表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/80

4 爆竹と新しい弟 アリスside

「お前が姉なんて認めない!!」



パパパパパンパン パンパンパンパーン!!



·········この事件の幕開けはかなり衝撃的な爆発音だ。

彼の足元を見ると、まだ煙をくゆらせている火薬の残骸が無惨に散らばっている。

前世の記憶で言うと、あの軽快な衝撃音は、恐らく爆竹みたいなものではないかと思う。(前世でも見たことはないけれど。)


私は彼に爆竹を投げつけられるほど嫌われていますの?


ここは城内の庭園。

煙の向こう側には、美しい少年が立っていた。

輝く藍色の頭髪。

切れ長の目に紫色の瞳は煌めき、すうっと通った鼻筋。

それらは白い小さな顔に、幼いながらそれぞれ完璧な位置で配されている。

顔を真っ赤に染めて私を親の敵のように睨みつけていても、内心可愛い。


彼は先日、森の私のクリスマスツリーの下で寝ていた少年だ。

前世まんま弟の姿で思わず笑ってしまう。

いや、眼の色と髪の色や顔立ちはもちろん違うけどツンケンした雰囲気は変わってない。

さっきから、姉じゃない姉じゃないと何回も言っているけどそれでいい。

彼は前世でかなり危ない人だったから、私も他人のふりをしたい。


彼の名は カイン•ブラーシ•ボトルブラシュ。


私は王の一人娘 アリス。

カインは王の弟の一人息子で私達は従姉弟になる。

彼も病気がちであまり外には出られず、数年会っていなかった。

驚くことに、12歳の今まで私達はお互いの顔を知らなかった。


先日サンディス様が教えてくれた通り、カインは私の父である王の元へ養子に入ることになっている。

王には男の子がいないので王太子にということらしい。


義理とはいえ今世でもまたまた姉弟になってしまうなんて、数奇な運命ね·········


城内の東の庭園は、秋の華やかさが散ったばかり。

落葉して閑散とした庭園の隙間を埋めるように常緑樹が配置され、計算された美しさを讃えている。



「お前は、今日はハロウィンなのか!?

顔を隠して飄々として!

俺を嘲笑っているのか!?」


「へっ」


いや、嘲笑ってないけれど。

私の顔から表情が読めないのは当然だ。

頭を包帯でぐるぐる巻きにしているのだから。


「これは顔の皮膚の湿疹がひどくて·····」


この子はデリカシーをどこに置き忘れてしまったのだろうか。前世の姉は悲しい。

言っては何だが、サンディス様とは天と地の差だ。


「皮膚の湿疹···········」


みるみる恐怖で青くなっていく元弟を冷静に眺める。


「大丈夫よ。人に移るものじゃないから」


私は努めて優しく言う。

彼は首を大きく振った。


私、アリスは後悔していた。

ここでやっかいな従姉弟に会ったこと。

部屋に引き籠っていればよかった。


爆発音がまだ耳に残っている。


爆竹といっても火薬、危険物だ。

それをこの王城の庭園で彼はぽいっと投げたのだ。

それが王へ養子入りが決定している王弟の息子殿下だといえば只事ではない。

事件だと言われてもおかしくない由々しき事態だ。


今世でのカインの育てられ方が悪いのかもしれない。心配になってきたわ·····



爆発音を聞きつけて、遅れ馳せながら向こうから近衛兵たちが駆けつけて来るのが見える。既にここにいた数名と合流して私とカインを取り囲んだ。

けっこうな大人数になり、大事になる予感で背筋がひゅっと冷たくなる。

近衛兵たちは瞬時に判断し、私を背にしてカインの前に立ちはだかり、全てがすっかり私の味方についてしまったようだ。

皆一様に、彼を『ヤベー奴』認定してしまったようで険しい顔をしている。


私は改めてこの少年を見た。


今までの過去の記憶を総動員してみても、彼自身の印象が薄い。カインには上に二人の姉達がいて二人共に目が覚めるような美女なのでついそっちに目が行ってしまったのだわ。


「産まれた順は私の方が先よね······」


私は遠慮がちに言った。

そもそも姉か弟かなんて譲ったりするものではないし、王籍上でこれを偽造するのは罪となる、たぶん。

産まれた順は普通変えられないと思うのだ。


「順って、たかだか1時間、いや、正確には55分差だと聞いたぞ!?我々の差は55分!!」


55分とは何て細かい·······

カインは一層怒って真っ赤っ赤になっている。


「えーと、つまり、私と姉弟になるのが嫌ということよね。」


それで、その意思表示に爆竹を投げつけて反抗したのか。

ええ、今世でも私が嫌いなんですね。


「その通りだ!!」


カチンときた。

でも話を聞かないと······冷静に冷静に······


「·······もう、落ち着いてよ。私は貴方が義弟になって········嬉しいわよ?」


彼はますます顔を赤らめて、しかも狼狽えた。


「······っ!? やめろ、違う!もう、姉なんて嫌なんだよ!!」


「大丈夫よ。私きっとすぐにお嫁に行きますから」


「なっ!!はぁ!?」


カインはなぜか今日一番に怒った。

そして近衛兵たちに拘束されて連れ去られてしまった。


·······秋の庭園は再び静寂を取り戻した。



「アリス殿下〜!!」


家庭教師のヒューゴ先生が走ってくるのが見える。


「あっそうだ!先生と約束してたんだわ!」


私は今日はヒューゴ先生と大事〜な用事があるのだったわ。予定外に時間を食ってしまった。


私は溜息をつき、先生のエスコートで庭園を後にしたのだった。


読んでいただきありがとうございます!

よろしかったらブックマーク&評価&感想などよろしくお願いします♪


⬇⬇⬇漆あんかのTwitterへのリンク貼りました!ずずいっとスクロールしていただき、広告の下です! 

お気軽にお越しください〜♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ