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10 森の工房 アリスside

たまに、同時進行作品『ツリーの下で』の話とリンクする箇所があります。(でもストーリーは違います)

私が目を覚ますと狭い部屋の小さなベッドの上だった。


「あらら···?私って気を失ったのだっけ?」


隣の部屋に行くと、ここが木工工房だと分かった。


ノコギリとカンナはあらゆるサイズと形を網羅して取り揃えてある。

大きな作業台(ワークベンチ)が部屋の真ん中に設置してあり、周囲にはまだ空の棚がずらりと壁に並んでいる。


外に出てみると、ここは大きな森の一角のようだった。

王城内とは違う澄み渡った風が吹いている。


振り返って見上げると、赤い屋根の可愛らしいこじんまりしたお家だった。

小さな納屋が隣にあって材料に使う様々な種類の乾燥した木材が所狭しと置いてある。


私は、木工芸に必要な道具が全て揃っていると感嘆する。


ここは、もしかしたらヒューゴ先生の手紙にあった木工工房かしら?

確かにここは王城の外の世界のような気がする。


·······でも、どうやって私ここに来たのかしら?


カインが大きな熊に跨って門を強行突破した場面が目に浮かぶ。


「··········あれは、夢よね。ショックが大きすぎたわ」


だから気を失ったのだと思うと腹立たしい。

まったく、カインは前世と同じく何をしでかすか分からない危ない子だ。

いや、あれは夢だけどね!

だって、私が作った木の動物(オーナメント)たちがリアルに動物になってしまうなんて、そんな荒唐無稽な事があるはずがない。

そんなの、まるで絵本の世界ではないか。


私は家の中に戻ると、幾つかの部屋を物色する。

どこも少し狭いけれど可愛い部屋だ。

内装はカントリー調にコーディネートされ上手くまとめられている。

きちんと掃除がされていてピカピカだし、ベッドのシーツもカーテンも新品のようにアイロンと糊付がされ、清潔で暮らしやすそうだ。

ふと、居間の部屋の棚を見ると、本棚の一角があり絵本や女性が好みそうな小説や雑誌がならんでいる。


「ああ、これ!懐かしいわ。

木で作った動物たちのお話!そういう話、あったわね」


私は一冊の絵本を手に取った。

前世にもあったお話で、子供の時に敦忠と読んだことを思い出す。

違う世界なのに、不思議とあの時の絵本とそっくりに思えた。



◆❖◇◇❖◆◆❖◇◇❖◆◆❖◇◇❖◆❖◇◇❖◆◆❖

森の神様


森に少女がいました。

少女は独りぼっちで寂しくなって、足元に落ちていた小枝を持っていた紐で結んで人形を作ると、それは神様になりました。


神様は少女にもっと作るように言いました。


少女が1つ目を作るとウサギになりました。ウサギはピョンピョン跳ねて行ってしまいました。少女はまた寂しくなりました。


少女は2つ目を作ると小鳥になりました。小鳥は美しい音色で鳴いて賑やかになりました。けれど羽根があるので小鳥は飛んでいってしまいました。少女はまた寂しくなりました。


少女は3度目を作るとリスになりました。リスは首を傾げて少女のお話を聞いてくれました。けれどクルミを探しに行ってしまいました。少女はまた寂しくなりました。


少女は4つ目はそうそう素早く動かない大きなクマを作りました。けれど、クマは少女を見ると喜んで少女を食べようとしました。


それを見た神様が少女を庇い、クマは間違えて神様を食べてしまいました。


神様を食べてしまい神様がいなくなって、クマは嘆き悲しみました。

クマは言いました。


ああ、神様がいなくなってしまったら、私たち枝の動物たちは動けなくなってしまうでしょう。あの神様は生を司る神様だったのです。

恐ろしい事になってしまった。私を作ったあなたにも責任がある、と。


そこで少女は今度は太い丈夫な木を削って丁寧に丁寧に神様を作りました。

そこで生まれたのは、赤ん坊の姿をしたピカピカの神様でした。


クマは言いました。

ああ、これは死を司る神様です。


少女は生を司る神様を作りたかったのでがっかりしました。


しかしクマは言いました。

これで私達は死ぬことができる。

生の神様と死の神様が両方がいてようやく、私達は生と死の輪を廻すことができるのです。

死の炎に焼かれてまた新しく生まれ変わることが出来ます。


そしてクマは少女に言った。

新しい生を司る神はーーーーあなたです。


そう言うと、いつしか他の枝の動物たちも戻って来ていてクマと一緒にぐるりと少女を囲み、そのまま手を繋いで死んでしまいました。


赤ん坊を抱いた少女の足元の周りには焼かれような小枝だけが残っていました。


◆❖◇◇❖◆◆❖◇◇❖◆◆❖◇◇❖◆❖◇◇❖◆◆❖



こんな話だったのね。


ええ!·····怖い····全然ハッピーエンドじゃないのに驚く。

子供に語るおとぎ話とは思えないわね······

あの時の敦忠の反応はどうだったかしら。


ずっと思案していたら、時間が経ってしまったようだ。



ゴトン、ゴトゴトンッ


外で物音がして、私は恐る恐る外へ出た。

もしかして、ヒューゴ先生かしら?



納屋にいたのは·········



「アリス様!ご加減はどうですか?」


粗末な木こりの衣装を身に着けた······

心配そうな顔をした······


この国で最も高位のスプルース公爵家、嫡男。


見まごうことなき

サンディス様、

だった。


読んでいただきありがとうございました。

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