第零話 プロローグ
こんにちは。私の名前は流川将星。あーもうやめやめ。真面目にやるのは性にあわないな。いや、改めて俺の名前は将星だ、よろしくな。
将星は新高校一年生である。もう既に学校には五回くらい登校しているのだが、よく分からない特別活動とかいう授業で自己紹介をする事になったのだ。
なので、将星は初めての挨拶でどのような形で挨拶するかを考えながら道を歩いていた。
俺の特徴か、少年バスケしてたから運動能力と動体視力が普通の人より少し良いくらいか。あとは最近は歌とかよく聞くから、耳コピが少し出来るようになってるけど、これは自己紹介にいらないよなぁ。
不意にドン!という肩の衝撃と共に将星の幼稚園からの幼馴染、長谷川大輝がひょっこりと顔を出した。
「おっはー。将ちゃん。今日は砦の夜できる?」
長谷川大輝は結構明るい性格の少年で、運動神経がそこそこ高い、が頭が少しお粗末なのだ。ちなみに砦の夜とは最近流行りのFPSゲームの一つである。
色々なことを考えながら少し脱線した思考を元に戻すかのように将星は声を上げた。
「出来るよ?何時からする?」
「そんなもん、帰って直ぐに決まってるだろ?あ、でも今日部活じゃね?」
「ははは、出来ねぇじゃん。部活終わりって確か七時だったよな」
「マジかよ。ちくしょう。ゲーム出来ねぇのかよぉ」
「仕方ないだろ?まあ、運が無かったとは思うけどな。なんと言っても週六のサッカー部なんだから。ってかこの中学、サッカー部が強豪だって知らなかったのか?」
「知らなかったんだよなぁ。そうそう、今日オカンからハンバーグが4個入ったハンバーグ弁当なんだ。友達と食って来いって言われたんだけど、食う?」
「お、食う食う。最近飯がどうも少なくて満足出来ないんだよなぁ」
とそんなことを話していると後ろからもう二人の幼馴染が歩いてきた。
「おーい。二人とも!おはよう!って何があった?」
今声を上げたのは伏見陽太郎、小学からの幼馴染だ。頭が良くて成績優秀だが運動神経が絶妙に悪い。それと真面目な事を言っておきながら陽太郎も将星と同じFPSゲームをしている。
ついでに言うと陽太郎は残念イケメンの筆頭である。元々頭が良くて勉強勉強の生活をしてるから、ウザがられる事が多い。その所為で彼女は出来ないがクラスのイケメンランキングに乗る程度には顔が整っている正真正銘の残念イケメン。
「どうせ今日が部活だからって嘆いてるんでしょ?それより皆、チューインガム食べる?ブドウ味なんだけど」
そしてこいつが倉木鏡華、陽太郎と同じく小学からの幼馴染で、クラスのギャルの子達と良くつるんでる。コミュ力最強の現代女子。
成績もそこそこ良く先生も扱いに困っているようだったが、特に性格が悪い訳でもなく、鏡華は誤解され易い女の子であった。
「鏡華、どうせって、まあ全部あってるけどなぁ。大輝はどう思う?」
ちょっと不憫に思った将星が大輝へと話を振るが、大輝は目の前に差し出されたキューブ状のお菓子に夢中で全く話を聞いていない。
「食べる食べる!いや、やっぱこれは王道のブドウ味だよなぁ」
とここまで大輝が言ったところで将星はその頭を軽く叩いた。
「お前は小学生から成長してないのか!?昔から甘い物ばっかり食いやがって、将来糖尿病になるぞ」
将星は大輝が何度虫歯になったことか、と心の中で溜め息を吐く。
「ほらほら、そこまで。別にいいじゃん。お菓子は美味しいよ?」
「いや、美味いけど、子供っぽくね?あと大輝は食い過ぎな?」
「そんなの将ちゃんに関係ないだろ?何を食べようと俺の勝手だ!部活はエネルギー使うんだよ」
「んだと、この野郎!関係無いは酷くね!?」
大輝の発言に怒りを覚えた将星が大輝ど言い合いを始めた。
やはり喧嘩するほど仲がいいとはよく出来たことわざだ、と思いながら陽太郎は二人を止めに入る。
「大ちゃんは既に5、6回は虫歯になったって言ってたから、心配してるんですよ。大ちゃんもちゃんと受け止めないと」
「いや、甘い物は正義だぞ?」
「毎回毎回虫歯作る癖に何言ってんだ。その上に歯を削られるのが嫌だって歯医者に行かず悪化させよって、銀歯何個あるんだよ!」
「六個だよ!悪いか!」
「いや、悪いですよ……」
結局また言い争いに発展して、止めても無駄だと悟った陽太郎は今度は鏡華と話し始める。
「そう言えば鏡華、今日は珍しいね。ギャルグループとは登校しないの?」
「今日は友達が風邪で休みらしいから、こっちに来たんだよね」
「ふーん、神木さんは今日休みなんだね。久々に一緒に登校じゃない?」
こうして四人は話しながら学校に向かって歩いている最中、四人の視界が急に暗黒色に染まり、足元に幾何学的紋様が浮かび上がる。そして謎の黒い光に包まれて全員意識を失った。
一体何が起きたのか、それはまさに神のみぞ知るところであった。