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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第一章 

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18 ディスィジュエス共和国 カインside

ディスィジュエスって発音しにくいです···

「それでは条約書にサインを」


飛行船で行われた平和調印式では、エヴァグリーン国とディスィジュエス共和国の外務大臣に当たる者と、王子カインとディスィジュエス共和国のCP党党首が互いにサインをして、平和が訪れた。


全ては『自由クリスマス教』の仲介だ。『自由クリスマス教』はカメリア合州国で盛んになった宗教だ。

布教活動の一貫でこちらへ来航していたらしい。


我がエヴァグリーン国は敗戦した。


ディスィジュエス共和国は、この戦いは全てはマロウ家の独断で始まったとしつつも、勝戦国として幾つかの要求をしてきた。

巨額の賠償金とエヴァグリーン国の王都の一部の割譲だ。

王も王弟も失った状態で、こちらの足元を見ているのだろう。この世界には国連も無ければ大義名分も必要ない。力を持っているか持っていないかというわけだ。




「カイン王子」


警備隊の訓練を見学しているところへ、ジョシュア•ヤナ•ウィロウが来た。

彼は門番だったと聞いたが、今回の戦いぶりの功績が認められて将軍職へと大抜擢された。

彼のお陰で王の居城は戦火を逃れていた。

当時は王城内のほとんどが戦火に呑み込まれたと思ったけれど、実際は王弟の離宮と幾つかの塔に限られていた。

王と王弟の遺体は磔から降ろされ、城内の安置室へ置かれた。


今回の戦いで我が国は兵力を半分以上減らしている。

おまけに軒並み軍隊の上層部が一層されたので、こういった大抜擢は至る所で散見された。

平和が訪れたとはいえ、ディスィジュエス共和国との間は以前緊張状態だ。


その理由は、


「さすがに条文には含まれませんでしたが、···········アリス王女の件、どうされますか?」


ディスィジュエス共和国は、第一王女アリスの人質を要求している。


「認めるわけにはいかないだろう。彼女はこの国の唯一の王女だ」


俺ははっきり答える。馬鹿馬鹿しい。答えは決まっている。


「俺が捕虜になれば済むことだ。捕虜なら金銭を用意すれば帰れる」


ジョシュアは呆れた顔をする。


「戦争は終わったのに捕虜などと········しかも次期王を、それはさすがにあちらにも笑い飛ばされますよ?

·········人質というのは、金銭では身柄は返されないのでしょうか?」


賠償金でこの国に金は残っていないが、交換が認められるのならば他の価値あるものを代償として差し出せばいい、のだが。


「あちらさんの目的は分かっている。王女と誰か権力者との縁談を纏めて返さないつもりだろうな。

あちらには、王族の血が喉から手が出るほど欲しい奴らが五万といるだろう」


ディスィジュエス共和国が身分制というものを取り払った代償だ。

身分という後ろ盾の無い人々の群れは他人との差異をつけるため、汚職や政争で乱れまくっているという噂も聞く。

民衆の力も無視できない。

ストライキやデモが頻繁に起きているらしい。

今回、マロウ家の一存で攻めてきたのも国内が纏まっていない表れだ。

結局、王家の血の力で乱れた国内を纏めようとしているなら滑稽なものだ。



「しかし、あの国は、強く豊かだ」


たかだか、一つの家の号令で攻めてきた力があの威力だ。

ディスィジュエス共和国は、貿易や運輸、観光と幅広い分野での経済活動が盛んな国だ。

港は様々な国から大型船が行き来しているようだ。

元は同じ国だったのに、今やエヴァグリーン国からかけ離れて豊かな国になってしまっている。

前世で言えば、ドバイのような感じかもしれないと思った。


「身の丈に合わぬ輩が王女を嫁になどと······欲をかくと痛い目にあうと知らせてやりましょう」


ジョシュア•ヤナ•ウィロウは笑った。


「何か策があるのか?

お前はアリス王女の元執事と聞くから、悪いようにはしないよな?

彼女はもはや、この国にとっては唯一無二の存在だ」


「分かっておりますよ。·········御意に」


彼は深々と俺に腰を折ったのだった。

俺は肩にのしかかった重荷を払い除けるかのように、ジョシュアに大きく頷いた。


読んでいただきありがとうございます。

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