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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第一章 

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24 (前世) 俺は姉を探している(2) 敦忠side

駅につくとちょうど雨が降ってきた。

盛岡駅での案内で、とてもじゃないが交通機関では行けないと聞き、レンタカーを借りた。


暫く雨の中をレンタカーで走っているとあっという間に山奥の道になる。


『森の神の工房』のうさぎさんのSNSにメッセージを送ったが返信は無かった。明確な住所の記載も無く『岩手県安代』とだけあった。


日が暮れるが、その山は外灯もない。

思った通り迷ってその日は何処にも辿り着けなかった。


山道は蛇行が酷くて道の先が見えない。

これ以上は進めないかと車を止める。

雨音の一粒一粒が、車の屋根と、森林の土と、葉と葉と葉に落ちた音だと気がついた途端、その膨大な質量に寒気がする。

この広大な森林で、俺はあまりに小さな存在だと思わざるを得ない。


Uターンして暫く走っていると、ふと、山の夜道の脇に人が立っているのに気づいた。

普段なら警戒し通り過ぎるものの、今回の人探しという目的を考えるとどんな事象も受け入れるしかないと、無理に車を停めて声をかける。

ずぶ濡れのその女は美しい気もするが、どうもスラッとし過ぎていてその他の印象を受けつけない無味無臭な雰囲気の女だった。


麓の街まではまだ随分ある。雨音はより強くなっていた。

どんな事情があるにせよこのまま此処にいるよりはと、車に乗ることをすすめると。何も言わず女は流れるように車に乗り込んだ。


俺は一番聞きたいことを尋ねる。

「この辺に『森の神の工房』という工房はありませんか?」


「···········」


「どんなことでも構いません。気づくことがあれば教えて下さい」


「···········」


その女は無味無臭の上に無言と、とにかく無を体現したような人だった。


街に着き、女を希望の場所に降ろして、俺は予約していたホテルへ向かった。


「しかし、この時間に街の図書館で降ろせって?

·····へんな女だったな」


収穫はないが、人助けだと思うことにする。


次の日、俺は今度は明るい内にあの山に行かねばとレンタカーで出かけた。

途中で通りかかった、図書館の前の道路脇に昨夜の女が立っている。

どこが、というわけではないが妙に白いような、色彩が曖昧なような、とにかく浮いているように目立つ無味無臭無言の女は、つっと手を上げた。

それはまるでタクシーを停めるかのような手つきで。


思わず車を道路脇へと止めてしまった俺に気づくと、また流れるように後部座席に乗ってきた。


女は本を何冊かスーパーのビニール袋に入れている。

なるほど、ちゃんと図書館で用事を済ませたらしい。


「··············」

もう聞きたいことはこれっぽっちも無かった。


これはついに怪談か何かだな、と薄々気づきながら、

俺は金縛りにあったように微動だにせず昨夜と同じ場所へ車を運転する。



そこで、出会った。

昨夜女を乗せた場所に、

包帯の女が、お迎えのように立っていた。


「お帰りなさい!······ちゃんと行ってこれたじゃない!」


包帯の女は、この無を体現した女に対して似つかわしくないほど、人懐っこく笑った。


無を体現した女は

やはり無言でおまけに無表情。



代わりに俺が包帯の女に言った。


「ようやく会えた」


「はい?」


········ああ、

俺は姉さんを見つけた。


読んでいただきありがとうございます。

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