33 (8年前) マロウ家の白い少年 サディスside
「息災だったか?ーーーゲルマン侯爵よ」
「王っっ!?なぜ·······っ私が弑し奉ったはずなのに······!」
「王はお前の磔刑をご所望だ。連れて行け」
そう、スプルース公爵が冷たく言い放つと、兵がゲルマンを羽交い締めして連れて行く。
あぁぁぁぁ〜
遠くなっていく悲鳴を聞きながら、私達はひと息つく。
「父上、あわや内乱を謀反として片付けた手腕は流石です。」
「うむ。陛下に正義はこちらにあるとの主張が受け入れられたからな。掌返しする貴族の多い事!」
首謀者であるゲルマン侯爵はついに捕まった。彼は何の成果も手にしないまま潰えることに恨み言を垂れ流しながら磔刑された。
あのマロウ家の少年と話した後、アリス様は凄い勢いで人形を作っていった。
【森の王女】という絵本を参考にして
木の枝と紐を括っただけの枝人形だ。
私はこれはアリス様が寂しさを埋めるための儀式だと思い、ただ目を瞑るしかなかった。
しかし、
「息災だったか?ーーーーアリスよ」
王の声がした。
王は息を吹き返した。
私達は歓喜した。
「御意に、に、に、王よ」
王弟のボトルブラッシュ公爵も蘇生した。
アリス様は他にも全ての失った城内の人々の枝人形を作ってくれた。
ただ······見た目は同じなのだが、動きがぎこち無いし、会話もおぼつかなく、いつも同じセリフを繰り返している。心はここに非ずといった不具合ぶりだった。
それでも、ぽっかり空いたはずの位置に何か収まるものがあるというだけで、状況は変わる。
王は玉座にいるし、王弟は新しいボトルブラッシュ公爵家の公爵におさまった。
いなかったらこの国にとって不足があるが、隙間が埋まっていさえすれば良くも悪くもこの国は足りている。
そう。内乱による損傷の隙間は全て埋められて、私達の組織は結束が固まった。枝人形の生還者の不具合ぶりは必死で補佐して補った。
アリス様が元にした【森の王女】には、自分が木で作った人形だと知ってしまうと、たちまち魔法が解けてしまうという下りがある。
私達は、この出来事を極秘事項として扱った。
アリス様は最近お元気がない。
原因は分かり切っている。
大事な人を人形ではなく、本当に生き返らせたいとアリス様はいつも言っていた。
「あ、久しぶり。アリスいますか?」
がらんどうになった遺体安置室の前で佇んでいると、唐突に声をかけられる。
見るとマロウ家の少年が気配もなく背後に立っていて、思わずギクリとしてしまう。
何だこの気軽さは!?王女を呼び捨てとは!
「未来の花嫁から手紙を貰ったから来たんですけど、お出迎えが無いんですよね〜」
「アリス様から?嘘だろう····?」
こいつは8歳の私より歳下の6歳だと聞いているが、どうも飄々として大人びている。
その上アリス様に対しては、まだ彼女は4歳なのに、うっとりとまるで絶世の美女を眺めるようにしているのが気持ち悪いし、どうしても許せなかった。
「ふん。他国のたかだか政府高官の息子が偉そうに」
「へえ、そんな事言っちゃうんだ?
僕はアリスが欲しい貴重な情報を持っているのだから、もっと大事にしてほしいな」
「·····どういう意味だ?」
「大事な人を生き返らせる方法だよ。あんなちゃっちい枝の人形なんかじゃなくてね。
僕に師匠になって欲しいって」
「········」
そんな方法があるのか?
「でもすっごい難しい方法でね。僕が教えてるうちにアリスおばあちゃんになっちゃうかもね!」
「なっ」
「でもいいよね?僕たちに時間はまだたっぷりあるからさ········」
そう言って、マロウ家の白い少年はにっこり笑った。
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