41 交替劇はスマートに アリスside
「えっっ、誰ですの······?」
エヴァグリーン国から来た偽物王女さんは顔を包帯でぐるぐる巻にしていた。持病の湿疹が再発した事にしているそうだ。
ここは貴賓室で、ディスィジュエス共和国の髄が凝らされた最高級の部屋だそうだ。
アシェルのお陰で何とか忍び込めた。しかも警護兵まで退出させてもらえるとは、アシェルの辣腕が素晴らしい。
「あの·······私と交替しましょう。私、王女なんで」
アシェルの手引で忍び込んで来た私は早速提案する。
偽物王女はズザッッとのけぞる。
「はああ!? 曲者!!曲者よ〜!!」
「しっ、しいぃっ〜!!」
とんでもないジャジャ馬感満載な王女の替え玉ね······もっとお淑やかな女性はいなかったのかしら?
ややがっかりしながら、偽物王女の口を閉じて事の顛末を話す。
「あ、あら、本物ですの?そういえばお声とお顔を拝見したことがあるような、ないような·····」
私は10歳くらいまでは包帯を巻いている時が多かったから、顔を見知っている人は少ない。
偽物王女はエヴリンと名乗った。ようやく事情を呑み込めたようで、取り乱した佇まいを整えている。
そして、彼女は丁寧に自己紹介をしてくれたのだが、ジョシュアくんの妹だというから驚いた。
暫しジョシュアくん談議に花が咲く。
彼が大事な妹さんを私の変わりにこんな敵地に送り込むとは。臣下とはいえ酷すぎる。本当に申し訳ない思いでいっぱいだった。
「大丈夫ですの!私は強いので。血の滲むような努力の賜物が、今の私です」
エヴリンは胸を張った。かなりの自信を持っている。
ジョシュアくんの家は武芸の名門なので、娘であろうと例外なく武芸の鍛錬を課して日夜励んでいるらしい。
あれ、替玉ってそういう体力的なの必要かしら。確かに無いよりあった方がとは思うけど。うん、頼りになる!
「じゃっ行こうか!これなら交替しなくても二人で逃げられそう!」
私ははりきってそう言うと、
「はあ?」
「え?」
意外な答えが返ってきてしまった。
「アホですか?ここで私が逃げたら人質としてわざわざ来た意味がないでしょう!?」
「じゃ、じゃあ、私が交替する!服脱いで!」
私はエヴリンの服を引っ張る。
「やめてください!だから!本物の王女の人質はエヴァグリーン国にとっても困るんですって!」
「困らないわよ!カインには私から言っておくから!」
二人共引かず、取っ組み合いの喧嘩のようになってしまう。
「キャー!!えっち〜!!」
突然、偽物エヴリンが叫べば警護兵が集まってしまう。私は舌打ちして外へ飛び出そうとした。
そこへ、アシェルがエヴリンの口を抑えて言った。
「お静かに。カイン王太子へは僕から話を通してあります。速やかに交替をお願いします」
私は勝ったと思った。
ありがとうアシェル······あれ?
「?どうやってカインと連絡取ったの?」
この世界にはまだ電話も無いのに。
「アリスの作った18歳の木人形に僕が憑依したんだ」
「そんなことできるの·····」
「僕だからね。短時間だけなら他人の木人形にも入れる」
あの超絶美女木人形に、アシェルが入るなんて········
私はアシェルを見た。彼は今日も美しい。色彩が白っぽいけれど。
うーん、そんなに、違和感ないかもね。
「うそ!カイン様がそんなこと言うはずないですわ!あなたこの国の人なんじゃない?信用できないですわよ!」
「18歳のアリス木人形が空いたから、それを送るって言ってたよ。それが元々の予定通りだそうだからね。『到着まで1週間ぐらい、それまでは誰が何やろうが好きにして過ごせ』ってさ」
「か、カイン怒ってた·······?」
「そりゃあ、ね。でも主に怒ってたのは僕にかな。
結局アリスを人質に連れ去ったようなもんだしね。中身だけだけど。とにかく盛大に不機嫌だったよ··········
そうそう、木人形と一緒に侍従役にジョシュアも送るって」
「えええ!?お兄様が!?」
こわい······エヴリンも震えている。
二人で暫し震える。
とにかく、一週間は私が責任を持って王女をやることになったのだ。
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