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四日目「三角関係?」 昼休み(2)

今日も遅くなりましたが、なんとか更新完了です。

「大丈夫、真友ちゃん」

 シーツに包まったまま、顔を見せようとしない真友ちゃんに私は何度も声をかけた。

(ミズキと知己の事がよっぽどショックだったんだね)

 真友ちゃんは、知己の事が好き。それは、この前聞いたこと。

ミズキも知己の事が好き。態度を見れば分かる。

ここでもう一度確認するけれど、知己は結構女の子にもてる。だけど、今まで一度も特定の女の子と仲良くなったことはなかった。私と真友ちゃんを除けば、知己の友だちは男の子たちだけだった。そういえば、私と真友ちゃんで知己に「好きな女の子はいないの?」と聞いた事があった。知己は照れながら『いねえよ』と言っていた。その言葉を聞いて、なぜかほっとしたのを覚えてる。きっと真友ちゃんは、私以上に、その言葉にほっとしていたのだと、今なら分かる。

「・・・ねえ、のぞちゃん」

 シーツの奥から真友ちゃんの鼻声が聞こえた。

「あたし、かっこ悪いよね・・・実はね、さっきミズキと二人きりになったときに、『抱きついたりするのは好きな人同士がすることだから、しちゃだめよ』って言ったの・・・そしたら、ミズキ、『じゃあお互いに好きなもの同士だったらしてもいいの』って言ったから、「それならいいよ」って言ったの・・・本当はね、そんなこと言いたくなかったんだけど、知己は駄目だよって言えなかった。でも、一番ショックだったのは・・・」

 真友ちゃんは言葉を詰まらせながら、悲しそう、つらそうにその言葉を言った。

「ミズキに『私は知己が好き。』ってはっきり言われたこと・・・それと、『私も、知己が好き』って言い返せなかったこと・・・くやしかった・・・本当にくやしい・・・」

 それきり、真友ちゃんは口を閉ざしてしまった。時折、シーツの奥から聞こえてくる、鼻をすする音が聞こえてきた。私は、真友ちゃんのそんな姿がいとおしくて、いじらしくて、何とかしてあげたいと思った。だから、私はシーツごしに真友ちゃんの背中を優しくさすってあげた。

「真友ちゃんは、素敵な女の子だよ。強くて、綺麗で、優しくて、私のあこがれの女の子だよ。だから、大丈夫」

 私は、胸の中の尾田先生を呼び起こしながら、今、真友ちゃんに一番伝えなくちゃいけないことを考えた。

「あのね、真友ちゃん。あせっちゃだめだよ。たとえ、誰が知己のことを好きになろうと、真友ちゃんの気持ちは、真友ちゃんだけのものなんだから。真友ちゃんが、胸の中で大切にしてきた気持ちを信じてあげようよ。それに、尾田先生も言ってたでしょ、『何事もあせらず、たゆまず、あきらめずに取り組み続ける事が大切だ』って。だから、真友ちゃん、元気を出して。真友ちゃんは、真友ちゃんらしく知己を好きでいればいいんだから」

「・・・・・のぞちゃん」

 シーツ越しに真友ちゃんの声が聞こえてきた。

「・・・のぞちゃんは、私とミズキのどちらを応援するの?」

(え!!)

 思ってもみなかった質問に私は言葉を失った。だって、二人とも大事なのに、どちらか片方だけを応援するなんてことできないよ。けど、真友ちゃんは、私の親友で今とても悲しい思いをしてる。真友ちゃんの気持ちが楽になるのなら、自分の気持ちに嘘をついてでも『真友ちゃんを応援するよ』って言ってあげたほうがいいのかもしれない。だけど、それは真友ちゃんをだますことで、ミズキを裏切ることになるのかもしれない。

(尾田先生なら・・・)

 そう考えたときに、自分の心の中に生まれた気持ちを素直に口に出した。

「私は、二人とも応援するよ。だって、二人とも大切だもの。それに、人を好きになるってことは、好きな人のために前に進むってことでしょ。私は、その気持ちを精一杯応援する。知己が誰を選ぶのかは分からないけれど、いい加減な気持ちで答えをだすようなやつじゃないから。だから、真友ちゃんは自分らしく知己を好きでいればいいと思う。あせらず、恐れず、自分らしく、どこまでも前を向いて進めばいいよ。私は、そんな真友ちゃんとミズキを応援する」

 言い終えて、自分の言ったことに不安がよぎった。

(本当に、こんな言葉でよかったの?)

 自分の中のもう一人の自分がそう問いかけてくる。けれど、もう一方で

(本当に伝えたいことを伝えたんでしょ。なら、いいじゃない)

 そう納得する自分もいる。なにか問題が起きて悩むたびに、私の中には何人もの自分が生まれるような気がする。そのたびに、私はたくさんの自分の中から、今、自分にとって一番いいと思う自分を選び、前に進む。けれど、いつでも不安なんだ。本当に、その自分でよかったのかって・・・

「ありがとう、のぞちゃん!」

 シーツが跳ね上がったかと思うと、真友ちゃんが私の首に抱きついてきた。

「のぞちゃんのおかげで元気が出たよ」

 そう言った、真友ちゃんの声にはいつもの真友ちゃんらしい快活さが感じられた。だから、私は嬉しくて、真友ちゃんの背中に手を伸ばした。

「よかった。真友ちゃんが元気になって」

「うん。もう大丈夫」

 真友ちゃんは私の首から手を話すと、両肩をつかんで私に笑顔を見せてくれた。

「『好きな人のために前に進む』って言葉。私、大切にするね」

「うん」

「のぞちゃんにはいつも勇気や、元気をもらいっぱなしだね」

「そんなことないよ。私だって、真友ちゃんには助けてもらってばっかりだよ」

「でも、よかった」

「???」

 私が首をかしげてみせると、真友ちゃんは、いたずらっぽい笑顔を見せた。

「のぞちゃんが、ライバルじゃなくて」

「それってどういう意味?」

「もし、のぞちゃんが恋のライバルだったら敵わないってこと」

「そんなことないよ。私こそのぞちゃんが恋のライバルだったら絶対に敵わないと思うもの」

「ありががと、のぞちゃん。けどね・・・」

 真友ちゃんは、私の目をしっかり見つめると、言葉を続けた。

「もし、のぞちゃんが知己のことを好きになったら、知己は間違いなくのぞちゃんを選ぶよ」

 私は、『そんなことないよ。』といいかけて口を閉じた。真友ちゃんのまなざしがあまりにも真剣だったから、その言葉を黙って受け止めた。そんな私の様子を見て、真友ちゃんはくすりと笑いをこぼした。

「でも、本当によかった。のぞちゃんの好きな人が別にいてくれて」

(えええ!!!)

「えーっ!!!」

 心の中の驚きと同時に言葉が出た。そして、私はその言葉をすぐさま否定した。

「私、好きな人なんていないよ!」

「隠してもだめだって。のぞちゃんの様子を見てたら一発で分かるもん。ここだけの話、瞬や知己も知ってると思うよ」

「でも、私本当に好きな人なんていないよ」

 私がむきになって否定すると、真友ちゃんは困ったような顔をしてこう答えた。

「ごめんね。まあ、のぞちゃんが嘘をつくとは思わないから、きっとのぞちゃんにとっては、それが本当のことはそうなんだと思う。だけど、自分の姿が自分には見えないように、自分の心の中も結構自分じゃ分からないこともいっぱいあると思うんだ。だから、のぞちゃんが気づかずにいる気持ちに私たちが気づいてもおかしくはないでしょ」

 私は真友ちゃんの言葉に何も言い返さなかった。真友ちゃんの言葉が全部合っているとは思わなかったけど、全部間違っているとも思わなかったから。それに、私に好きな人がいるということが本当なら、それが誰なのかを聞いてみたいという気持ちと、聞きたくないという気持ちがぶつかり合って胸が少し苦しくなったから。

「ごめんね。のぞちゃんを困らせるつもりはなかったんだよ」

 心配そうに私を見つめる真友ちゃんに私はできる限りの笑顔を返した。

(私、今本当に笑えてるのかな)

 そんなことを考えながら笑っている自分がなんだか嫌だった。そんな私の気持ちが真友ちゃんに伝わったのかもしれない。

「じゃあ、この話はここでおしまい。ごめんね、私が今言ったことは忘れて。私も忘れるから。よーし、じゃあ、気合をいれていきますか。なんたって、私は今から決戦場に向かわなくちゃいけないんだからね」

 そう言って、ガッツポーズをとりながら私に笑いかけてくれる真友ちゃんはやっぱり綺麗だった。そして、そうやって私のために元気いっぱい振舞ってくれる真友ちゃんの気持ちが嬉しかった。だから、私は精一杯の感謝の気持ちを込めてこう言った。

「がんばってね、真友ちゃん!」

「うん!」

 小気味のいい返事が部屋中に響いた。


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