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3 後は若い人たちで アリスside

「こうしてゆっくりお話できるのはお久しぶりですね。お元気でしたか?」


晩秋の斜陽がさす庭園で、サディス様は引き続き優雅で神々しい雰囲気を纏っている。


私達は、お見合い定番の『ホホホ、後は若い人たちで〜』『庭でも案内してもらいなさい』の指示を受け、公爵家が誇る巨大庭園を歩いていた。


「ええ!肌の調子は悪いのですが、他の体調は良いのです。サディス様は最近のご調子は如何ですか?」


話しかけられて、つい舞い上がりながらも私は包帯の内側からサディス様を見る。


「今、嬉しいことがありましたよ。

あなたと婚約することができるのは、待ちに待ったとても嬉しいことですから」


サディス様は悠然とにっこり笑って、榛色の瞳を緩ませた。


「なっ」


なぁ!? ちょ、調子いいわよ!


児童を前にして、さすがの余裕!

前世の記憶を持ってしても、12歳の女子児童としてどう返すのが正解なのか、さっぱり分からない。

前世の18歳を足すと完全に30歳過ぎている私。

私、精神は歳上なんですよぉ〜〜!と言いたい。


それなのに、もはや私の心は大人でもなんでもないわ。


今世でもイケメンに弱いのを再確認しつつ、

とりあえず恥ずかしいので俯いておこう。

断じて、

す、好きとかそういうのじゃないからね!


はぁ、何やってもリアル包帯顔面少女なのがイタい。


「······やっぱり、今日はお見合い、なんですわね······」


「······知らなかったのですか?」


サディス様はびっくりした顔で覗き込んできた。私の顔は包帯しかないので、表情は無いですわよ。


サディス様が驚くのも当然だ。本人に知らせないお見合いなんて、本人の意思を全く無視した横暴なやり方だと思う。

まあお見合いだと知っていたら、包帯のこともあるし私は拒否したかもしれないけれど。


「ええ、知りませんでした」


「············まあ、婚約は実は本決まりではないですからね。今日は顔合わせだけです。

でも、アリス殿下のお顔を拝見できただけでも私は幸せなんですよ」


サディス様は今度は言い過ぎたと照れて笑った。


「は、はひ」


えええー!?お顔?一切見れてないじゃん!

そんな、照れてはにかんじゃったら、嫌味なのか一周回って本気なのか全然分かんない。


彼は何なの?

の、乗り気なの!?


ところで、普通に考えても

サディス様と結婚して私って平民になれるのかしら?

いやいやいや、絶対なれないなれない!

公爵夫人でしょ!?窮屈な人生確定、だと思う。


私は前世日本人みたいな気ままで快適な暮らしがしたい。


うわーーーん、

これ以上のストレスはお肌に大変よろしくないと思うのよ。

ただ、今は早く帰って、とにかく一人になって、すみっこで··········

二次元の世界を気ままに鑑賞したい。

ゲームとかアニメとかそういうの。

だからあ、日本んんんんーーー



いつしか会話も途切れて無言になってしまう。

庭園からお屋敷の中に戻ろうと提案しようと思った時、

サディス様は爆弾発言をした。


「······貴女はこれから数名の候補者と引き合わせられるのではないでしょうか」


私は固まってしまった。

数名、という言葉に自分の背筋が凍っていくのを感じる。今回みたいなことがまだあるってこと?

本決まりでないのは安心したけれど、本決まりじゃないのがいっぱいあるのは勘弁してほしいっ。


「す、数名ですか?なぜ?」


なぜそう思うのだろう、彼はいい加減なことは言わないと思うのに。


「カイン殿下のご養子の話は聞きましたか?」


カイン殿下とは私の従兄弟である。

王弟の息子だ。


「え、ええ、つい最近聞きました。王のお子になるので、私の義理の弟になるんです、よね」


サディス様は表情が、固い。


「彼が養子に入れば彼が王太子になる。

それと同時に、保留になっていたアリス様の未来の指針が定まってきたということではないでしょうか」


「·········なるほど··········」


「あの?アリス様?」


王の唯一人の子である私を、女ではあるが王太女に据えようとする話もあったけれど、

カインが王太子に決まれば私は他にお嫁に行くことが決定する。

それならば早く相手を見つけてやろうってことだろうか。


本格的に降嫁物語が動き出した。

まだ12歳なのに、何この急展開。


「私はアリス様を、信じていますから」


不意に力のこもったサディス様の声がする。


「·······ホホ、ありがとう、ございます····?」



あ〜あ、

みんな願い下げ!


売り出しセールに出品されるみたいで嫌だよぉ。

私はぶるぶる震えながら心で泣いた。


読んでいただきありがとうございます!

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