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【 虹獣 】 2章:ドグマ 1話:純貪(ジュンドン)

 生きるという事は……貪る事だ。

 生きるという事は……欺く事だ。

 生きるという事は……屠る事だ。


 静寂な夜…。照らされぬ明かり…。その闇に乗じて動く陰…。一匹の獣…。ドグマ。真っ黒な毛並みのドグマは闇に溶け込む。


 多くの動く物が心身を休ませる為に眠りにつく。その空間は闇に生きる物が支配する領域。その静けさはドグマの聴覚を刺激して内なる衝動を掻き立て、それから生み出された気が脳漿を塗り潰していき、ドグマを狂化させる……。

「食べ物が…鳴いている……」

「俺に食べて欲しいんだろ?」

「焦るなよ…ちゃんと喰らい尽くしてやるからさ!」

聴覚で収集した情報が示す場所へと敏速且つ無音で近付き、慌てて鳴くのを止めた物を嗅覚で探知し、舌を伸ばして舌先で掬い上げ口へと運び、蠢く物を二度三度と咬み砕き「ぴく…ぴく……」と、最後の生を刻む拍子を味わいながら胃へと送り込む……。その送り込む刹那が高揚を醸し出し、一時的な充足感に包まれる……。が…胃までの道のりは短く、充たされぬ想いは一時的に充たされた感覚によって更なる貪欲さを心底に生み出し、一匹、二匹…三匹……と、貪っていく……。

「貪る…むさぼる…ムサボル…むさ、ぼ…るぅ……ぅぅぉぉぉーーー……ぁぁ………」

ただ「貪る事」それだけに執着したドグマは、聴覚と嗅覚を頼りに感知した粒をひたすら貪る。まるで予め決められた機械のように、貪る事を繰り返す……。

「かくれんぼかい?…」

「俺は君ら生命の拍子を味わいたくて待ち切れないんだ…焦らすなよ!」

そうドグマは低く小さくも通る声で呟きながら、必死に自分の存在を消そうとしている蠢くものを口へと運ぶ。「ぴく…ぴくぴくっ…ぴくん……」そう最後の生が刻まれる、そして蠢くものが迎えるは死。

「生きるとは!喰う事だ!」

「死ぬとは!喰われる事だ!」

「もっともっと喰わせろ!もっともっと教えろ!生きるとは!?死ぬとは?!」

そう叫びながらドグマは蠢くものを喰らいまくる。喰っても、喰っても!喰っても!!癒える事の無いこの渇き……。充たされる事の無いこの飢え……。草花を幾ら貪ろうとも……。蠢く虫を幾ら貪ろうとも……。


 生きるという事は……貪る事だ。

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