36 (8年前) わたしたちはここで会ってはいけない アリスside
どうしよう。カインを何度作っても。
「姉さん」
って呼ぶ。
その4歳の少年の顔は、前世で面影のある顔だった。
そもそもは、カインは前世なんて持たない普通の男の子だと思う。
私のせいでカインを敦忠に作り変えてしまったのだ。
カインと私は姉弟ではないし、そりゃあ従姉弟だけど、会ったことは今までほとんど無かった。
カインは生まれてずっと病弱で4歳の今まで公式の場どころかちょっとしたお茶会にすら来たことが無かった。
ついこの間の内乱で、そんなか弱いカインまで殺されてしまうなんて。
本当に酷いと思う········
カインにならない理由は分かっている。
私がカインを知らないから。
カインの肖像画を見て木人形を作っているのに、いつの間にか前世の敦忠に似てしまう。
何度も何度も敦忠を作ってしまうのだ。
「ねえ、さん」
「もうっ呼ばないでよ!!」
私はヒステリックに叫ぶ。
「生き返らせられない。
私のせいでカインの魂は何処かへいってしまう······」
伏せて泣いていた私に不意に小さな手が掛かる。
「ねえさん。ごめんね、ぼく·······」
4歳の敦忠が謝る。
そしてコロンと木人形に戻った。
たぶん、私の反応を見て、自分の存在に疑問を持ったのだろう。
敦忠は悪くないぜんぜんぜんぜん、悪くないのに·········
悪いのは私だ。
しつこく敦忠を呼び寄せてしまうなんて。
敦忠だってこんな所に来たくはなかっただろう。
死んだはずの人間の代わりになんて、絶対ダメだ。
敦忠にはきちんと生まれ変わって生身の身体で生きて欲しいから。
身体を失った死人の魂を引き留めて人形に呼び込む、
この力は本当に禍々しい力だと思う。
私は天井を仰いだ。
私は諦めず、何十回と作り直して、ようやく『姉さん』と言わなくなったカインは、王弟の家族の元へ戻って行った。
私は不安が拭えず、カインとは極力会わないように心掛けた。
私がカインが敦忠ではないかと疑えば、カインは自分の存在に疑問を持つかもしれない。そうすれば、前世関係なくカインは木人形に戻ってしまうだろう。
私は生き返らせたい全ての人を木人形で生き返らせると、王宮図書室へ通い詰めて、自己暗示について研究した。
私に人を生き返らせる能力があるということは秘密にしなければならない。
どこかからこの話が漏れて、自分に疑問を持ち木人形に戻ってしまう人が出るかもしれない。
疑惑は一人出てしまえばきっと次へ伝染する。
「サディス様!」
「あっアリス様。どうなさったのですか?」
私が廊下へピョコンと現れると、サディス様は駆け寄って来た。そしてわざわざしゃがんで私と顔を合わせ、嬉しそうに微笑んでくれた。
私はドレスのポケットから、紐の先に小石を結びつけた振り子を出して、サディス様の目の前でゆっくり左右に振った。
「アリス様?これは何ですか?」
「あのね·········『お前は何も見ていない』」
サディス様の視線は······右········左·········右と、ゆっくり揺れている。
「は·······」
「【人形】については何も見ていないし、知っていない。よって沈黙する」
「はい···········」
私は何と、暗示の才能もあったようだ。
暫く私はこの暗示を様々な人々にするため、あっちへこっちへ城を駆け回った。
今度アシェルにこの力について聞いてみようかと思う。彼はこういう不思議な力について詳しそうだから。
私はもう使うことのないこの不思議な力を、自分の記憶もろとも封印した。
木人形を教えてくれたアシェルとの思い出も一緒に、
きれいサッパリ消えていたことは、気づかない。
そして8年が過ぎ、ツリーの下で目を覚ましたカインは私を見て言った。
「··········姉さん」
木人形を忘れていた私は、
ああ、敦忠だなぁと思うだけだった。
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