15 狂った童話 カインside
残虐注意です。申し訳ありません。
王城では派手に花火が打ち上がっていた。
俺たちが乗った幌馬車が城門をくぐった時点で、俺はもう王城がいつもの状態じゃないのに気づいていた。
城内へ入って俺は驚愕した。
皆が狂って戦っているではないか。
先ほどから、怒ったように連続で打ち上げられる花火の光に照らし出されたのは狂乱した兵士達の顔、顔、顔だった。
俺は王弟であり、ボトルブラシュ公爵の爵位を賜ったばかりの父上を探した。
今日は彼の祝の宴だったはずだった。
「カイン王子!!こちらへ!」
ヒューゴに大声で呼ばれて駆け寄った。
俺は警備隊に所属して、旗頭となり戦うらしい。
俺にもピカピカのロングソードが渡される。
これで、誰を打てというのか?
事の発端は、北の隣国のディスィジュエス共和国から来たマロウ家の嫡男が、王とボトルブラシュ公爵の前で祝辞を述べた時だった。
彼はアリス王女への謁見を希望した。
ディスィジュエス共和国とエヴァグリーン王国はかつては一つの王国だったが、王家を捨て共和制を立ち上げた派閥は北に共和国を建国し、国は分裂した。共和国では国家の所有や統治上の最高決定権を、君主ではなく人民が持つ国だ。
マロウ家は、かつてはエヴァグリーン王家の臣下であり、将軍も輩出した映えある歴史を持つ。他国とはいえ繋がりが深い家だ。
とはいえ、アリス王女は不在だったし、
格下のマロウ家の申し出を断るのに大して問題はない。
マロウ家は、世が世なら高位貴族にあたるが、王家を捨てた共和国では、現在は権力者とはいえ他と等しく人民である。
そこで他より一頭地を抜きたかったのか、マロウ家はエヴァグリーン王国の王女アリスと婚姻を結びたがっていた。
王女に会えたらそのまま攫うつもりだったのだろう。
マロウ家が連れて来たのは護衛とは名ばかりの兵士達。明らかに大軍と言っていい規模だった。
国境を通過する時に阻止できず、既に小競り合いになっていると連絡を受けていた王城では戦争を予期し、王女アリスを隠した後、王子アインを城へ呼び寄せた。
そしてマロウ家が連れて来た軍隊は王女を探し回って、城兵を殺戮し城内で暴行の限りを尽くしていた。
俺は事の顛末を一気に飲み込むのは難しかったが、
この地が戦場であるのだけは、
ただ一つの揺ぎ無い真実だった。
だれかこの悪夢を終わらせてくれ。
父はすぐに見つかった。
城を目前にした、
石畳が整然と敷き詰められた大きな広場で、
ボトルブラシュ公爵はーーーー木を組んだ十字架に磔にされていた。
杭を打たれた掌から、
生気のない虚ろな両の瞳からも血の筋が流れ落ちていた。
そして、隣の2つ目の十字架にはーーーー紛うことなき、このエヴァグリーン王国の王が磔になっていた。
「あっっ、うわあああああ〜〜ーーー!!」
俺は真っ黒になった頭の中に
葉々がざわめく暗い森の情景を見た。
そして気がついた。
この世界は、あのとち狂った童話『森の王女』の世界だということに。
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