第二話 大輝
「あれ?ここ、どこだ?それに、少し頭が痛い?身体も変な感じだ。妙に脱力感があるというか……力が上手く入らない」
大輝は起きて早々にそう言った。そして頭を軽く押さえながら立ち上がり、首を左右に振りながら周囲の様子を確認した。そして、自分の身体を確認しようとしたを向き、大輝は首を傾げた。
「何だこの格好?あれ、こんな服持ってたか?ボロボロだし、あれ腕も細くなってるじゃん。俺はずっと寝てたのか?まあ、良いか」
辺りはとても薄暗く、そして音が良く響く。大輝は地面を触ってその感触を確認すると動き出した。
「おかしいな。通学路を通ってたはずなんだけど。洞窟じゃん。妙に肌寒かったし。それに確かチューインガムを食ってたはずなんだが、それにルーチェって誰のことだ?うぅむ、分からないことだらけだな。他にもあいつらは大丈夫なのか?それになんか身長縮んでないか?ったく、考えるのは苦手なんだよ」
そう言うと大輝は風のする方向に向かって歩き出す。そして走ろうと足腰に力を込めて一歩踏み出すと、イメージに身体がついて行かないのか、大輝はツンのめった。
「いてて。やっぱり身体がおかしくなってるな。全く、はぁ」
仕方無く歩いて出口を探すために歩き始めた。
「えっと、確か右手を壁に付けて歩いたら迷わないんだったよな?あれ、左手だっけ?」
うろ覚えの知識を使って出口を目指していると、急にカツカツ、カツカツという音が聞こえ始めた。
そして大輝は出口だと思い、飛出とした瞬間に身体が凍り付いた。
なんなんだ?この化け物は。大輝は驚愕に顔を歪めながら反対方向を向いて全速力で駆け出した。
その化け物とは……黒い毛皮、丸々と太った肉体、特徴的な二本の前歯、そう鼠である。それも野生で見たものとは二回りどころの騒ぎではない、人の腰くらいまである超大型のネズミであった。
「なんだあれ、なんだあれ、なんだあれ!」
大輝は慄き、そして180度回転すると一目散に逃げようとする、だがやはり脚が縺れてずっこけた。
膝にジクジクと痛みを感じ、それと同時に少しだけ記憶を取り戻した。
俺は……ルーチェだ、いやルーチェだったんだ……。
こうして、少しずつ大輝はルーチェの記憶を取り戻していく。それと同時に大輝の記憶と絡まり合った。