「放課後 リーダー打ち合わせ」
今日も何とか更新完了です。今日の暑さは堪えましたが、仕事が上手くいったので、すがすがしい気持ちです。
「歓迎会の内容は決まったか?」
終わりの会の尾田先生の一言で、私たちは放課後の教室に残ることになった。打ち合わせの中心者はもちろん瞬。
「さて、歓迎会の内容ですが。何かアイデアはありますか?」
「ドッヂボールでいいじゃねえか。一緒に遊ぶのが仲間作りには一番だぜ」
知己の言葉に、真友ちゃんが反論する。
「それは、前もやったでしょ。それより、班毎にアトラクションをするってのはどう?たとえば、お芝居とか、コントとか。うちのクラスらしさが出ていいと思うよ」
「なるほど。高山さんは、なにかアイデアはありますか?」
私は、少し考えた後、口を開いた。
「うん。あのね。これはアイデアでもなんでもないんだけどね。歓迎会の目的は、朝来君と私たちが仲良くなることと、朝来君に楽しんでもらうことだと思うんだ。だからね、朝来君が喜んで参加できることを考えたらいいんじゃないかな。それでね、そのためには、私たちがもっと朝来君のことを知らないといけないと思うんだけど。どうかな?」
私の言葉にみんなは口を閉ざした。私はあわてて謝った。
「ごめんね。変なこと言ったね」
「あ、いや、違うんです。高山さんが言ったことは正しいです。ただ・・・」
「ただ?」
「彼を理解することができるでしょうか?」
私は答えに詰まった。
(理解する・・・朝来君を・・・)
昼休みの出来事が頭の中をめぐった。朝来君の声は思い出せる。眼差しも、口元も。けれど、彼が誰で、何を考え、何を思っているのか。彼の好みや、ちょっとした個性でさえ、思い浮かばない。そう、まるで
(からっぽの箱みたい。)
私は、朝来君の内側を何一つ見つけていない。
「ちょっと、私の可愛いのぞちゃんを困らせないでよね」
真友ちゃんはいつの間にかうつむいてしまっていた私の肩を抱き寄せながらそう言った。
「別に、僕は困らせるつもりで言ったわけではないですが・・・もし、高山さんを傷つけてしまったのなら謝ります」
瞬は、深々と頭を下げた。
「え、べ、別に私困ってなんかいないよ。ただ、私、朝来君のこと何一つ分からなかったんだなあって思って」
「そんなのあたりまえじゃねえか。今日、転校してきたばっかりのやつだぜ。それに、男か女かも分からねえしよ」
「あ、うん。それはそうなんだけど。えーとね、そうじゃなくて。たとえばね、姿は眼で見て、声は耳で聞くでしょ。だけど、心は目で見れないし、耳で聞こえない。けれど、心は誰にでもあって、その心は一人じゃさびしいから、誰かに見つけてほしがっていて、それが振る舞いになって。だからね、私は、たとえその人がどんなに隠そうとしても知らず知らずのうちに心が外にこぼれ出てくると思うの」
「OK。もういい。了解だ、希望」
「分かってくれた?」
「いや、全然。お前の話は、訳が分からん。つまり、何か、お前はこぼれた心が見えるっていうのか」
「うん。あ、でも、見えるっていうほど、はっきりしたものじゃないけど」
「じゃあ、今、俺からはどんな心がこぼれてる?」
「えーとね。きっと知己は私をからかって困らせてやろうって思ってるんじゃないかな」
知己は、楽しそうにしていた顔をさっと曇らせると、席を立って瞬にしがみつくようにして後ろに隠れた。そんな知己に対して瞬は、容赦なく次の言葉を述べた。
「うっとうしい、くっつくな、気色悪い、離れろバカ」
「なんだよ、冷たくするなよ。それより、お前大丈夫なのか?」
「何がだ?」
瞬は、怒気を抑えながら答えた。
「お前の心、希望に見られていいのかよ。あいつ、心が本当に見えてやがるぜ。だって、俺の考えてることズバリあてやがったんだから」
「ほう。それで?」
瞬の声が一段と低くなった。
「だから、お前の気持ちをだな・・・あれ、怒ってる?」
瞬は、右手で知己の胸ぐらを掴むと、知己をにらみつけたまま、
「すみません。高山さん、後藤さん。少し、外します」
そう告げると、知己を引きずるようにして廊下へと消えていった。その後姿を見送りながら真友ちゃんは、手をひらひらと振りながら、
「ごゆっくりー」
なんて、声をかけていた。
「ねえ、真友ちゃん?」
「何?」
「突然、瞬、どうしたのかな?」
そう言うと、真友ちゃんは私の顔を覗き込んできてクスリと笑った。
「のぞちゃんて、鋭いんだけど、鈍いよね」
「???」
「でも、そんなのぞちゃんが私は好きなんだけどね」
真友ちゃんは、私の肩に自分の頭を乗せてもたれかかってきた。真友ちゃんの髪から甘くて優しいにおいがした。
「ねえ、のぞちゃん」
「何?」
「瞬たちが帰ってくるまで、こうしててもいい?」
甘えるようにそう言う真友ちゃんは、いつもの大人びた綺麗な真友ちゃんとは違って、まるで小さな子どものように可愛かった。私は、自分がお母さんになったような気がして、静かにうなずいた。
「ありがと。」
肩から伝わる真友ちゃんの重みと温もりは、なぜだかとても心地よく、自分の心の中が次第に優しい気持ちになっていくのを感じた。
(もしかしたら、朝来君とも、こうやって触れ合えば少しは分かり合えるのかもしれないな)
ふとそんなことを考えた。
それから5分ほどしてから、二人は帰ってきた。
「じゃあ、続きを始めましょう」
瞬は何事もなかったかのようにそう言った。
「さっきのことはもういいの?」
私が訪ねると、瞬は顔をこわばらせた。そんな瞬に代わって知己が返事をした。
「あー、希望。さっきのことだけどよ、忘れてくれ。あれは、ノーカウント。なしって事で」
「うん。私はべつにいいけど・・・瞬や知己がそれでいいんだったら」
「OK!じゃあ、なしってことで。よし、じゃあさっさと歓迎会の打ち合わせを終わらせて、先生のところに報告に行こうぜ!な、瞬」
瞬は一瞬、眼鏡の置くの瞳をギラリと光らせて知己をにらみつけた後、平静を取り戻して話を続けた。
「今のところ、歓迎会の内容として、ゲームとアトラクションが出ましたが、他にはありませんか」
それから私たちは、15分ほど話し合った。結果、多数決で知己の発案のドッヂボールが採用された。理由は簡単で「みんなが参加できて楽しめるから」というものだった。それに、準備も簡単だしね。けれど、真友ちゃんだけは、最後まで劇をやりたいとねばった。あまりにねばるので、話し合いが終わってから更に真友ちゃんの説得活動が始まった。そして、5時前にようやく真友ちゃんを説得することができた。説得の決め手は知己の、
「あー、もう、じゃあ、今度お前の好きな劇をやってやるよ」
との言葉だった。その言葉を聞いた真友ちゃんは、何度も何度も何度も知己と約束をして、満面の笑顔で知己の案に賛成した。
それから、大急ぎで職員室に行き、尾田先生に歓迎会の内容と準備物を伝えると下駄箱に向かった。
「ねえ、知己。いつ、劇をしようか?」
「・・・」
「ねえ、聞いてるの?」
「・・・」
「ねえってば!」
そっぽを向いて知らんぶりをする知己に向かって真友ちゃんは、ランドセルを振り上げた。
「ちょっと、待った!お前、それはさすがにしゃれにならねえぞ」
「あんたが、無視するからでしょ!」
「ごめん、ごめん。それで、何だって?」
「だから、いつ劇をするのかって聞いてるの!」
「瞬、いつだ?」
知己の言葉に、瞬は
「今度だろ」
「だ、そうだ」
「だから、今度っていつなの?」
真友ちゃんの、いらいらが次第にエスカレートしてきた。そんなことに気づきもしない知己は、間の抜けた声で、
「瞬、いつだ?」
知己の言葉に、瞬は
「知らん。約束したのはお前だから、お前が決めろ」
「じゃあ・・・」
下駄箱に着き、靴を履きかえると、知己は校舎の外に駆け出してから、くるりと私たちの方へと向き直った。
「今からやろうぜ!」
「へ?」
(知己、何言ってんの?)
私だけじゃなく、瞬も、真友ちゃんも知己が何を行っているのか分からないようだった。
「だからさ。劇をやろうぜっていってんだよ」
大真面目にそう言う知己に、
「あんた、バカじゃないの」
久しぶりに、本当に冷たい真友ちゃんの言葉のナイフが放たれた。
「バカにバカあつかいされたくねえな。だいたい、劇をしたいって言ったのはお前じゃねえか」
「ええ、確かに言ったわよ。けどね、台本も、役者も、舞台もなしで、どうやって劇をするっていうのよ」
真友ちゃんの言葉を聞いて、知己は不敵な笑みを浮かべると、校庭を指差した。
「役者は、俺たち四人。舞台は、夕陽の校庭。どうだ、十分ドラマチックじゃねえか」
自分の言葉に酔いしれている知己に、
「台本は?」
あきれ返った顔つきで問い詰める真友ちゃん。
「台本はだな・・・台本は・・・」
知己は、眉間にしわを寄せて考え始めた。そんな知己の横を私たちはさっさとすり抜けて校門へと向かった。
「おい、ちょっと待てよ!もうちょっとで、いい台本が浮かびそうなんだ」
後ろから呼びかける知己に、振り向きもせず真友ちゃんが答える。
「そんな突然、台本なんて考えられるわけないでしょ。大体、私がやりたい劇は、あんたが思いつくようなものじゃないの」
「じゃあ、君はどんな劇がしたい」
不意に聞き覚えのある透き通った声が後ろから聞こえた。驚いて後ろを振り向くと、知己の後ろに朝来君がいた。下校前のこの時間に、どうして朝来君がこんなところにいるんだろう。それも、たった一人で。それに、昼休みのこともある。朝来君は、分からないことだらけだ。尾田先生なら、「だからこそよく知るために一歩踏み出せ」と言うに違いない。けれど、まだ私は朝来君にどう接すればいいのか分からなかった。瞬や、真友ちゃん、それに知己も一緒で、誰もが朝来君から眼を離せずにいるけれど、誰も話しかけることができないでいた。そんな私たちの心を見透かしたように静かに言葉を続けた。
「驚かしたようだな。まあ、それはいい。元来、驚きというものは予期せぬことが起こった時に湧き上がる感情的なもので、持続性はないものだ。それを証拠に、もう君たちは驚いてはいないはずだ。いや、驚きというよりは戸惑いと言ったほうが正しいだろう。いずれにせよ、僕がこうして言葉を続けているうちに、次第に心は落ち着きを取り戻し目の前の現実にどう対処すればよいのかを考え始めるはずだ。特に、川崎君と言ったかな。君は他の三人の何倍もの速さでこれから何をすべきなのかを考えている。だが、考えているだけでは君の目の前にあるこの現実を解決できはしないだろう。なぜなら、私がここにいること自体が君たちの考えや、常識の枠を超えたものだからだ。しかし、現実に君たちの前に非現実が実在している。人はこういう時、どうするだろう」
朝来君はほんの少しだけいたずらっぽい眼差しで瞬を見つめた。その表情を見た瞬間、
(空っぽじゃない)
私の心に一条の光が射した。そうだ。初めて会ったときも、そして今も朝来君はかすかだけれど心をこぼして見せてくれた。まるで、いたずらっ子のようなあの表情を私たちに見せてくれていた。
(だったら)
私は眉間にしわを寄せ、するどい目つきで朝来君をにらみつけたまま口を閉ざしていた瞬の肩をポンと軽く叩いた。
「え?」
瞬は突然のことで驚いたようだったけど、私はかまわず笑顔を返した。
「ごめんね。ちょっと、朝来君と話をさせて」
私は朝来君の前に立つと右手を差し出した。
「友だちになろう、朝来君。まずはそれからでどうかな?」
(え!)
私は軽い驚きを隠せなかった。それくらい、朝来君が返してくれた笑顔は綺麗でまるで春風のようにさわやかだった。朝来君は、笑顔のまま私の右手を握り返した。
「喜んで」
握った私の右手を自分の手のひらの上に乗せると、朝来君は片ひざをついた。そして、
「姫の仰せのままに」
との言葉でうやうやしく頭を下げた朝来君は、私の手の甲に優しく唇を触れさせた。
「あー!」
絶叫のような声が三つ茜色に染まる校庭に響き渡った。真っ先に動いたのは真友ちゃんだった。真友ちゃんは私の左腕を思い切り引っ張ると私を抱え込むように抱きしめた。そして、朝来君をにらみつけた。
「瞬、知己!」
真友ちゃんの呼びかけに瞬と知己は弾かれるように、私たちと朝来君との間に立ちはだかった。
「ちょっと、あんた!突然、何してくれてんのよ!顔はいいかもしれないけれど、突然、キスするなんて最低よ!第一、あたしたちの許可もなくのぞちゃんをお姫様呼ばわりしないでくれる。のぞちゃんはね、あたしたちのお姫様なんだから」
(え?え?お姫様って?私のこと?)
朝来君のキスよりも、真友ちゃんの言葉のほうに頭の中がこんがらがった。だって、私がお姫様なんて、想像もつかない。それを言うのだったら、真友ちゃんのほうがお姫様にふさわしい。綺麗だし、スタイルもいいし、優しいし、それに何よりも強い。
「誤解があるようだな」
先に口を開いたのは朝来君だった。少し間をおいて、
「君たちの大切なものを奪うつもりはない。遠い昔のことを思い出して、あのような行為におよんだ。すまない」
朝来君は私たちに向かって深々と頭を下げた。そして、顔を上げると真剣な眼差しを私に向けた。
「希望。君を混乱させたことを深く謝罪する。その上でもう一度、尋ねたい」
「うん」
私は反射的に返事をしていた。
「君には僕が必要か」
その眼差しがあまりにも一生懸命だったから、私は真友ちゃんの手を振りほどいて朝来君の正面に立った。そして、自分の気持ちを正直に返事した。
「はい」
精一杯の気持ちを込めて言葉を続けた。
「私には朝来君が必要です。この気持ちに嘘はありません」
私の言葉に朝来君は優しい笑みを浮かべた。そして、「ありがとう。」と静かに言った。その瞬間、世界が一変した。優しく暖かな風。西の空から伸びる夕陽の光とそれに照らされ茜色に染まる校庭。いつもの当たり前の光景が、今、この瞬間にこの上なく美しいものへと変わっていった。まるで朝来君の笑みを世界が寿いでいるかのようだった。そして、その世界の変化を私だけでなく、みんなも感じているようだった。朝来君は、私の目の前まで歩いてくると、右手を差し出した。私は、その右手をゆっくりと、けれど力強く握り締めた。
「ちょっと、待った!」
慌てて私たちの間に割って入ってきたのは知己だった。そして、不躾に朝来君に右手を差し出した。
「しょうがねえから、俺も友だちになってやる」
(友だちってしょうがなくなるものなのかな?)
知己の行動は、なんだか訳が分からなかった。けれど、朝来君に友だちが一人でも増えることはいいことだと思った。
「ほら、早く握手しろよ」
つっけんどんに握手を迫る知己に朝来君は優しく微笑んだ。
「今度は、胸を触らなくていいのかな」
(え!)
私は目を疑った。私がほんの一瞬まばたきした間に昼休みの時と同じことが起こった。そう、朝来君は女の子に変わっていた。
「うわ!」
知己は驚いて、後ろに後ずさった。
「てめえ、何しやがるんだ!」
「この姿のほうが、喜ぶかと思ったので。昼間も言ったが、君のような男には好感が持てるのでな」
「ふざけんな。お前みたいな男女はこっちが願い下げだ」
「そうか。それは残念だ。だが、君は私を美しいと感じているはずだ」
「・・・たしかに、綺麗だとは思うけどよ・・・」
「思うけど、何かな?」
「お前、男なんだろ?」
いたずらっぽい笑みが、朝来君の顔に浮かんだ。
「別に男である必要はない。君たちが望むなら明日から女の姿で登校してもかまわない」
「げ、お前、そんなことできるのかよ」
「どうする?前川君」
朝来君は、天使の微笑をたたえたまま知己へとにじり寄った。その途端、矢が放たれるようなスピードで二人の間に割って入った人がいた。
「ちょっと、何変な気起こしてんのよ!この最低変態男!」
「ちょっと待て。俺は別に何もしてねえだろ。文句があるんならそいつに言えよ。」
「なによ!」
「なんだよ!」
知己と真友ちゃんのいつもの掛け合いが始まった。朝来君は、目の前で繰り広げられる二人の言葉の応酬を何だか嬉しそうに眺めていた。ふと、気になり瞬を見た。一見いつもと変わらないように見えた。けれど、きつく握り締められた拳と、軽く下唇を噛み締めた口元、そして、何よりも眼鏡の奥に見え隠れする鋭い目つきが瞬の心の焦りを表していた。
(大丈夫かな)
声をかけようとも思ったけど、言葉が出なかった。それくらい、今の瞬からは近寄りがたい何かを感じさせた。
(どうしよう・・・)
声をかけようか、どうしようか悩んでいると尾田先生の言葉が思い出された。
『どうしようか迷った時には、答えはほとんど出ている。あと必要なのは前に踏み出す勇気だけだ』
心の中で、尾田先生の言葉をもう一度繰り返すとだんだん勇気が沸いてきた。
(そうだよね。声をかけずに後悔するよりも、どうせなら声をかけて後悔したほうがいいよね)
私は思い切って瞬に声をかけた。
「瞬」
返事がない。瞬の視線は朝来君から微動だにしていなかった。もう一度、声をかけてみるけど結果は同じだった。
(よーし、それなら!)
瞬のすぐそばにさっと歩み寄り、大きな声で呼びかけた。
「瞬!」
「わっ!」
あまりの驚きに、瞬は顔をこわばらせて後ろに三歩後ずさった。そのせいで、校舎にしこたま頭をぶつけてしまった。
「っつ・・・」
瞬は頭をかかえてうずくまった。
「大丈夫?瞬。ごめんね。そんなにびっくりするなんて思わなかったから。本当に、ごめんね」
「いえ、気にしないでください・・・僕が勝手に驚いただけですから。こちらこそ、すみません。心配かけてしまって」
言い終わると、瞬は校舎にもたれかかって地面に座り込んだ。
「本当にすみません。なんだか考え事がまとまらなくて・・・」
眼を細めて知己と真友ちゃん、そして朝来君をぼんやり眺める瞬の眼差しは、いつのまにかいつもの優しいものに変わっていた。
「隣に座ってもいい?」
そう言うと私は返事も聞かずに瞬の隣に座った。瞬は少し驚いたような顔をしたが、すぐに三人の方へと視線を戻した。
「ねえ、瞬。聞いてもいい?」
「ええ、いいですよ」
「瞬は今、迷ってるの?」
「はい」
「それは、朝来君のこと?」
「彼のことだけではないですが、そう言っても過言ではないと思います」
「私で力になれる?」
「高山さんは、いつも僕に前へ進む力をくれていますよ。今までも、これからも」
瞬の言葉が私には照れくさかった。
「そんなことないよ。私のほうが瞬には助けられてばっかりだよ」
だって、それは本当の話だから。クラスのリーダーとして私たちを引っ張ってくれて、宝探しでも、何でもみんなのために人一倍考えて行動してくれる。
「ねえ、瞬」
「なんですか?」
「私の中には瞬へのありがとうがいっぱいだよ」
瞬への感謝の思いを込めて、精一杯の笑顔でそう言った。瞬は、少し驚いたような顔をした後、私のほうを向いた。その時の瞬は、夕陽に照らされてなんだかキラキラして見えた。
「どうしてですかね。高山さんの言葉が嬉しくて嬉しくてたまらないのに・・・」
瞬は、何か言おうとしたけれど、すぐに口を閉じくちびるをきつく噛み締めてしまった。そして、また三人のほうへと目を向けるとおもむろに言葉を発した。
「迷った時は、どうするんでしたっけ?」
私は、即座に言った。
「“進め”だよ」
「・・・でしたよね」
瞬はうっすら笑みを浮かべると、大きく息を吸って
「よしっ!行ってきます!」
勢いよく立ち上がると朝来君のもとへと向かった。私はあわてて瞬のもとへと駆け寄った。
明日もやることが多いので、時間を無駄にしないように頑張ります。




