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「昼休みと課外授業」(1)

更新時間が遅くなりましたが、何とか今日の更新終了です。

 キーン コーン カーン コーン


 昼休みのチャイムが鳴り響き、私たちは教室の窓際にある尾田先生の机の前に集められた。尾田先生は、宿題の丸付けの手を止めると椅子を私たちの方へむけ四人の顔をゆっくりと見渡した。そして、何かを言おうとして一度口を閉じると今度は窓の外へと目を向けた。先生の視線に吸い込まれるように窓の外を見ると、五月の優しく澄んだ日差しに照らされた真っ白な雲が抜けるような青空をゆっくりと進んでいくのが見えた。

「いい天気だな」

 尾田先生はぽつりとそう言うと、また私たちの方へと目を向けた。

「下ばかり見てたら、空の青さを忘れてしまうだろ。今日は、みんな元気がないみたいだから、外に出て思い切り空を見上げて来い。いいか?」

 優しくそう語りかけてくる先生に、瞬が質問した。

「先生。空を見上げると元気が出るんですか?」

「ああ。今日みたいな空ならな」

 にっこりと笑顔でそう答える先生に今度は知己が声をかけた。

「なあ、先生」

「何だ?」

 知己は少しためらった後、尾田先生の目をしっかりと見ながらこう言った。

「先生は、分けが分からないうちに大変なことに巻き込まれたりしたときはどうする。たとえば、いつのまにか知らないところに連れて行かれたりしたら。自分ではどうしようもないようなことになったら・・・」

 そこまで言うと知己はまた口を閉じてしまった。そして、まるで小さな子どもがお父さんにすがるような目で尾田先生を見つめた。私は瞬と真友ちゃんがその時どんな表情をしていたのか見ていなかったけど、きっと知己と同じような目で尾田先生を見つめていたと思う。私たち四人が固唾を飲んで尾田先生の返事を待っていると、尾田先生は少し考えてからこう答えた。

「先生なら、今自分にできることを全部やってみる。いいか、知己。自分ではどうしようもないと思った時に、物事は本当にどうしようもなくなるんだ。まず、自分で悩んで考えて、自分にできることを見つける。そして、見つけたことを全部やる。できることを全部やったら、次は他の人に相談してみる。そうすると、必ず自分にできることが新しく見つかる。そしたら、もう一度できること全部をやってみる。そうやって、自分にできることを最後まであきらめずに全部やっていけば、必ずどんなことでも乗り越えられる。先生の好きな言葉でこんな言葉がある。

『自分にできる限りの全てをやりきったものこそが英雄である』

 お前たちには英雄になる力がある。あとは、その力を使うか使わないかだけだ。だから、知己。自分ではどうしようもないなんて、絶対に思うな。いいか。お前たちは、先生が選んだクラスのリーダーなんだからな。自信を持て」

「はい!」

 四人そろって、心の底から返事をした。

(嬉しい)

 私は、尾田先生と出会えたことに感謝した。尾田先生の言葉が私の心を支えてくれた。行き先も、自分の場所も分からずさまよい続けていた私たちに、行き先と地図を与えてくれた。なら、後は

(進むだけだ!)

 私は思い切って尾田先生に聞いてみた。

「先生」

「ん?」

「もしも、先生の見てる夢と他の人の夢をつなぐことができたとしたら・・・どうしたいですか?」

 言いながら、私は自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。

(私、突然なんてこと聞いちゃったんだろう)

 突拍子もない質問をしてしまった自分が本当に恥ずかしくて、尾田先生の顔をまともに見られなかった。私がうつむいたまま黙っていると

「それって、他の人と同じ夢が見れるってことか?」

 尾田先生の言葉に私はとっさに

「はい」

 と答えた。

「そりゃあ、最高に楽しいだろうな!」

 尾田先生の声に、私は恐る恐る顔を上げた。すると、そこにはいかにも楽しそうな笑顔をたたえた尾田先生がいた。

「瞬。お前だったら、どんな夢を見てみたい?」

 突然の質問に少し戸惑いながらも瞬は

「もし、好きな夢が見られるなら友だちと一緒に世界中を冒険してみたいです」

「さすが、瞬だな。後藤さんはどうだ?」

「私。えーと、私なら、海賊が出てくる夢を見たいです。それで、お姫様が出てきて海賊の王子と恋に落ちるの」

「あ、それ知ってる。『海賊紳士』でしょ」

「正解!さすがのぞちゃん。私、大好きなんだ『海賊紳士』シリーズ。先生、知ってる?」

「そりゃあ知ってる。図書の時間に誰がどの本を読んでいるかくらいはきちんとチェックしてる」

「じゃあ、俺がいつも読んでる本も知ってるのか?」

 知己の質問に、尾田先生はもちろんと鼻を鳴らして答えた。

「当たり前だろ。お前がいつも読むのはギネスブックだ」

「おお!大正解!」

「まあ、お前たちの先生だからな。それくらいのことは知ってるさ。ということで、つぎは知己。お前ならどんな夢を見たい」

「俺は大リーグで活躍したり、水泳でオリンピックに出たりしたいです」

「なるほどな。じゃあ、最後に高山さん」

「はい!」

 私はうわずった声で返事をした。なんだか恥ずかしくてまた顔が熱くなるのを感じる。

「高山さんは、どんな夢が見たい」

「私は・・・」

 少しだけ考えてから思ったとおりのことを素直に答えた。

「私も瞬と一緒で、みんなと一緒に世界中を冒険してみたいです。冒険をして、そこでいろいろなことに挑戦して、みんなで力を合わせて乗り越えてみたいです」

 私の言葉を聞きながら尾田先生はニコニコ何度もうなずいて、こう答えた。

「高山さんの質問に答えよう。もし、夢と夢をつなぐことができるんだったら、先生はお前たちみたいな素敵な夢を持った人の夢とつながりたい。夢の中なら何でもありだから、先生もみんなと同じくらいの年齢に戻って一緒に冒険の旅に出かけられるしな」

「お、それ楽しそう!」

 知己が尾田先生の言葉に食いつくと、すかさず真友ちゃんも

「先生が子どもになったら、瞬みたいなタイプになるんじゃない。ね、瞬」

「それは、どうか分からないけど。少なくとも、もし尾田先生が僕と同じ年だったとしたら、ぜひ友だちになりたいと思います」

 瞬の言葉に尾田先生は目をきらきらと輝かせた。そして、本当に嬉しそうな顔で、

「ありがとう。先生も瞬のような友だちに出会えたら最高に嬉しいな」

 そう言うと、立ち上がって瞬の頭の上に右手を載せて軽くなでた。

(あ、いいな)

 私も、尾田先生に頭をなでてもらいたいな。そんなことを思って、『私も尾田先生と友だちになりたいです』と言ってみようかと思ったけれど、結局言えなかった。

(友だちか・・・けど、どうせなら友だちじゃなくて・・・)

 そこまで考えて、私は思い切り頭を振って、頭の中に浮かんだ考えを振り払った。

(あー、もう。あたしは馬鹿だ!何を考えてるんだろう)

「どうした?」

「あ、尾田先生。なんでもありません」

 不思議そうな視線を向けてくる尾田先生をまっすぐに見れなくて、私はまたうつむいた。

「なら、いいんだが。まあ、みんな元気が出てきたみたいだな。どうだ、なんでも話してみると元気がでてくるもんだろう」

 尾田先生の言葉に、知己が力強い声で返事をした。

「先生。俺、元気が出てきたどころか、試してみたいこといっぱい思いつきました」

「そうか。なら、もっとたくさん思いつくように外に出て思い切り空を見上げて来なさい」

「空を見上げるといいアイデアが浮かぶんですか?」

 知己の質問に尾田先生は間髪いれずにこう答えた。

「アイデアだけじゃない、元気も出てくるぞ。・・・高山さん!」

「はい!」

 突然の尾田先生の呼び声に、ほとんど反射的に返事をした。うつむいたままの私に尾田先生は優しい声でこう言った。

「不思議なことだけど。『幸せ』や『夢』や『希望』っていうものは、前を向いて進む人、上を向いて手を伸ばし続ける人の前だけに形となってあらわれる。だから、高山さん。どうせ向くなら下を向かずに上を向きなさい」

 尾田先生の言葉に、私は恐る恐る顔を上げた。そして、尾田先生の目をまっすぐに見つめた。尾田先生は、またニッコリ笑って私の頭を優しくなでてくれた。

「よし!やっぱり、高山さんは上を向いているほうがいい」

「えへへへ」

 嬉しくなって、つい笑ってしまった。

「じゃあ、外に行って日本で一番美しい季節の空を思いっきり眺めてきなさい」

 尾田先生の言葉に、私たちは元気いっぱい返事をした。

「はい!!」


明日は仕事がハードですが、気持ちよく更新できるよう、気合を入れて仕事してきます。

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