第七話 ヘリオス
陽太郎は元平民の母に看病されながら、屋敷の医務室で意識が覚醒した、しかし即座に狸寝入りをし始める。陽太郎は起床と同時に陽太郎は全ての記憶を思い出していた。
僕は陽太郎だ。けどこの身体は僕のじゃない。どういう原理か分からないけど、僕は元の身体の持ち主、ヘリオス=ヴァイカウント=クレイアント、僕と同い年の少年が死んで、その身体に僕が宿ったみたい。
ヘリオスが死んだ理由は分からない。死んだ瞬間の記憶がないからね。けど、多分第一夫人、さっき僕に文句を言ってたアイツだよね。
陽太郎は元々聡明な頭脳を使って、ヘリオスの記憶を整理、取捨選択して必要な情報を蓄えていく。
この世界、法術っていう術があるのか?精霊?って言う魔物を使役して戦う……?何だこの知識。妄想にしては大分詳しい。それに見た記憶もある。一体なんなんだ……?
未知の情報に混乱した陽太郎だが、嘘ではないとヘリオスの記憶を探って理解した。
僕、所謂転生をしてしまったのかもしれない。
陽太郎は最近読んでいた漫画を思い出し、記憶を探ってみる。
それらしい記憶を思い出して自分の手を眺めながら声を出した。
イグニス、来れる?
陽太郎がそう呟くと陽太郎の手の甲に紋様が浮かび上がり、真っ赤な炎が渦巻いて小さな生命体が陽太郎の手のひらの上に乗った。
『どうしたどうした?ヘリオス』
こいつが赫灼の精霊、イグニス!本物だ!僕は本当にファンタジーの世界に来たんだ!
陽太郎は驚嘆と歓喜が入り交じり、テンションが上がった。ここが剣と魔法のファンタジー世界であるということを理解して。
戻って良いよ。
『ん?なんで呼び出したんだよ、全く』
イグニスはそう言うとすごすごと戻って行った。
母上には見せられないからな。
頭を働かせて、陽太郎はこれからどうするかを考え始める。
僕がこの世界にいるって事は将星達も来ているだろうし、けど合流に動き出せるほど今の状況、自由じゃないんだよね。一応子爵家の長男だし、それに僕は精霊と契約してるから将来は精霊騎士団の何れかに所属することになるだろうし。
そこまで考えた所でふと陽太郎は思う。
僕は安定した収入を将来見込める。それに辺境よりのクレイアント家には領地が結構ある。未開拓地だけど安住出来るだろうし、皆の住む場所を作ろう。もしかしたら僕と同じ国に転生してる人も居るかも知れないし。
そう思った陽太郎は一つの懸念事項を思い出して内心頭を抱えた。
そうだ、あの父上の第一夫人を何とかしないと、本当に殺されるかもしれない。かと言ってなぁ。
結局悩むことに変わりはなかった陽太郎だった。そしてその後、必死に看病してた母上が泣き出した時には必死に何とかしようとして、ちゃんと起きているとアピールし、その後母上に怒られる事も。