第三話 陽太郎
あれ、僕、いつの間に倒れてたんだ?というか皆は?
ふと目が覚めた陽太郎は頬に砂の感触があって身体を起こし、周りを見渡した。
ここ、どこなんだろうか。前にテレビで見た英国貴族の屋敷みたいだ。それに僕ってこんな服着てた?そんな訳ないよね、制服着てたんだし。
陽太郎は何が何だか分からない、更に周囲を見ても出口の一つも見当たらないので、陽太郎は脱力感を覚えながら、屋敷の庭を歩いていく。
「あの、ヘリオスお兄様。大丈夫ですか?」
そして花が沢山植えられている所に来ると全く知らない女の子から声をかけられた。
誰の声だろう、愛おしいような気も、聞いたことがない気もする。よく分からない。女の子の……声?
陽太郎は未だにはっきりとはしないぼんやりとした意識の中でふと頭が痛いなと思い、手を当てる。するとそこにはべっとりと血が付いていた。
「…………!?」
陽太郎は戦慄した。手が赤く血で染まり、驚きの余りに素っ頓狂な声を上げる。そして、事情を聞こうと先程声が聞こえた方向を向くと、女の子が佇んでいた。
「ヘリオスお兄様!?どうなされたのですか!?そ、そんなに血が……」
女の子は陽太郎の顔を見ると顔を真っ青に染めて、その後貧血を起こしたかのように脱力した。
その様子を見ていた陽太郎は困惑して、頭のじくじくとした痛みを諸共せずに女の子の体を支えた。
「え!?どうしたの!?ってかお兄様って僕のこと!?」
僕は一人っ子だ、と思いながら取り敢えず女の子を抱えて、陽太郎は周囲の人を探し、大きな家を見てとると無意識の内にその方向に歩き出した。
って、僕の頭から血が出てるけど、案外痛くないものだね。あれ、傷口がもう瘡蓋になってる?1分も経ってないのに!?なんでだろう。
陽太郎は疑問を抱えながらも女の子を担いで運び、遂に陽太郎が屋敷に到着した。結構広い家だから守衛さんみたいなのが居るのか、と思いながら家の前に立っていた兵士のような見た目の男に声をかける。
「あの、この子を……なんで居なくなったんだ?」
この女の子を預けようと思ったのに、と陽太郎は思う。
仕方ないから、と女の子を担いだまま、別の場所に行こうと後ろを向いて一歩踏み出したところで甲高い悲鳴のような声が聞こえた。
「ヘリオス!私の娘に何したの!?早くその手を離しなさい!」
ヘリオス、ってやっぱり僕の事だよね?そう思ってゆっくりと前を向いて意識の無い女の子を支えながら、見返した。
するとそこには顔を鬼のように歪めた怒り心頭のおばさんが立っていた。
「まあ!なんと野蛮な。やはり亜人の子は……。全く……あの方に目を付けられてさえいなければ……あの方に言い付けてやりますからね、覚えてなさい!早くその子を兵に渡して!」
何だこいつ、と思うが娘を心配してるんだろうと思い直し、先程家の前に立っていた兵士に女の子を預けた。
それと同時に頭に酷い頭痛を覚え、その後に陽太郎はクラりと地面に倒れ込んだ。
貧血かな?頭から血が出てたしね。その割に痛みはなかったんだけど。
陽太郎がそこまで思った所で追い打ちのように頭痛を感じながら、意識が落ちた。
「ヘリオス!?大丈夫なの!?」
最後に優しい女性の声を聞きながら、意識の糸がプツンと途切れた。