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12 電子体温計って? アリスside

ようやく湿疹の秘密が。

私は今日は一日中包帯姿でベッドで休んでいる。

顔の湿疹が再発して熱が出てしまったのだ。


微熱だけれど、心配したサディス様に部屋から出してもらえない。


(この森の館に来てからは治っていたのにな·····)


折しも、外の森には雨が降っていてずっと続く雨音を聴いている。

雨の日はいつも湿疹が痛む気がする。

こんなに肌がじくじくと痛むのは初めてかもしれない。


部屋でぼうっとしていたら、

サディス様が新聞を持ってきて、私のベッドに腰掛けニュースを読み上げてくれる。


(自分で読めるけど········)


とは思いつつ、サディス様の声がびっくりするぐらい綺麗によく通って耳に届くので、ついつい聞き惚れてしまう。


(サディス様の発音は流暢でラジオのニュースみたいね!)


とても心地よくて、つい眠ってしまいそうだ。


「王弟殿下が先日、公爵の爵位を賜ったそうですよ。これからはボトルブラシュ公爵とお呼びしなくてはいけませんね」


王弟殿下はカインの実父だ。


「あら、前々から公爵爵位のお話はあったけれど、ようやくですのね」


王弟から公爵位になるということは王の臣下に下るという意味もあるけれど、弟殿下を公爵という一大勢力に仕立て上げ貴族社会に投下することは、王の権力を見せつける重大な出来事だ。


そういえば、カインは熊に跨って脱走してあの後どうしたんだろう?

もうお城に帰っていればいいけれど。


いやいや、あれは夢·········

彼は姉を探すと言っていたけれど私のことは嫌いみたいだし、もうどうしようもない。


私は王城で気を失ってから、サディス様がここに連れて来てくれたとのことだ。


「王城でボトルブラシュ公爵の御祝いの宴が開催されています。外国からの賓客も招いての大祝賀会ですよ」


何と3週間も宴は続くらしい。


「参加できなくて残念ですね。城に戻りますか?」


「いいえ!ぜんぜん!

私、ああいう場は好きじゃないですわよ?」


サディス様は、そうですね、とくすくす笑っている。


「それに、この面相では外国のお客様も驚いて逃げて行ってしまうわ!」


私は肩を竦めて戯けるように言った。

そこへサディス様が何でもない風に、

驚くべき推測を教えてくれた。


「アリス様のその湿疹は、樹液の臭気からきているかもしれません」


臭気って?と訝りつつ。

樹液には固まる性質を持っているものが多々ある。その固まる性質を利用して塗料になるのだ。

サディス様が言うには、その樹液の固まる力が、人の皮膚に悪影響を与えているらしい。


小さい頃から王城内の森で遊んでいた私は、よく遊ぶ場所にその樹液が出る木があって、その樹液や臭気に触れてしまったのではないかということだ。


「引き続き、王城の研究機関により詳しく調査するように依頼してありますので、塗料の特定は暫しお待ちを」


その研究機関によると、

臭気の疑いのある塗料は3種類あるそうだ。


そういえば、ちょうどここ数日は成形した木工作品を何種類かの塗料で塗っていた。

しかも、もう一日中制作活動に使えるのでかなり長い時間。


そういえば今までも塗料を使った直後に湿疹ができていたと言われればそんな気がする。


「えっっ、じゃあその塗料を使わなければこの湿疹が出ないかもしれないの!?」


「はい。恐らくは」


私も熱がひいて元気になったら試してみなくては。


もし、この包帯がすっかり取れたら

私は生まれ変わったような気持ちになると、思った。



「熱はどうですか?」


サディス様が突然、私のおでこにサディス様のおでこをぶつけてきてびっくりする。

ヒヤッとして冷たいっ


驚いた私を見てサディス様もちょっとおどろく。

サディス様って時々距離が近すぎるんだよね。

ま、まさかの、お、おでこごっつん········☆


「ね、ね、熱ってよく分からないですわよね!

ちゃんと体温計で測れるといいんですけどね」


「体温計······ですか?そういえば、『水銀体温計』というのがあるらしいですね。すぐに取り寄せないと······」


「あ、いいえ。もったいないですわ。高価だと聞きますし」


この時代は前世の日本より大分遅れているので、もっと便利な道具があればいいのにと思うことが多い。

大体、前世と時代を照らし合わせると明治大正時代くらいだろうか。


私は包帯越しにとはいえ、おでこごっつんこを体験してしまったことに動転して、ついうっかり前世の『電子体温計』の話をしてしまった。

こういう話はこの世界の人にはなかなか理解されないから話さないようにしてるんだけど。

サディス様に問われて、私はもしもの話として、この世界ではまだあり得ない『電子体温計』の話をする。

サディス様は興味深そうに話を聞いてくれている。


私は興がのって、置いてあった木の切れ端をおでこに当てた。


「例えばですよ?

こう、おでこに当てると······」



ピピッ


ん?



「なっ!?何だ!?」


電子音にサディス様は瞬時に身構える。




「37.5℃···························ですわ」


木片にはくっきりと数字が浮かんでいた。


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