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「      」

サブタイトルの「    」は入力ミスではありません。これで正解です。

 真っ白な空間に私たち四人は立っていた。見渡す限り真っ白な空間。天と地の境目すら分からない、この無限の空間に来るのは二度目だ。だから、私には分かる。

「これって夢だよね」

 私の言葉に、瞬が即座に答えてくれた。

「そうですね。以前にも似たような光景を見たような気がしますが、恐らくデジャヴというものでしょう」

「デジャヴってなんだ?」

 知己の質問に答えたのは真友ちゃんだった。

「初めてのことなのに、前にあったかもって思うことでしょ。あたしも、よくデジャヴって見るんだ」

「へえ、どんな時にだよ」

「学校のテストの時なんかにね。あ、これやったことある、って思ったのにいくら考えても全然答えが分からないのよね」

「あー、あれがデジャヴか。それなら、俺もよく見るぜ」

「でしょ。不思議よねデジャヴって」

 二人は意気投合したみたいで、昔にあったデジャヴの話をし始めた。楽しそうに話している二人を見ていると、勘違いを訂正しないほうがいいのかもしれないと思うようになってきた。けれど、瞬はきっぱりと言い放った。

「話が盛り上がっているところ申し訳ありませんが、後藤さんの言っているのはデジャヴではありません。デジャヴとは、精神的、また肉体的に疲労している時に今見ている光景や、経験していることをまるで以前にも同じようなことがあったと錯覚することです。後藤さんが言っているのは、ただ単に授業で習ったことを忘れているだけです」

 真友ちゃんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。そんな真友ちゃんの様子を見た知己は、瞬の前に立ってこう言った。

「瞬、もう少し言葉を選べ。真友が可哀想だろ」

 知己の言葉に私も同感だった。

(『たとえ正しいことでも、言葉は選んだほうがいい』)

 五年生になってすぐの時に、尾田先生に言われた言葉だ。真友ちゃんは知己が自分をかばってくれていることに驚きを隠せないようで、眼を丸くして知己の後姿を見つめていた。そして、瞬は、そんな知己の真剣な眼差しをしっかりと受け止めていた。

「後藤さん、すみませんでした。以前と、同じ間違いを繰り返してしまいました。どうか、許してください」

 そう言って、深々と頭を下げる瞬の姿は、まるで英国紳士のようだった。といっても、英国紳士がどんな人なのかを私は知らないのだけど。そんな瞬の姿を見て真友ちゃんは、両手を胸元で横に振った。

「そんな、もういいよ。そこまでしてくれなくても。私、別に怒ってないし。それに・・・」

 そう言って、真友ちゃんは知己の上着のすそを軽く引っ張ってから、

「知己、ありがとね。ちょっと、嬉しかったかな」

 微笑みながらそう言った真友ちゃんの横顔は女の私でもドキッとするくらい綺麗だった。

「別に、お前のために言ったわけじゃねえよ」

 照れながらそう言った知己もどこか嬉しそうな顔をしていた。

(夢の中だからかな)

 いつもなら、ここで知己が余計なことを言って話がこじれるのに、今回はそうならなかった。知己と真友ちゃんがいつもより素直なのは、私の願望が夢に影響しているからかもしれない。でも、夢なのならもっと楽しいそうな所でみんなと過ごしたいな。たとえば、テーマパークとか、南の島とか、パーティーとか。

(あ、でも。これが夢なら、今からでも変えられるかも)

 私は、心の中で楽しいところを強く念じてみた。

(テーマパーク、テーマパーク、テーマパーク・・・)

「希望、眉間にしわよせて何してんだ?おーい、聞いてるかー?」

 間の抜けた声で、しつこく話しかけてくる知己を無視して私はテーマパークのことを念じ続けた。けれど、知己の妨害はさらにエスカレートし、ついには私の頭をぽんぽん叩き始めた。

「おーい、起きてるか?」

(ぶちっ!)

 さすがの私もあまりのしつこさに頭に血がのぼった。

「もう!いい加減にしてよ!集中できないじゃない!」

「うわっ。びっくりしたー。何だよ、起きてんなら返事くらいしろよ。立ったまま寝ちまったのかと思ったじゃねえか」

「そんなわけないでしょ。人がせっかくいい夢を見ようと思って頑張ってたのに」

 私の言葉に真友ちゃんが食いついてきた。

「え、何何?のぞちゃん、何を頑張ってたって?」

「うん。あ、えーとね。ここは夢の中でしょ。だったら、私が強く願ったらもっと楽しい場所に変えられるかなあって思って試してたの」

「へえ。やっぱり、夢の中でものぞちゃんはいいこと言うなあ」

「え、そんなことないよ」

「ううん。だって、私そんなこと思いもつかなかったもの。ね、瞬」

「はい。高山さんは夢の中でも、やっぱり高山さんです。正直、夢の中でこんなふうに高山さんと会えて僕は本当に嬉しく思っています。できることなら、毎日こうやって夢の中でも会うことができたならどれだけ嬉しいか分かりません」

 そう言ったときの瞬のまなざしは優しくて、それでいて強い意志を秘めたもののようにきらりと輝いて見えた。私は、少し胸の奥が熱くなるのを感じた。

(あんな目で見られたら、何だか・・・)

 夢の中なのに、まるで本物の瞬に見つめられているような気がして、胸の鼓動が高鳴るのを止めることができなかった。

「おい!あっちから誰か来るぞ!」

 知己の声に、私たちは一斉にそちらを振り向いた。たしかに、遠くからこちらに誰かが歩いてくるのが見えた。

「誰だろう、遠くてよく見えない。」

 眼を凝らしながらそう言った瞬間。


「これなら、誰だか分かるだろう」


 声が早かったのか、姿が目の前に映ったのが早かったのか分からない。それこそ、一瞬という言葉がふさわしいくらい突然に私たちの目の前に朝来君が現れた。

「うわっ!びっくりさせんな!」

 こういう時に誰よりも早く反応するのは、いつも知己だ。突然の事に内容はともかく素早く対応できるのは知己のいいところの一つだと思う。

「突然、人の夢の中に出てくんな!」

 食って掛かる知己を相手にする様子もなく、まるで独り言のように朝来君はこう言った。

「思ったより、手間取ったな」

「???」

(???)

 私を含め、他のみんなも朝来君が言った言葉の意味を理解できなかった。

「ああ、いい。僕の言葉は気にしないでくれ。今は理解してもらおうとは思わない。それより、伝えておくことがある。今から言うことをよく覚えておいてくれ。と言っても覚えているのは明日学校でここにいる四人が出会うまででかまわない。」

 そう言うと、朝来君は自分を中心にして、正面に私、右手に知己、後ろに真友ちゃん、左手に瞬の順番に立たせた。

「この並びが合図だ。明日、この形に並んだとき僕はこう言う。『昨日の夢を覚えているか。』と。そうしたら、君たちは・・・」


今日は分量が少なかったですが、とにかく継続第一で進めます。

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