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「放課後 リーダー打ち合わせ」(2)

もう少しで、物語が冒頭の部分につながりそうです。と言っても、あと数日はかかると思いますが。

 知己と真友ちゃんの掛け合いは延長戦の様相を呈していた。

「大体、お前がなんで関係してくんだよ!」

「変態から朝来君を守るためよ!」

「だから、だれが変態だって!」

「女の子の胸を触ったでしょ!」

「こいつは男だろ!」

「誰がどう見たって女の子でしょ!」

「でも、男だよな?」

 知己の言葉に朝来君は

「さあ、どうかな。君はどちらが好みだ」

「そりゃあ・・・って何を考えさせてんだ」

「変態。スケベ。はっ・・・あんた、まさかあたしのこともそんな風に見てたわけ」

「そんなわけねえだろ!」

「ちょっと、いいかな」

 二人の掛け合いに割って入る形で瞬が声をかけた。

「二人の話の途中で申し訳ないけど、朝来君と話をさせてもらってもいいかな」

「おう、いいぜ。真友の相手をするのもしんどくなってきたところだし」

「それはこっちの台詞よ!」

 朝来君のそばから離れると、瞬は朝来君の正面に立って話しかけた。

「朝来君に確認しておきたいことがあります」

「何かな?」

「あなたが何者だろうと僕には関係ありません。クラスメイトとして、またクラスのリーダーとしてあなたと対等に付き合っていくつもりです。その上で、一つだけ宣言しておきます」

 瞬は真剣な眼差しに更に力を込めて言った。

「僕は、あなた以上に高山さんから必要とされる存在に必ずなってみせます」

(!!!)

 その言葉があまりにも力強くて、胸に響いたから思わず涙が出そうになった。どんな意味でそんなことを言ったのかは分からなかったけど、瞬が私のことを大切に思ってくれているという気持ちは痛いほど伝わってきた。だから、私は嬉しかった。

 朝来君は瞬の眼差しを正面から受け止め、真剣な面持ちで答えた。

「君の言葉と気持ちを確かに受け取った。ならば、それを行動で示すことだ。誓いとは果たしてこそ意義のあるものなのだから」

 瞬は強くうなずくと右手を差し出した。

「高山さんが認めたあなただから、僕もあなたを認めましょう」

「その手を握り返せば友だちになれるのか?」

「いえ。それは今後、あなたと私がどう振舞うかで決まります」

「なるほど。ならばその手を受けよう」

 朝来君は力強く瞬の右手を握り返した。私は、思わず拍手してしまった。

「ちょっと待った!握手なら俺が先だろ!」

 今まで黙って見ていた知己がここぞとばかり二人の間に割って入った。そして、朝来君の右手を強引に奪い取って無理やり握手した。

「君は強引だな。だが、そういうところも僕は好きだ」

「俺はお前みたいなやつは嫌いだぜ。けどな、尾田先生が『深く知りもしないうちから物事を決めるな。』って言ってたからな」

「じゃあ、私も朝来君をもっと知ることにする」

 そう言って知己と朝来君の握手を無理やり引き離したのは真友ちゃんだった。

「ただし、のぞちゃんを独り占めしようとしたり、私たちから奪おうとしたりしたら絶対に許さないからね」

 ニコリと笑顔を浮かべたと思った瞬間、真友ちゃんの右拳は朝来君の顔面に向かって放たれ、鼻先2センチのところでぴたりと止まった。けれど、朝来君は表情一つ変えなかった。

「へえ、いい度胸してるわね」

 真友ちゃんは、拳を広げると朝来君の前に差し出した。

「はい、握手」

 少しいたずらっぽい笑顔を見せた真友ちゃんはやっぱり綺麗だった。朝来君は黙ってその手を握り返すと、つぶやくように言った。

「君は美しいな」

「な!」

 握っていた手をあわてて振りほどくと、真友ちゃんは私のそばまで後ずさった。

「な、な、何、言ってんのよ!恥ずかしいわね!」

 真友ちゃんは耳まで真っ赤になっていた。

「恥ずかしい?君を美しいと感じることは恥ずかしいことなのか?」

「ちょっと待て」

 知己がこめかみに人差し指をあてながら朝来君の前に立った。

「一つ聞くが、お前が美しいと言ったのは、誰のことだ?」

 朝来君は、黙って真友ちゃんを指差した。

「うーん」

 知己は腕組したまま少し考えると、ちらりと真友ちゃんの方へ眼を向けた。

「あんた。また、失礼なこと考えているんじゃないでしょうね」

「いや。別に」

「じゃあ、何よ」

 知己は真友ちゃんの方へ向き直ると真顔で言った。

「お前ってやっぱり綺麗なのかなって。そう思っただけだよ」

「な!」

 真友ちゃんの顔は火がついたように真っ赤になった。

「こうやって見てみると綺麗だとは思うんだけどよ。でも、普段は全然そんなふうには思えないんだよな。瞬、なんでだろうな?」

 真っ赤になって口をパクパクさせている真友ちゃんを気にもせず、知己は瞬に質問した。瞬は、困ったような笑顔を見せて答えた。

「いつも一緒にいるからじゃないのか。空気と同じでいつもそばにいるとその価値になかなか気づかないものだからな」

「なるほどね」

 知己は一人うんうんとうなずくと、あらためて朝来君のほうに向き直った。

「OK。お前が真友を美しいと言った件に関しては了解した。けど、こいつ中身はかなりがさつで暴力的な女だからな。うかつに近寄らないほうがいいぜ」

「忠告感謝する。だが、その心配は無用だ」

「へえ、何でだ?」

「僕は君のようなミスはしない」

「???」

 知己が首をかしげた瞬間、どすっという大きな鈍い音がした。見ると、真友ちゃんの右ひざが知己のみぞおちにめり込んでいた。知己はそのままうずくまるようにして地面に崩れ落ちた。

(真友ちゃん、大丈夫かな?)

私はその時、なぜか白目を向いて倒れている知己よりも真友ちゃんの方が心配だった。耳まで真っ赤にした真友ちゃんは、私たちのほうへと振り向きもせず校庭のジャングルジムの方へ走り去ってしまった。私はあわてて追いかけた。もちろん、真友ちゃんの足に敵うはずもなく、ジャングルジムの前で立ち止まってくれたおかげで何とか追いつくことができた。

「真友ちゃん、大丈夫?」

 私が声をかけても真友ちゃんは振り向きもせず、両手で顔を隠したままだった。私は黙って真友ちゃんが落ち着くのを待つことにした。

(真友ちゃんはよっぽど知己のことが好きなんだな・・・)

 好きな人から綺麗だって言われたらどんな気分なんだろう。私は、好きな人の顔を思い浮かべて見て少し想像して見た。たったそれだけのことなのに、心臓の鼓動が駆け足をしたときのようになっていた。想像しただけでこうなのに、もし実際にそんなことを言われたらどんなに嬉しいだろう。そう考えたとき、自然と真友ちゃんに声をかけていた。

「よかったね」

 真友ちゃんは、顔を隠したまま小さくうなずいた。


 それから5分位してようやく真友ちゃんは落ち着きを取り戻した。

「ごめんね、のぞちゃん。心配かけちゃった」

「ううん。全然大丈夫」

「ありがと」

 真友ちゃんは、うーんと背伸びをするといつもの笑顔に戻った。そして、照れくさそうに言った。

「あーもう。本当に、あいつにはいつも振り回されっぱなしで嫌になっちゃう」

「ふふふ」

「あー、ひどいなのぞちゃん。笑うなんて」

「ごめん、ごめん。でも、うらやましいなって思って」

「えー、何が?」

「好きな人に綺麗って言ってもらえて」

 少し意地悪っぽく言ってみると真友ちゃんはまた顔を真っ赤にして顔を隠してしまった。そんな真友ちゃんはこの上なく可愛くて、綺麗だった。

「でもね、私も知己や朝来君と同じ意見なんだ。やっぱり、真友ちゃんは綺麗だよ」

 私の素直な気持ちを言葉にしてみた。真友ちゃんは両手の指と指の間から私のほうをちらりと見た。私はそのまなざしに「本当だよ」との思いを込めて精一杯の笑顔を返した。真友ちゃんは、顔を隠すのをやめると照れくさそうに言った。

「ありがと。嬉しいな」

 そう言った真友ちゃんの笑顔は少し大人っぽく、女の私でもドキッとしてしまうものだった。


 その後、しばらくしてようやく知己は起き上がってきた。知己自身は何が起こったのかさっぱり理解していないようだった。私を含めて誰も真友ちゃんのしたことを話さなかったので、知己は結局どうして自分が倒れていたのかを知ることはなく、「まあ、いいか」との知己の一言でこの話は終わった。それと時を同じくするように、尾田先生が私たちのもとにやって来て体育館の時計を指差した。5時45分。とっくの前に下校時間が過ぎていた。私は尾田先生に怒られるのを覚悟して頭を下げたけど、尾田先生は怒る代わりに私の頭に優しく手を乗せた。驚いて尾田先生を見ると、ニコニコしながら瞬や知己や真友ちゃんにも同じ事をした。

「新しい友だちと仲良くなるのはいいが、今度から下校時間は守るように。返事は?」

「はい!」

 私たちは声をそろえて返事した。尾田先生は満足そうな顔をすると、朝来君のほうへ向き直って言った。

「朝来さん。この四人は先生の誇りだ。きっと、君もこの子たちに出会えたことを感謝するよ」

 尾田先生の言葉に私の胸の鼓動は早く、激しくなった。

(嬉しい!)

 本当は声に出して叫びたいような気分だった。私はそれをぐっと我慢した。尾田先生に話しかけられた当の朝来君は少し驚いたような表情をしたあと、口元にうっすらと笑みを浮かべて静かにうなずいた。尾田先生は、それを見届けるとにこっ、と笑みを浮かべて職員室へ帰っていった。

「じゃあ、そろそろ帰るか」

 知己が言うと、私たちはいつものように横に並んで校門へと向かった。

「ところで、朝来。お前、どこに住んでんだ?」

「ああ、それなら問題ない」

「いや、別に心配してるわけじゃねえけど。形からとはいえ、お前とは友だちになったからな。方向が同じだったら一緒に帰ってやってもいいぜ」

「ああ、そういうことか。なら、ご一緒願おう。僕の住んでいる場所は君の家の近くのはずだ」

「え、まじ?」

「ああ。君の家は高山家のすぐそばなのだろ」

「高山家?ああ、希望の家か」

「へえ、朝来君ってのぞちゃん家のそばに住んでるんだ」

 真友ちゃんの質問に朝来君は軽く首を振った。

「え?だって、今言ったじゃない。知己の家の近くだって」

「ああ、そうだ」

「じゃあ、のぞちゃん家のそばってことじゃない」

「“そば”ではない」

(???)

 正直、朝来君が何を言っているのか私には分からなかった。瞬も、知己も、真友ちゃんも首をかしげている。

(朝来君は何が言いたいんだろう?)

 そう思って朝来君をちらりと見てみると、あの時に見たいたずらっ子のような表情を浮かべていた。そして、唐突にこう言った。

「高山家の“そば”ではなく、高山家が私の住居だ」

(!!!)

「えー!」

今日一番の驚きの声が校舎にこだました。


今日、初めて予約掲載と言うものをやっていみました。時間のある時に更新準備をしておくのは確かにいいかもしれないです。

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