26 (前世) 俺は姉を探している(4) 敦忠side
次回からお城へ戻ります!
俺は麓でアルバイトをしながら、姉さんが『何か』を完成させるのを待った。
そして、気づいたらあっという間に3年が過ぎていた。
その間、あの無を体現した女は消え失せ、変わりに、笑わない男、話さない女、咳ばかりする女、首が回らない男、等が現れてはいつの間にか居なくなっていた。
「おかしいわよね〜ちゃんと図書館で借りた本を参考に作ってるのに!」
俺が催促に行くと姉さんはぶつぶつこう溢した。
姉さんの工房には、人体図鑑、神様図鑑、解剖図鑑など
気味の悪い本が積み上げられていた。
『森の神の工房』は、SNSで細々と木彫りの置物や金属の風鈴等の小物を売るぐらいしか収入がなく、経営状態はかなり厳しいらしい。
俺は姉さんに差し入れをするため、頻繁に工房へと訪れていた。
工房は本当に山奥で、途中で道がなくなる為、車を降りて歩かなければいけない。
姉さんの夫を自称する男は、工房の一室に籠もっていて台所や居間には顔を出したことがなかった。
この3年間の生活は、意外にもそれなりに幸せだった。
実は震災が起きる前は、俺がK国でやっている非道行為を姉さんから咎められて絶縁状態だったのだ。
まるっきり俺と連絡を取ってくれず、だからこそストーカー紛いの行動に走るしかなかったのだけれど、そのことも姉さんは全部忘れていたので、俺にとっては記憶喪失は都合が良かった。
姉さんは昔のように、俺に優しかった。
俺は車から降りて山道を歩いていると、
ふいに遠くでおそらく大勢が藪を踏み分ける足音がする。
何でこんな山奥に大勢人がいるんだろう?と目を凝らすと、あの白髪の美しい男が先頭に立ち数名の人を先導している。
見ると、最近工房に現れた、元気のない男、が混じっている。
俺は何だか嫌な予感がして、その後をつけた。
暫く山道を歩くと、視界が急に拓けて大きな切り立った崖の上に立っていた。
男は、十名にもなろう人々を崖の上に並ばせた。
「堕ちろ」
男は冷酷にその人々に命令した。
人々は、躊躇いなく崖へ飛び込んでいく。
順に順に、そして元気のない男の番が来た。
元気のない男は飛び込むのを嫌がっていたが、後ろからくる次の人に押されて落ちて行った。
全てが済んで、俺は驚き過ぎて腰が抜けたようにそこから動けなくなっていた。
そこへ白髪の美しい男が足音もなく近づいてくる。
「見たな」
「ひ、人殺し···········!」
「神になり損ないの、出来損ないを処分しただけだ。放っておけば悪霊になるかもしれない。何が悪い?」
俺は、男の言う事が一片も理解できず、
とにかく底知れず恐ろしく、そのまま無理に立ち上がり姉さんのいる『森の神の工房』へと走った。
途中、森の木々は風に渦巻いて、どうどうと揺れた。
俺をも殺そうとして、風は悲鳴をあげているようだった。
「姉さん··········!」
「敦忠!」
工房へ着くと、姉さんは今日は珍しく椅子に座っていた。
そして膝に大事そうに抱えているモノがあるのに気づいた。
「ねっ姉さん!?それは、何?」
·······赤ん坊だった。
それは大きな声で鳴いた。
姉さんは、恥ずかしそうに笑った。
「·········できちゃった!」
姉さんの紺色がかった瞳にそっくりの瞳をした、この世のモノとは思えないほど可愛らしい赤ちゃんだった。
俺はその光景がどうしても受け入れられなくて、
頭の中が真っ黒になった。
それでも、ここから逃げなくてはという気持ちだけが残っていて、俺は姉さんを連れて森へ駆け出した。
それからは、どうなったのか。
白髪の美しい男が、どうしたのか。
ただ、俺には姉さんと崖から落ちていく光景が最期だった。
理由なんて分からない
俺と姉さんは心中していた。
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