49 王女は18歳に幸せな結婚をする アリスside
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『一人目は紙職人でした。王女に最上級の手漉き紙を献上しました。
二人目はパン職人でした。最高の黄金の小麦で焼き上げたパンを献上しました。
三人目は水道工事夫でした。彼は百年はもつ丈夫な水道を献上しました』
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「なんで一人目が紙職人、二人目がパン職人、三人目が水道工事夫なんだと思う?」
「紙職人についてはだな、当時のエヴァグリーン国の主な産業が、第1産業が木材で第2産業が紙漉きだったということから·····第2産業が北の国で盛んになったという暗示だろう」
「紙漉きの機械が発達して産業革命に繋がり、北の国の方が栄える結果に繋がったんだよな」
建国物語の考察談議は留まるところを知らない。
「パン職人というのは?」
「黄金の小麦というのは寒冷地に強い小麦の品種のことだ。この小麦の発明でディスィジュエス共和国の人口は爆発的に増えたんだ」
「三人目の水道工事夫というのは、時代によって色々変わっているらしいぞ。道路工事夫や、除雪車整備士なんて時もあったらしい。三人目は主に都市開発に必要な職業がくるらしい」
こう聞くと成る程、物語の内容は国の実際の成り立ちを寓意して辿っているような気もする。
【王女の意地悪な結婚】は、とにかくディスィジュエス共和国視点で描かれている。
エヴァグリーン国に関わる記載は北からけしかけられる戦争と、弟王子の姉王女の捜索と病を治す医師だけだ。エヴァグリーン国から分裂したのがディスィジュエス共和国という位置づけなので、エヴァグリーン国の建国はそれよりもずっと昔ということになるし、この話はエヴァグリーン国にとっては建国物語にはなり得ない。
ところで········この『建国物語研究会』の顧問に就任した私だが、この会合はいつまで続くのだろうか?
時間は23:00、もう次のスケジュールの時間だ。
20:00~23:00ディナー/ バー
23:00~3:00 クラブ
3:00 フィナーレ
と、予定表にはあった。
フィナーレには庭園の世界最大の噴水と上空での世界最大の花火ショーとの共演というのをやるので、私はぜひ観たかった。でもそんなに遅くまで起きているのは難しいかもしれない。
23:00〜は『クラブ』とある。
ん?まさか······
「さて、これからクラブ活動の時間です。『建国物語研究クラブ』へ移行しましょう」
皆、満足げに頷いた。
ガクッ
本当にそのクラブ〜!?
それじゃあ、ずっとこの調子で『建国物語』談議の後半戦!?
研究会とクラブに分ける意味は!?
後で聞けば、『クラブ』というのは大人が共通の趣味で集まるときに使う言葉らしい。
ちなみにナイトクラブのような場所もあったらしいが一体どこでやっていたのだろう。
やれやれ·····
私は席を外した。エヴリンは建国物語に興味を惹かれたらしく、そのまま残るというから意外だった。
「まって、僕も行くよ····!」
アシェルが話を打ち切ってこちらに駆け寄った。
「いいの?お仕事じゃあ·····」
アシェルが仕事でこの研究会&クラブに参加しているのかは知らないが、上司を放っていいのだろうか?
「いいのいいの。今日は仕事の名目じゃないんだ。まあ付き合いで強制参加だけど·······大体研究会ならともかく、クラブにまで参加するつもりはもともと無かったんだ」
「アシェル」
少々鋭い声がかかる。党首のミシェルだ。
ほら、やっぱりまずいんじゃ·····
「ほんの数刻です。アリス様にこのお茶会全体を案内してきます」
アシェルも退屈していたのだろう。上司を前に一歩も引く様子はない。
ミシェルはため息をつくと、了承した。
「········いいでしょう。ルートとルーラを護衛に連れて行きなさい。今日は羽目を外したような輩もいるので、くれぐれも注意しなさい」
「分かりました」
アシェルは礼をして、私の手を力強く引っ張って行った。
私達はお茶会の会場を離れて、噴水が見えるベンチに腰掛けた。アシェルが冷たい水出しアイスティーを貰ってきてくれた。
「研究会、すごい熱量よね······」
「でしょ。呆れちゃうよね。たかだか昔話に夢中になっちゃってね」
「でも、謎が多くてつい紐解きたくなるのも分かる気がするわ。史実を叙事詩になぞらえるなんて、ロマンよね」
「まあね······」
「ねえ、もしかしてアシェルが18歳に結婚に拘るのって、前にこのお話でそうだからって言ってたよね?」
私はさっきから気になっていた事を聞いてみた。
すると、アシェルは真っ赤になってしまった。
「ち、違う······いや、違わないか。でも18歳に女性が結婚するのは昔から意義があるんだ。」
「え、そうなの?」
国法では男女共に16歳から結婚できることにはなっている。
「うん、18歳は女性にとって精神的にも身体的にも成熟して充実している時期なんだって。だからその歳に結婚すれば幸せになれるって言われているんだ」
「そうなんだ!」
「この物語も、そういうことから18歳になっているのかもね」
「やっぱり、何にでも理由があるってことかしらね·····」
そう考えると、このお話を紐解くことにもやっぱり意味があって、
エヴァグリーン国も
ディスィジュエス共和国も
両国が幸せになるようなヒントが隠されているのかもと思った。
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