むところ、なんだけど。
「ミシェル?」
「ああ、CP党首の名前よ。」
「それって国家元首でしょ?もちろん国家元首はそのままで特権階級の一握りに余裕で入るでしょ。辞職してからも力を持ち続けられれば、一族も入るケースもある。地域によってVIP規定がばらばらだろうけど。国家元首はさすがにね」
あれ?じゃあ何でなのよ。
やっぱりオタクなだけなの?
そもそも、本当に結婚なんて望んでたのかな。
そう言えば、そんな事一切言われてないわよ。
もしかしてアシェルの、勘違い?
「あいつ·····もしかして、アリスに不埒な······」
「ごめん、嘘!別に求婚とか一切されてないから!私って普通に人質なだけだからね?
そうそう、あちらではかなり良い待遇なの。自由に動けるし、頼んだものも用意してくれる。
本当に、不思議なくらいに······」
「それを案じていました······それは何よりです。
そういえば、ディスィジュエス共和国は········我が国に軍事的協力の用意があると打診してきています。
中身だけとはいえ、アリス様本人が人質としてディスィジュエス共和国に赴いたことで信頼を得られたようで、かなりあちらの印象も好印象のようです。
そうそう木人形というのは、あちらでは案外普通の方法なのですね。エヴリンからアリス様に交代して、すぐ木人形と見破られていましたよ······」
「え!?そうなの?」
見破ってもお咎めなしだったのに驚きだった。
それなのに好印象とは、しかも軍事的協力とは何と心の広い国なのだろうか。
「軍事的協力の、じょ、条件は·········?」
サディス様はカインを見た。カインは首を振った。
「アリス王女の本体の引き渡しだよ」
「!」
一呼吸置いて、私は考えた。
私はもう既にディスィジュエス共和国に行ってたから変な感じだけど。今更だし、この際、身体も行ってはいいではないか。
「い、いいじゃないの!それで協力を得られるなら!私行くわよ!」
「ダメだよ。俺はアリスが辱めを受けるくらいなら、王族の血が絶えようとも構わない。寧ろその方が我が国の崇高な精神は残るとすら思っている。
··········例え滅びようとね」
カインは血走った目を私に向けた。
いやいや·········思い詰め過ぎじゃないですか?
王太子様!
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