1 クリスマス アリスside
私こと、アリスの誕生日はクリスマスだ。
ここエヴァグリーン国では、キリスト教が無いので一般国民にとってクリスマスはただの平日だ。
おまけに、当日に誕生日のお祝いをすることも特に無い。年が変わった時に皆で一斉に歳を取る感覚だ。
というわけで今日は、クリスマスで私の12歳の誕生日なのにごくごく平凡な一日というわけだ。
私はカバンいっぱいにお手製の飾りのオモチャを詰めて、大きな樅の木の元へ急いでいた。
前世の記憶で何となくクリスマスを思い出していたので、クリスマスツリーを飾りつけて楽しもうと思ったのだ。
ポンピン•ポッピン•ポップコーン♪
ポンピン•ポッピン•ポッピングシャワー♪
思わず前世で好きだった歌を口ずさむ。
王女である私を心配して、近衛兵がはしごを持って後をついて来てくれている。
前世からずっと、神様は関係ないけれどクリスマスが大好きだった。
偶然ちょうどよい大きな樅の木を見つけたので前世を懐かしんで飾っているだけだ。
いわゆるアート作品だと思ってほしい。
エヴァグリーン国は森林資源が豊富な森の王国だ。
品質の良い木材を外国へ多く輸出している。
城内の王城(王の城)からボトルブラシュ邸(王弟の邸)へ続く森の小道の途中、その木はある。
キレイな三角でいかにもクリスマスの樅の木だ。
ここ数日で様々なかざりつけをしたので、ゴチャゴチャしているけれど、とても豪華なツリーになったと思う。
あれ?
そんな素敵なはずのクリスマスツリーには目もくれず
···········小さな男の子が木の根元で昼寝している。
「ねえ起きて。地べたで寝ると首が痛くなるわよ。」
「··········」
聞こえてるのか、聞こえてないのか。
具合が悪いとか········?
顔を見ると、寝顔はこの世の生物とは思えないほど可憐で可愛らしい。
藍色の髪の毛が輝いて、天使の輪っかができていた。
もしかしたらこれが天使かもしれない。
神は信じていないのに天使は実在してしまうことに動揺を隠せない。
少年はぐっすり寝ていた。
起こすのもかわいそうなのでそのままにして、私はツリーへオーナメントの飾りつけの仕事に取りかかった。
近衛兵が梯子に登り、指示通りに木の枝に飾りをかけてくれる。王女は梯子は禁止!と言われているので仕方なくやってもらう。
「右!もっと右!」
「あっ、それちょっと左に!」
右!左!と大声で叫んでいると、混乱した近衛兵の手元が狂って木彫りのクマの飾りが私目がけて落ちてきた。
パンッ
下で待機していた近衛騎士がポーズもカッコよく飾りを弾いてくれた、と思ったらそれは謎の美少年の寝顔に飛んでいって、当たった。
私付きの近衛騎士たちは、私を守るのは完璧なのに、それ以外はいつも無頓着だと思う。
お転婆な私がいつ危険な目に合わないかと、常に気を張っているストレスの反動なのかもしれない。
とりあえず、木彫りのクマがぶつかった美少年のおでこは赤くたんこぶになって膨れてきている。
「ご、ごめん!だ、大丈夫·······?」
かなり痛かったはずなのに起きないのは異常だ。
打ち所が悪かったのかと心配になる。
少年を揺さぶってみる。
ゆっくりと瞼が開いた。
「·······························姉さん」
ん?
この顔は·············あっ
なんと、彼は前世の弟でした。
https://40476.mitemin.net/i714571/
読んでくださりありがとうございます!
なるべく頻繁に投稿していきたいです。
頑張りますので、どうぞ続きもよろしくお願いします!