五月十五日(火) 夢の始まり 「朝食と登校と夢の続き」(2)
前回、中途半端な更新となってしまったため、今回かなり量が少ないです。
体育倉庫は、校門を入って左奥にあるコンクリート造りの小屋でその裏手が校庭から見えにくいことからかくれんぼをする時の隠れ場所によく使われていた。私たち四人もかくれんぼやおにごっこをする時にはよく使っていたし、私たちが出会って間もない頃のあの事件のとき以来、大事な話や内緒の話をする時にはここに集まるのが恒例となっていた。
体育倉庫の裏にはすでに知己が不機嫌そうな顔をして待っていた。
「遅せえぞ!ったく」
知己の言葉には耳も貸さず、瞬は四人全員が集まったことを確認すると。険しい表情を崩すことなく昨夜の夢のことを話し始めた。
「実は、昨夜不思議な夢を見ました。夢が不思議なのは当たり前ですが、昨夜の夢はただ一点において今まで見た夢と決定的に違うところがありました。それは、僕だけが見たはずの夢を知己も後藤さんも、そしておそらく高山さんも見ていたということです」
「ぷ。あはははは」
大声で笑いだしたのは真友ちゃんだった。
「何言ってんの、瞬。そんなことあるわけないでしょ。ねえ、のぞちゃん?」
「・・・」
「のぞちゃん?」
問いかけてくる真友ちゃんに私はすぐに答えを出すことができなかった。だって、私はさっき真友ちゃんに嘘をついてしまったんだから。けれど、嘘をつき続けることはできない。
真友ちゃんは親友だから。
だから私は少し悩んだ末、本当のことを真友ちゃんに話すことに決めた。
「真友ちゃん、本当にごめんなさい」
私は真友ちゃんに深々と頭を下げた。
「実は、私も真友ちゃんとまったく同じ夢を見たの。さっきのデジャヴの話も夢の中で聞いたことなの」
「えー!嘘!じゃあ、昨日の夢のことみんな知ってるの?」
「うん、多分・・・」
その後の言葉は出てこなかった。真友ちゃんも、ショックを受けたようで、口を開けてはいるけど言葉は出てこなかった。
「おい、瞬。お前の話が本当ならそろそろあいつが出てくるころなんだろ」
「ああ、おそらくな」
地面に顔を向けながらはき捨てるようにそう言った瞬の顔は、きつく下唇をかみ締めていて本当に悔しそうだった。
「あいつって、やっぱりあいつのこと?」
真友ちゃんの問いかけに、いらだたしそうに知己が答えた。
「あいつって言ったら、あいつしかいないだろ」
「昨日、友人になったはずなのだが。『あいつ』呼ばわりとはひどいな」
そう言いながら体育倉庫の影から現れたのはやっぱり夢見君だった。私たちが、驚きと恐れとが入り混じった視線を送り続ける中、夢見君は平然としながら私たち四人の中へと歩みを進めてきた。
「役者も舞台もそろったようだ。あとは合図だけ」
夢見君は私たち四人のちょうど中心に立つと決定的な一言を告げた。
「『昨日の夢を覚えているか』」
その言葉を聞いた瞬間、私は右の人差し指を天高く差し上げた。知己は自分の胸を指差し、瞬は夢見君を指差し、真友ちゃんは地面を指差した。
(夢の通りだ!)
昨日、夢で見た光景が今目の前に広がっている。一人ひとりが夢の中で聞いた夢見君の指示通りの場所を指差していた。誰もが口を閉ざした沈黙の空間に高らかに夢見君が宣言した。
「これで、分かっただろう。僕は夢と夢をつなぐことができる。後は、君たちが決めろ」
次回は、もう少し配分を考えて更新していきます。




