第五話 アストラス
将星は頭痛から解放されたのか、玉のような汗をかきながら目を覚ました。それと同時にまだ寝起きで働かない頭に鞭を打って思考を開始する。
えっと、取り敢えず俺は誰なんだ?っていや、質問が突拍子過ぎたな。今の意識的に大体の身体の主導権は俺が持ってるみたい。一体何が起きたのか?それは俺はアストラスという13歳、つまり俺と同い歳の男の子になった。ちなみに通称はアストである。
何言ってんのかって?こっちが聞きたいくらいだよ!身体は軽いし筋肉もあるけど、家にゲームも無いしスマホもないし、そもそも家が家と呼べるほどのものじゃないし、大輝達居ないし、頭が痛い、ここって生き地獄!?あーもう、良いや。考えるのに疲れた。
将星は自分の身に起きたことが事実である事は分かるがあまりに非現実的な出来事で混乱した。
更に現在自分の置かれている状況がより将星の現実逃避を促している。
元々アストラスは孤児なのだ、将星はちゃんとした両親の元でそだてられたというのに。
しかも無き親の出生が少し特殊であり、今現在家族の様に固まっている三人組が結成されるまではアストラスは非常に苦しい生活を送っていた。
といっても肝心の記憶が結構抜けてて、何が起きたのかすら分かんないんだけどな。
将星は皮肉げにそう思いながら孤児であるアストラス達が日々行っていたゴミ拾いも仲間二人がやってくれているので、本格的にすることがない将星はどうにかして何か思い出せないかと奮起する。
はあ、何かないかな。頭を刺激出来るようなやつ。衝撃があれば思い出せるかもしれないし。
ふとそう考えた将星は一先ず頭を叩くと、その痛みで涙目になった。
やっぱ、ダメか。頭痛いし。そう言えばさっき感じてた痛みは消えた。なんでだろ?アストに俺が馴染んだとか?
将星は適当に考えたこの内容が、何となく的を射ている様な気がした。
何故ならこの将星達三人が拠点としている場所には護身用としての剣が抜き身で置いてあり、何の手入れもされていないが弓矢も存在していた。
これ、いつの時代だよ。弓矢に剣って。銃もない貧困した国なのかな?それとも未開の地とか?
将星は見たくないものから目を背けて、取り敢えず推論を重ねていく。
だったらなんで近くに鏡華や大輝や陽太郎が居ないんだろうか。ん、喉乾いたな。
自分の喉がカラカラに乾いている事に気付いた将星はコップ代わりの鍋を水を飲むために持ち上げた。その時、ふとした瞬間に水の上に浮かぶ自分の顔。それを見て驚愕に目を瞬いた。
え、俺の顔、こんな顔じゃないし。どうなってるんだよ、寝てる間に整形でも受けさせられたのか?
ここまで考えた所で、将星は現実逃避を止めた。
そうここは、将星達の生まれ故郷、地球ではなくてまた別の場所であったという事になる。
将星は意味も分からず混乱し、頭痛も相まって再度気絶した。