土木作業員って底辺職業なんだってさ
先日少し炎上した話題『底辺職業ランキング』
その一位が土木・建設作業員なんだそうだ。
おそらく内実を詳しく調べず、ありきたりなイメージと外聞だけで書いたんだろうけど、建設業界に関わっている人ならば、苦笑は必定であろう。
元記事は削除されたようだが、まとめによると書かれているのは特徴として
(1)肉体労働である。
これは否定できない。
夏冬問わずの外仕事、重量物も取り扱うから力仕事が多い。
もっとも重機操縦者になれば力仕事とは縁遠くなり、冷暖房付きの重機も多い。
(2)誰でもできる仕事である。
『誰でもできる仕事もある』くらいが正確だろう。
何もわからない新人や、どうにも使い物にならない人は片付けや物品の手運びなどをやらせる。
下手に作業に関わらせてミスが起きたら作業がやり直しになるし、何よりも危険だからだ。
そもそも土木・建設作業員と十把一絡げにしているが、その内訳は多種多様。
『作業員』といっているから現場監督は除くのだろうが
佐官・鳶・溶接工・土工・斫工・型枠大工・電気工・重機オペ等々等々…
それぞれ作業内容が異なり、必要とされる技能も異なるから、決して誰でも簡単に出来るわけがない。
(3)同じことの繰り返しであることが多い。
傍から見たら同じ作業に見えるのだろう。
だが、工事現場の特徴として『全く同じ現場は有り得ない』
現場ごとに毎回場所は違うし、また同じ現場でも日が変われば状況は変わる。
工程は日に日に進捗するし、天気や気温で留意する事が変わって来る。
その時その時の状況に応じて、作業手順を考え対応する必要がある。
言うなれば『昨日に引き続いての作業』は有っても『昨日と同じ作業』は無いのである。
実際、土木・建設工事の現場には様々な人が居る。
学歴は大卒から中卒まで色々。
いわゆる『指の短い人』や『背中の色彩が豊かな人』も少なくなったが居るは居る。
貰った給料を数日で使い果たす人、吞む打つ買うが何よりも好きな人。
腕はいいけど口が悪い人、口は上手いが腕は悪い人。
腕も人柄も良い仏のような人。
近頃では外国の人も増えた。
世間は学歴社会だというが、工事現場で学歴はあまり役に立たない。
たしかに管理者たる現場監督にはある程度の学識が必要であり、大手ゼネコンならその多くが大卒である。
しかし、大卒の監督が中卒の職人に拝み込んで何かを頼むなんてのは、ザラのザラにある。
監督だからって偉そうにしていれば、作業員からそっぽ向かれて出来形不足・工程遅延をもたらす。
もちろん作業員の方もいい加減な仕事をしていれば出入り禁止を喰らう。
その点で言えば、平等な実力社会と言える。
稼ぎの多寡は簡単で、使えないヤツは安く、実力があれば高くなる。
腕の良ければ、そんじょそこらのホワイトカラーより高給取りになれる。
体が健康でその気があれば作業員から職長、監督にもなれるし、起業も珍しくは無い。
たしかに工事現場の仕事はキツイし、汚れる事も多く、肉体的・精神的にも疲れる。
また、向上心が無くても続けられるし、嫌になって逃げだす人が多いのも事実である。
ゆえに『やんごとなきお仕事』(何かは知らんけど)の方々からすれば、賎業に見えるかもしれん。
だが己の意欲と努力で実力をつけて、稼ぎを増やすことが出来る仕事でもある。
それに、自分の仕事が世間の役に立っていると目に見えてわかる仕事でもある。
(公共的施設を使わない人はいないからね)
それが底辺とは・・・
社会の底辺、つまり社会基盤を支える仕事であることは確かだけどね
個人的ではあるが、携わった土木・建築構造物が現に使われているというのは中々に誇らしい。
近くに寄った時は思わず訪れて、使用状況に笑みがこぼれて、当時の苦労に思いを馳せることしばしばである。
そういう人は少なからず居よう。
(というか、この方面で知ってる人はだいたいそんな感じである。)