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休息二日目 校外学習(14)

さすがに休みなしの連勤が続いたので疲れがピークです。今日は少なめの更新です。

「真友ちゃーん!」

「真友さーん!」

 私たちはくぼ地に降りて、真友ちゃんの名前を何度も呼んだけれど、返事は一向になかった。

(もしかしたら、本当に怪我をしていて動けなくなってるのかも)

 だったら、急いで見つけてあげなくちゃ。けれど、くぼ地の中は岩が多いため起伏が激しく見通しが悪かった。私は気を失って真友ちゃんが流されている可能性も考えて滝壺から流れに沿って温泉の中を進んだ。こんな夜中なのに、辺りが明るかったのは幸いだった。

(あれ?)

 今の今まで不思議に思わなかったけど、なんでこんなに明るいの?よくよく考えてみればここには電灯もなければ、明かりもない。なのに温泉の中はまるで蛍光灯に照らされたように明るい。私は、理由を調べてみたい思いに駆られたけれど、頭を振ってその思いを振り捨てた。

(今は、そんなこと考えてる時じゃない!早く真友ちゃんを探さなくちゃ!)

「ミズキ、真友ちゃんは見つかった?」

 頭上を飛ぶミズキに声をかけてみた。

「湯気が多くて、あまり先まで見えません」

「分かった・・・ミズキ」

「はい」

「悪いけど、リノンさんと、刹那ちゃんを呼んできて。二人の力が必要だから」

「はい、分かりました」

 ミズキは翼を大きく羽ばたかせて猛スピードで元の場所へと戻っていった。

(これで、一つ手は打てた。次に私に出来ることは・・・)

「瞬!知己!返事して!」

 私がとっさに思いついたのは二人の力を借りることだった。

(瞬なら、探すためにいろいろな方法を考えてくれる。知己なら、体力に任せて探してくれる。それに・・・)

 知己の持っている能力のことを考えた。「不死」の属性。

(もし、真友ちゃんが怪我をしていたら知己の血も必要になるかもしれない)

「瞬!知己!助けて、お願い!」

 私は声を限りに叫んだ。すると、滝の中から唸るような声が聞こえてきた。

(え!誰か居るの!)

 得体の知れない何かにおびえるようにして私は近くの岩の後ろに身を隠した。と同時に、滝の中から二つの影が飛び出してきた。

「死ぬかと思ったじゃねえか!」

「お前が無茶するからだ!このバカ!」

「お前が急に飛び掛ってきたからだろ!暴力反対が聞いてあきれるぜ!」

「お前が高山さんの話を盗み聞きしようとするからだ!」

「盗み聞きなんてしてねえだろが!俺は堂々と聞こえてるって教えてやっただけじゃねえか!お前のほうがこそこそ盗み聞きしてたんじゃねえのか!」

「俺は、高山さんに対してそんなことは絶対にしない!絶対にだ!」

 二人はお互いの肩をつかみ合ったまま、しばらく動かなかった。お互いの額がぶつかるくらいの距離でにらみ合った二人に、何て声をかけたらいいのか分からず、しばらく様子を見ていると、

「だよな」

「だよな」

 お互いにそう言い合ったかと思うと、不意に両手から力が抜けた。そして、お互いの肩から手を離した。

「あーあ、疲れた」

 そう言ったのは知己だった。

「すまない。冷静じゃなかった」

 そう言って頭を下げたのは瞬だった。

「まったくだぜ。お前は希望のことになると、熱くなりすぎるのは悪いところだぜ」

「お前に言われたくないが・・・その通りだと思う。反省する」

「おう。まあ、俺もお前をあおっちまったんだから、仕方ねえけどな・・・俺も調子に乗りすぎた。反省する。けどよ、いきなりつかみかかって滝の中にドボンはなしだぜ。本当に死ぬかと思ったぜ」

「ああ、俺も死ぬかと思った」

 そこまで話すと、二人は顔を見合わせて、突然笑い出した。まさに、お腹を抱えて笑うって言葉がぴったりの笑い方だった。楽しそうに笑う二人の姿に、さっきとは違う声のかけずらさを感じつつ、私は岩陰に隠れたまま恐る恐る声をかけた。

「瞬、知己」

 二人の笑いがぴたりと止まった。

「今、高山さんの声が聞こえた」

「ああ。俺たちの名前を呼んでた。返事したほうがいいんじゃねえか」

「ああ、頼む」

「よーし」

 知己は大きく息を吸うと、身体中から出したような大声を出した。

「希望!何か用か!」

 あまりの声の響きに、耳がキーンと鳴るのを我慢しながら私は返事をした。

「あんまり、大きな声を出さなくて大丈夫だから。私、すぐ傍に居るから」

 そう言って、私は岩陰から顔を出して手を振ってみた。最初に気づいたのは瞬で、そのすぐあとに知己が気づいた。

「・・・・!!!」

 二人は声にならない驚きの声をあげた後、湯舟の中に勢いよく潜ってしまった。湯舟の上に大きな水しぶきが立った後、ぶくぶくという音とともにいくつもの泡が浮かんできた。

(悪いことしちゃたかな・・・でも、緊急事態だし・・・)

 二人のもとに駆け寄ろうかとも思ったけど、さすがに裸のまま二人の前に立つの恥ずかしかった。たしかに、二人の裸は見ちゃったけど、上半身しか見えてないし、それだったら水泳の授業で何度も見てるものだから・・・

 温泉の中で駆け回ったせいか、少し頭がくらくらしてきて考えがまとまらなかった。

(って、そんなこと考えてる場合じゃないんだ!今は、真友ちゃんのことが大事なんだ!)

 私が意を決して二人のもとに行こうとした時、知己と瞬がゆっくりと湯舟から顔を出した。

「希望、まだ居るのか?」

 知己が顔を真っ赤にして聞いてきた。

「・・・うん」

「お前、スケベだな」

「違うよ!それは誤解!」

 私があわてて否定すると、瞬が口を開いた。

「知己!高山さんが、『覗き』なんてするわけないだろ!」

「けどよ、実際にここにいて、覗いてるじゃねえか」

「私、覗いてないよ!」

「じゃあ、なんでここに居るんだよ。ここは男の場所だろ」

 私は、すぐさま真友ちゃんがこの窪地に落ちてしまったことを二人に伝えた。

「さっきから、何度も呼んでるんだけど返事がないの。もしかしたら、怪我をして動けなくなってるのかもしれない。だから、お願い。真友ちゃんを一緒に探して」

 私がお願いすると、二人は声をそろえて応えてくれた。

「任せろ!」

「任せてください!」

 二人の言葉が心のそこから頼もしく感じた。


「とりあえず高山さんは、リノンさんたちと合流して後藤さんが落ちたという滝の付近をもう一度捜してみてください。僕と知己は、流れに沿ってここから先を探してみます」

「分かった」

 二人と別れてミズキが下ろしてくれた岩のところまで戻ってくると、すでにミズキがリノンさんと刹那ちゃんを連れてきてくれていた。

「まったく、あんたらはゆっくり温泉にもつかれないのかねえ」

 開口一番そう言ったリノンさんは、赤い水着を身に着けていた。

「ん、これか?これが言ってた下着兼水着ってやつだ。男共と一緒に動くのにさすがに裸はまずいだろ。だから、ほれ」

 そう言って渡されたのはバスタオルくらいの薄手の布だった。

「あたしたちの前にここを利用したやつらの忘れ物だ。これを体に巻いておけば少しはましだろ」

 リノンさんに言われたとおり私たちは体に白い布を巻きつけると、一斉に真友ちゃんを探し始めた。けれど、いくら探しても真友ちゃんは見つからなかった。

「おーい、希望。見つかったか?」

 遠くから知己の声が響いてきた。

「ううん!まだ、見つからない!」

「そうか、分かった。なら、俺たち滝の裏側を探してみる。」

「滝の裏側?」

 私が訪ねると、瞬の声が返ってきた。

「はい。そちら側にもいくつか滝がありますよね。その中に、洞窟のある滝が何箇所かあるんです。先ほど、僕と知己が滝の中から出てきた場所もそうです。ですから、もしかすると何かの拍子で後藤さんは滝の裏側に流されてしまっているのかもしれません」

「分かった。私たちも探してみる」

 

 洞窟のある滝はすぐに見つかった。

「ここって、ミズキが最後に真友ちゃんを見た滝だよね」

「はい。真友さんは、この滝を勢いよく下っていきました」

「なら、話は早いな。ちょっと、待ってな。確かめてくる」

 リノンさんは、大きく息を吸うと、滝の中に飛び込んだ。大きな水しぶきが上がって、リノンさんの姿は滝の向こう側へと消えてしまった。

(大丈夫かな?)

 少し不安になった。滝の高さは3~4メートルくらい。ちょうど学校の2階の窓くらの高さから温泉が流れ落ちて滝になっている。バケツ一杯や二杯の水の量だったら、この高さから被ってもたいしたことないのかもしれないけれど、流れ落ちてくる水の量が半端じゃない。あれだけの量の水をいっぺんに被ったら、きっと立ってなんていられない。もしかしたら、衝撃で気を失ってしまうかもしれない。

(もし、真友ちゃんがこの滝に呑まれていたら・・・)

 そう思うと背筋がぞっとした。

「・・・大丈夫。真友は強いよ」

 後ろから私の背中を支えるようにして寄り添って、そうささやいてくれたのは刹那ちゃんだった。

「だから、心配しなくていいよ」

 私より少し背の低い刹那ちゃんは上目遣いに私の目を見つながら、そう言ってくれた。その言葉が不安に押しつぶされそうになっていた私の心を支えてくれた。不意に涙がこぼれた。

「だ、だ、大丈夫。心配しないで。泣かないで」

 刹那ちゃんが慌てた様子で私を励ましてくれた。

(ごめんね、刹那ちゃん。嬉しいけど。嬉しいからこそ、涙が出ちゃうんだ)

 私はあふれ出る涙を両手でぬぐいながら笑って見せた。

「ありがとう、刹那ちゃん」

 言葉にすると、涙が一層あふれてきた。

(ああ、そっか。私はずっと誰かに『大丈夫』って言ってほしかったんだ)

 だから、こんなに嬉しいし。涙が出るんだ。

 私の涙に驚いたミズキも駆け寄ってきて、『大丈夫だよ』『心配ないよ』と励ましてくれた。私はその度に涙をこぼしながら「ありがとう」「大丈夫だよね」を笑顔で繰り返した。


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