夜桜
終わりも始まりも考えなかった
渇いた空は露を零さず
別の次元へ圧倒され
恋と好奇の声に二つの眼差しは羅針を狂わす
言葉からたくさんの細胞が流れた
誰のモノでもないんだ
誰のモノでもないんだ、と
満ちた虚空へその存在を目いっぱい誇示し
風が全ての感情をそよがせ
忘却の碧甕へ、色彩を誘う
交わる、交わらない、ではないのだ
繋がる、繋がらない、ではないのだ
育む、育まない、ではないのだ
祈る、祈らない、ではないのだ
分かり合う、合わない、ではないのだ
重ねる、重ならない、ではないのだ
信じる、信じない、ではないのだ
殺める、殺めない、ではないのだ
愛する、愛さない、、、、ではないのだ
絢爛を粉々に打ち砕いて
まるで病であるかのような、
地の底を這う、うらめしい漆黒の楔
現世にはほどけた
ほどけてあるのに、、、、
風が時化、風が凪ぎ、
また別の次元への刻が知らされる
音が、止む
刻を、止む
僕はふいに、大袈裟に、
朗らかに微笑む
風を撫でて歩き、この微笑みが、この微笑みこそが、唯一、今に殉じたもので、そして、同時に、ずっと見据えていくものであると、信じて疑いもせずに、ひとひらの、迷いも逡巡もなしに
一人、今来た道を一旦戻って、帰路に着いた
振り返りもせず、ただの一度も
闇に宿る瞳、乾いてなお、輝き増して
なおも乾け、なおも乾け、と
無惨に咲き乱れ、常しえに揺れ続ける
見えぬ手に楔を記す、確固たる淡き結晶
涙が涙をなさぬまま