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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第一章 

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21 磔刑サンタ アリスside

久しぶりに城下のマホニアの街を通ったら、何だか奇妙なのだ。


道行く人々の衣装も色とりどりの看板も街の雰囲気も、何だか外国に来たみたいな印象で。

私、アリスはお城からサンディス様に攫われて、あれから色々あって、もう何年も過ぎ去った浦島太郎のようだ。


「あー、あいたぁ〜っ」


身体があちこち痛いというか、固いというか。やはり本体が木なのだから仕方ない。

いや、何で木なんだ。


私は荷馬車の荷台で必死に考える。

ある日、ボン・キュッ・ボンのけったいな美女になってここに転がされているなんて、そんなのおとぎ話すぎる。


ギキギィ


だけど·····私は胸を覗き込む。


この胸の谷間のなだらかな曲線といい、入り組んだ角度といい思入れがあり、ものすご〜く慎重に彫り進めたので、どうあっても覚えがある。

そして今着ている服は、確かに以前から見覚えのある私のドレスだけど、全体的にかなりキツイ。ゆったりしたデザインだったのに今はパツパツで身体の線がくっきり出る色っぽいオネエさま的なドレスになってしまっている。


やっぱり、私、太ったんでなければ、あの木像に憑依(?)したってことでいいのかしら·····

そして様々な『家電製品』やクリスマスツリーの飾り(オーナメント)の動物たちを思い出す。


「そうだった········人の体も実体化するのは同じなのねぇ。

うん、作者である私が認めないとダメよね」


少し元気が湧いてきて、身体を起こしてみる。

あまり自由に動かせないんだけど、道中、必死で身体をもみもみマッサージしていたら、血液らしきものが通ってきて随分馴染んできたようだ。


私は城門前辺り、荷台の上で勢いよく立ち上がった。


ギグン!

細かいことは気にしない

これからお城へ入場!

と思ったら、


「あ、·······お土産·······」


お城の親しい人たちの懐かしい顔が浮かぶ。

流石に手ぶらで実家に帰るような真似はできない。

しかもこの身体は18歳設定なのだ。

レディーとして相応しくないことはしたくないと思う。


私は急いで荷馬車から飛び降りて、


グキッ、うっっ!「固······」


街中へ駆け出した。



街で買い物をしようと商店街通りを行くと、クリスマスマーケット一色だった。

かわいい飾りや、ポインセチア、トナカイにお星さま、クリスマスケーキ、アイシングクッキー、衣服や毛布に至るまでクリスマスカラーで、クリスマスをモチーフとしたもので溢れていた。


「うわぁ!可愛い!」


私は目を輝かせながら物色する。

『クリスマス』なんてこの国には無かったのに、いつの間にか変わるものだ。

そういえば、以前この世界にもクリスマスの宗教があると聞いたことがあったけれど、全く身近では無かったはずだ。

クリスマスって大体は可愛いモチーフで微笑ましいのが多いけれど、たまに本場直輸入のグロいモチーフも混ざっているのはいただけないと思う。


「磔刑サンタ?」


これこれ、これはおそらくこの世界独特のモチーフだろう。サンタがイエス・キリストみたいに十字架に磔になっているようだ。

こういうのを子供でも普通に手に取るのは、正直私は個人的にはイヤなので指で摘むようにそろっと持って、即、下に置いた。


隣を見ると、サンタではない人の磔刑人形(オーナメント)が。

「ん?名前が書いてあるわ。『聖王と聖王弟の磔刑オーナメント』········」

他にも殉教された聖人がいらっしゃるのね。



「美しいお嬢様、こちらは如何ですか?」


お店の店員が、クリスマスリースを持ってきてくれた。コニファーを丁寧に巻きつけて可愛い姫りんごが飾られている。


「ステキ!あっ·········お金·····」


バカだった。木像だからお金を持っていない。


「いえいえ、まさか!結構です。貰っていただけるだけで!」


「そんな!?ありがとうございます!」


なんていい人なのだろう。お店の店員は若い青年で、はにかんで頬を染めにっこり笑っている。

私はクリスマスリースを両手で掲げて、褒め称えた。


「なんて可愛らしくてステキなの!

クリスマスリースには素敵な意味があるんです!それは『永遠の愛』。リースは輪のかたちであるため終わりも始まりもなく、永遠性のシンボルです。西洋では幸運のお守りとしても用いられます!」


程なくして人々が集まってくる。

私は前世はミッション系の児童養護施設にいたので、信仰はさておきキリスト教にまつわるウンチクはよく知っている。

皆、様々なクリスマスに纏るものを持ってきては私に意味を聞いてくる。誰も彼もクリスマスの商品を売って買っているのに知識はほとんど無いようだ。


そして、捧げ物のように私に色々渡してくれるようになった。私が持ちきれなくなると足元に並べ始めた。


「えっえっ?あの!嬉しいけど、動けない·······!」


足元にぐるりと置かれると、手が塞がっているし身動きが取れない。


「え!?あの?拝まないで下さい!?」


今度は群衆が私の周りをぐるりと囲んでしまった。

みな両手を組んで祈っている。


「ああ······有難い。マリアとか言う人········」


「あのう·······?」


私はアリスとかいう王女ですけど?


読んでいただきありがとうございます!

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