51 王女の不本意な結婚 アリスside
「アリスはこの世界が【森の王女シリーズ】に似てるなって思った事ない?」
ミシェルが尋ねる。
············ある。
でも、それはちょっと今の状況と似てるな〜って思う事がある程度だった。
「そもそも【森の王女】の王女って実在の人なの?」
「うん。国の歴史書によると同時期にそれらしき人物はいたみたい。アサベル女王っていう·······」
エヴァグリーン国では自国の歴史は勉強するけれど、隣国の歴史となるとそこまで掘り下げて学ぶことはない。
「まず、ディスィジュエス国の建国は、そのアサベル王女が父王からエヴァグリーン国の北半分の土地を与えられた事がきっかけになっている。
エヴァグリーン国の職人を沢山連れて行って、本国が困ったのも本当だったみたいだ。
それと、ディスィジュエス国が合議制の共和国になったのは、女王の連れ去りが起きて王が不在になった間に、皆の合議で国の色々な物事を治めたのが始まりだと考えられている」
「え、求婚者達が交替で王になったというのは合議制のことなの!?
そ、それでじゃあ女王アサベルは本当に連れ去られたのね!」
いよいよ物語が実話らしくなってきたと思い、やはりワクワクしてしまう。
「·········で?そのアサベル王女は結局誰と結婚したの?」
私は一番気になることを聞いてみた。物語には名前など一切出てこないが気になっていたのだ。
「その頃は小さい国が周辺に幾つかあって、アサベル女王はそれぞれの国から政略結婚を申し込まれていたみたいだけど、その内の一人の王子と結婚したんだよ。
北に隣接していたアラゴンという小国の王子だ。そして二人の結婚によって、アラゴン国がディスィジュエス国に吸収される形で、今のディスィジュエス共和国の形になったとされている」
結局は政略結婚ね、私は少しがっかりしてしまう。
「【森の王女】には王女の結婚相手についての詳細が無いからね。でも僕達の研究会では、王女を連れ去った『全身に黒い装束を纏った男』がその王子じゃないかと考えているんだ」
「え!そうなの!?」
「『雪の山を登り氷の湖を渡った』という北に向かう描写があるからね。実際に、北のアラゴン国によるアサベル王女の連れ去りは史実でも起きている。そしてその後二人は結婚してるんだ」
「そうなんだ!?
アラゴン国·······それは歴史の授業で聞いたわね。それにしても連れ去りなんて犯罪を堂々と王族がやっちゃうなんてね。そしてそれが史実にしっかり伝えられてるなんて」
なんだ、王女の結婚相手の記載いっぱいあったのね。きっと最後の誰と結婚したという箇所だけ何らかの理由で消えていたとかそんな感じだろうか。
でも、誘拐された相手と結婚なんてぶっとんでるわね········吊り橋効果で恋に落ちたとか?
いやいや、そもそも政略結婚だし、もしかして不本意だとしたらお気の毒ね·····
あまり歴史に興味無かったけれど、こうして聞くと成る程、なかなか面白いものだと思う。
こうやって『建国物語』研究会が盛り上がっていったのは分かるけど、関係ない私を『王女』に当てはめて盛り上がるのは止めてほしい!
「ミシェルは、ディスィジュエス共和国とエヴァグリーン国の併合を考えてるんだ。
········それにはこの物語をなぞらえる事に何かの利点を感じているんだと思う」
「もしかして、今度はディスィジュエス共和国が『アラゴン』になろうとか?
······要はエヴァグリーン国を優位に吸収したいのね」
ようやく納得がいく。結局はそういう事だ。
「ち、違うよ!本当にミシェルは純粋に【森の王女】を慕って恋をしているんだ········それに、ミシェルはエヴァグリーン国も好きなんだ!古風だって!」
「·········へえ古風ねえ、それって褒め言葉?」
私はどこかで聞いたフレーズだなと思った。
けれど、どこで聞いたかは思い出せなかった。
そして、アシェルって結局ミシェルのこと庇うんだ、と私は二人の親子関係を考えると、ちょっと切なくなってしまう。
「ねえ!パン持って来たよ~」
「ジュース色々あったから、全種類貰ってきた!」
ルートとルーラが手にいっぱい食べ物と飲み物を持って来てくれた。
周りを見ると、噴水周りの広場にはクラブ活動のお茶会やナイトクラブから解散して外を散歩している客がパラパラと増えてきている。外でお茶会が催されている場所もあって、どのお茶会も途中参加OKだそうだ。外も内も全体がお茶会の会場のようだった。
このままフィナーレまで庭園でのんびりするのもいいかもしれない。
「ルートとルーラに聞いたよ。アリス、今日ここ来てから何にも食べてなかったんだって?何か食べないと倒れちゃうよ」
「あっありがとう!」
私は進められるままにパンを頬張った。
「美味しい!ディスィジュエスのパンってしっとりもっちりして、前世の米粉パンみたい!」
「前世って?」
「あっ········なんでもない!懐かしい味ってこと!」
しまった。前世なんてここでは誰も知らないワードなのに。
「アリスは前世、ディスィジュエス共和国人だったのかもね」
「!」
そう言うと、アシェルは優しく笑いかけてくれた。
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