16 (前世) クリスマスの記憶 右月side
少し休憩
ボーン、ボーン、ボーン
「あれっっ、ここどこ·····?」
先程まで森の中にいたはずなのに
気づくと私は大きなホールの中にいた。
部屋の中央に大きなツリーが電飾を巻きつけてキラキラ輝いている。
うーん、電飾の付いてるツリーなんてすごく珍しい、前世であれば普通のクリスマスツリーだけれど。
時計を見ると深夜12時だ。
そこで私は小さな包みを持って立っている。
「···········?」
思い出した!
この包みの中身は敦忠へのプレゼントだ。
ここは過去、前世の夢の中らしい。
こんな出来事が児童施設にいた時に確かにあったと思い出す。
ツリーの下にはプレゼントがごちゃごちゃ山盛りに置いてある。それぞれに受け取る子供の名前が書いてある。
私も持ってきた包みをそこに置こうとして、止めた。
「私のプレゼントが埋もれちゃう。」
私は敦忠への寝室へと急いだ。
敦忠は、男子数名の共同部屋の二階建てベットの上段に寝ている。
私は音を立てないようにゆっくり梯子を登る。
ギシッ
よく寝ている。
なぜだろう、敦忠の表情は少し悲しそうだった。
彼は昨日、『クリスマスが楽しみな奴なんて、金持ちの優しい親がいる奴だけだ!』なんて言って先生たちを困らせていた。
確かに、クリスマスプレゼントを用意したりごちそうを用意したり、飾りつけをしたりするには、お金と場所と、そして財力ある親が必要だ。
でもそれは、親じゃなくてもいいでしょう?
私達、施設の子だって、少ないかもしれないけれどプレゼントもご馳走も温かい家も優しい先生もちゃんといる。
私達はきっと恵まれている。
私は敦忠にクリスマスを楽しんでもらう方法を考えた。
だから私はプレゼントを用意した。
彼はサンタなんて信じている子じゃない。
きっと本当の親からのプレゼントが欲しいのだと思うけれど。
私はそっと小さなプレゼントを枕元に置く。
これなら、目覚めて一番先に気づいてもらえるし、他の子にバレて茶化されたりしないだろう。
中身はお金のない私の事、手作りの木彫りのクマなので貧乏くさいし、みんなに見られるのは恥ずかしかったのだ。
あの時の私には敦忠の為に用意できる、お金も場所もない。
私は大人になったらお金をいっぱい稼いで、クリスマスが楽しみでしょうがないと弟に言わせてやりたいと思っていた。
さて、一仕事終えたサンタの気分だ。
私は、ぶかぶかで袖と裾を何回も捲り上げた上下赤色のサンタ服を着ている。今日、施設長が使用したのを拝借したのだ。
私どんだけ張り切ってるのか、誰かに見つかったらアワアワじゃない?
前世の私は何というか、こういう奴かぁと夢の中で自嘲した。
「あっっ」
自分の部屋に戻る途中で黒い人影が横切ってすれ違った。
誰だろう?知っているような······?
私は自分のベットの枕元に何かが置いてあるのに気づいた。
「えっっ······今の、サンタ??」
サンタなんてこの世界にいるはずがない。
「いるとしたら·····」
私は警戒しつつ、枕元に置いてあった包を開けた。
それは木の枝で作った人形、のようなものだった。
それとも十字架だろうか?
包み紙をぐしゃっと握りつぶす。
気味が悪くて、言いようもない不安感が襲う。
「いるとしたら、サンタのふりをした泥棒かしらね?」
「待って」
次の日のクリスマスの朝、敦忠に呼び止められる。
「ごめんね、サンタじゃなくて。がっかりさせたよね」
枕元のプレゼントが私だと気づいて来てくれたみたいだ。
「ううん。」
敦忠は必死に首を振った。
「ツリーの下にプレゼントを置くと、王女に盗まれたり森の動物たちにヘビや蛙やバッタに変えられちゃうからね。『プレゼントは枕元に置け』でしょ?」
敦忠は、私が絵本のストーリーになぞらえたと思ったみたいだ。
以前敦忠と一緒に読んだ絵本に【森の王女と意地悪なクリスマス】というのがあった。
これは【森の王女シリーズ】の中の一冊の絵本で、他にも数冊か出ていた。王女が毎回様々な意地悪をしかけ、賢く優しい弟王子にきっちり仕返しされてギャフンと言わされるお話で、くだらないけど面白くて、まあまあ人気があるシリーズだった。
私は、意地悪だけど時々いじらしい王女がチャーミングに感じられてけっこう好きだった。
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【森の王女と意地悪なクリスマス】
王女は父王に可愛がられている弟王子に嫉妬して、毎年ツリーの下に置いてあるプレゼントをこっそり隠してしまっていました。
そこに森の動物たちが、王子を手伝ってプレゼントを探してくれます。結局王女はそのプレゼントを売り払ってしまっていたので見つかりませんでした。悲しんでいる王子を心配して、森のリスが神様に相談しに行きました。
その話を聞いた神様は、考えて父王に伝えました。
『王子へのクリスマスプレゼントだけ枕元に置きなさい』
そして神様はクリスマスイブに時間を戻してくれ、今まで受け取ることができなかったプレゼントをベッドの上に山盛りにしてあげました。弟王子は大変喜びました。
それから毎年、弟王子は安心してクリスマスプレゼントを枕元で受け取ることができるようになったのでした。
ちなみに王女への父王からのプレゼントは今まで通りクリスマスツリーの下に置かれたので、森の動物たちが夜の内にプレゼントをヘビや蛙やバッタにこっそり変えてしまい、王女はクリスマスプレゼントを受け取れなくなってしまったのでした。
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「僕嬉しいよ。サンタより、姉さんから貰う方が何万倍も嬉しいに決まってるよ」
私は泣いてしまった。こんなに優しい子は世界中探したって見つからないと思う。
「姉さん、これ」
敦忠が渡してくれた紙袋を開けると、
綺麗に彫刻した木の十字架のネックレスが入っていた。
「えっっこれ、···········どうしたの?」
「クリスマスプレゼント。姉さんに比べるとヘタだけど」
それは子供の手作りとは思えないほど丁寧に細かく彫られている。
「その十字架が、いかなる時も姉さんを守ってくれますように」
「嬉しい!」
私はぎゅっと抱きしめて、弟の頬にキスをしたのだった。
私は幸せで、
ずっとここに居たいなあ、
なんて思っていた。
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