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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第一章 

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28 マリアは城へ帰った アリスside

夜、みんなが寝静まった頃、私は部屋を抜け出そうと準備していた。

なぜか、部屋には鍵がかかっている。


私は実は王女なので、私が逗留する客室には隠された扉があることを知っている。

王族だけに知らされる秘密だ。




今日、城下街のマホニアで買い物を楽しんでいた時に、私はそもそも王城に戻るつもりがなかったことを思い出した。

ジョシュア君との約束で、城に戻らない代わりに木像を作る約束をしたのだ。

城では私を捕まえて、私を勉強漬けにしたり着飾らせて政略結婚に送り出そうと手をこまねいている輩がいっぱいいる。

それなのに、木像に憑依したからといってのこのこ城に帰るなんて馬鹿みたいだった。


先程は城の門まで来てテンションが上がってしまったが、手土産を持参していないことに気づいて荷馬車から飛び降りたのは本当に正解だった。


「さっ帰ろうか!」

と回り右をするところ、民に貰った山のような捧げ物が目に入る。


このまま戴いたものを置き去りにするのは申し訳ないし、貰ったそばから皆に配り返すのも同義だ。

元々お土産を持っていこうと考えていたのもあるし、人の多い城であればかんたんに消費できそうだ。それに万が一余っても貧しい人々に配ってくれそうだ。

私は城へ持っていくことにする。


私は日頃から包帯で顔を隠しているし、この木像は18歳設定なので、私の顔を知っている者ですら12歳のアリスとは気づくはずがなかった。


なぜか民衆にはマリアと呼ばれてしまい、私の一挙手一投足は固唾をのんで見守られている。

城へ捧げ物を持っていく旨を伝えると、

誰かが親切にも荷車を持って来てくれて捧げ物を丁寧に積んでくれた。


民衆と荷車と大行進をして、王城の門へつくと誰かが叫んだ。


「マリア様のお越しだぞー」


「えっっマリア、じゃなっっ」


私は慌てたが、民衆のバカでかい声に掻き消されてしまった。

それに実はアリス王女だと宣う訳にもいかず、ここで否定するよりは、マリアの方がいいかと思い直す。

イエスのお母さんと同じ名前だけど、そもそも平凡な名前だしね。


城内には入るつもりはなかった。

捧げ物だけ受け取ってもらえば良かった。


だけど、私の来訪に驚いている門番は民衆の勢いに推されたのか、あろう事か門を全開にした。

私の背後には民衆の期待の視線と声が突き刺さる。


何だか、この騒ぎは城に入れば丸く収まりそう。

このまま回り右をしてこの大群の中を駆け抜けきる自信は私にはなかった。

場の空気としては、聖なる(?)私は自分で門の中へ入って行く流れだった。


だけど·······ここに入れば何かが起こりそうな嫌な予感がするのだ。


私はまるで逃げ場のない刑場に向かうかのような気持ちで、荷車の取っ手をぐっと掴んだ。




というわけで、今は王城にいる。

正体を明かされる前にさっさと出ていこうと思っている。

森の館に帰ったら、本体はどうなっているか分からないけれど早く入れ替わりたいと思う。


牧師達は女でも牧師になれると何度も繰り返し言っていたので、もしかしたら私をこの自由クリスマス教の仲間にするつもりかもしれない。

前世では、キリスト教のプロテスタントの教会が施設の隣にあった。牧師達と話していると自由クリスマス教は考え方が似ているようだった。



さて、隠された扉を開けようと手を掛けた。


ガ、ガンチャン······


向こう側から開いたので自動ドアのようで驚いた。

ドアの向こう側の暗闇から何かが出てきてもっと驚いた。


「ヒイッ」


それは、

カインだった。


「姉さん、··········どうして、ここに来たの?」


「!?わっ私は、マリアだ!

こんな夜更けに何の用よ、お前はこの城の王子だな?」


「姉さんでしょう?俺には一発で分かるよ」


「ええっ分かる!?何でよ!!」


「もういいよ········こっち来てよ」


何!?何か怒ってない!?怖っっ


私はカインに手を引かれてまっ暗闇の通路へと、

客室を後にした。


読んでいただきありがとうございます!

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