5月13日(日) 「宝の在り処」(3)
話の展開が遅くてすみませんが、お付き合い頂ければ幸いです。
「さあて、宝探し再開だ!」
知己の元気いっぱいの号令にみんなの心もきりっと引き締まったようだった。
(あと、もう少し)
そうなんだ。あの時見つけた不思議な言葉も残りわずか。
『おおすぎみぎてにさんびゃくあゆめコの下にたからあり』
大杉は見つけた。あとは、大杉を右手に三百歩歩けばいいわけだ。
(あれ?)
「ねえ、瞬?」
「なんですか?」
「あのね。大杉の場所は分かったけど、切り倒された大杉を右手に見ながら三百歩歩くなんてできるの?」
私の言葉に知己が衝撃を受けた。
「あー!希望の言う通りじゃねえか!やべえ、どうすんだよ!」
にわかにあわてだした知己を小ばかにしたように真友ちゃんが鼻で笑った。
「これだから、お子様は困るのよね」
「なんだよ、やけに自信がありそうじゃねえか」
「この場所に目印を立てればいいのよ。たとえば、さっき登った木の上に赤い布か何かをまいておくのよ。そうすれば、遠くからでも見えるわ」
「それだ!やるな真友。ほんのちょっと見直したぜ」
得意満面な真友ちゃんをよそに瞬は地図とあたりを何度も見直してつぶやいた。
「その案は却下です」
「キャッカ?キャッカってなんだ?」
却下の意味が分からず戸惑っている知己を押しのけて真友ちゃんが瞬ににじり寄った。
「えー、なんでだめなのよ。瞬、ちゃんと説明しなさいよ」
瞬は地図を真友ちゃんに見せると、説明し始めた。
「つまり。僕たちが先日見つけた橋から四百歩移動した場所がここです。見ての通り、この場所は、このスタート地点より少し高い場所にあります。そして、こことここの間には何件もの家が立っている。しかも、昔ながらの高い塀で囲まれている。つまり、常にこの木につけた目印を確認しようと思ったら、僕たちが空でも飛ばない限り無理だということです」
「そんなのやってみないと分からないじゃない」
「やってみなくても、分かります」
「じゃあさ。風船はどう?風船だったらぷかぷか浮くから、高い場所に浮かしておけば目印になるんじゃない?」
「それだ!真友、それなら文句なしだ!」
「だったら、その風船はどこにあります?」
「・・・」
「じゃあ、どうしたらいいのよ!他に、いい方法があるならいってみなさいよ!」
せっかくのアイデアを却下された真友ちゃんは、瞬に当り散らした。
「後藤さん、落ち着いてください。後藤さんのアイデアはすばらしかったですよ。ただ、今の時点では実行不可能なだけです。」
瞬の言葉を聞いて真友ちゃんの怒りはさらにエスカレートした。
(そんなことないよ真友ちゃん。真友ちゃんはすごいよ)
「真友ちゃんて、すごいね。」
私の言葉に真友ちゃんは即座に「すごくなんかないよ!」と答えた。私は、真友ちゃんの眼を見ながら、心の中で思ったことを素直に話した。
「そんなことないよ。真友ちゃんはすごいよ。私なんか、真友ちゃんみたいなアイデアを一つも思いつかなかったもの。だから、真友ちゃんはすごい」
「本当にそう思ってる?」
真友ちゃんは、少し涙ぐんだ目を私にじっと向けて聞いてきた。私は、その目をまっすぐに見つめ返して「うん。」と答えた。
「本当に、本当?」
「本当ったら本当だよ。私、真友ちゃんに嘘なんかつかないよ」
真友ちゃんは、ぱっと笑みを浮かべて私に抱きついてきた。
「だから、のぞちゃん。大好き!私が男の子だったら、ぜったいのぞちゃんを彼女にしてるよ」
「もう、真友ちゃんたら」
その様子を見ていた知己が
「そうだぜ、真友。お前はすごいよ」
「えへへ、何よ知己。あんたまで、私のすごさに気づいたの」
「さっきまで、怒りまくってたと思ったら、もう笑って。お前って、ほんとすごい性格してるよな」
真友ちゃんの目がするどく光った。と思った瞬間、抱きついていた腕をすばやくほどいて、わずか二歩の体捌きで知己の鼻先数センチの場所に上段突きを放っていた。知己は本能的に両手を挙げて降参のポーズをしていた。鼻先に正拳を残したまま、真友ちゃんは知己へ鋭い目を向けながら低い声を発した。
「何か、言うことは」
両手を挙げたままの知己は額に冷や汗をかきながら
「すみません。もうしません。許してください、真友さん」
を繰り返した。真友ちゃんはゆっくりと正拳を下ろし、腕組みをしてそっぽを向いた。
「まったく・・・。ちょっとは、見直したのに・・・」
「だから、あやまっただろ。あやまったというか、謝らせられた」
知己は、一呼吸置いて言った。
「やっぱ、お前、前世はヤクザか悪徳代官だったんじゃねえか?」
知己の言葉にその場の空気が凍りついた。私と瞬は、その場から三歩後ずさった。真友ちゃんの目が光り、綺麗な漆黒の髪が弧を描いた。次の瞬間、知己の体は地面にたたきつけられていた。私に確認できたのは、真友ちゃんの体が知己の体と交差したところまでだった。
「真友さん、さらに腕を上げましたね。今のは、空手というよりは合気道に近い技だったように思います。」
瞬の言葉に、私は感心した。
「すごいね。今の真友ちゃんの動きが見えたんだ」
「といっても、知己の左手を軸に体を入れながら回転したところまでです。おそらく、その後間接を決めて地面に引き落としたと思いますけど。そこからは、早くて見えませんでした」
「それだけ、見えるなら十分だよ」
私たちが他人事のように話をしていると、
「ちょっと待て!少しは俺の体のことを心配しろ!」
知己が腰をさすりながらのろのろと立ち上がった。
「おー、いて。真友!もうちょっと手加減しろよ!」
「手加減って言うのはね、本気じゃない時にするものなの」
「思ったことを正直に言っただけで、何で本気で地面にたたきつけられにゃあならんのだ!」
「ふーん、あんた、あたしのことを本気でそう言う風に見てたんだ・・・」
真友ちゃんの目がまたキラリと光った。その一瞬の光が知己に冷静さを取り戻させたみたいで、さっきまでのケンカ腰から打って変わった低姿勢で話し始めた。
「ちょっと、待て。もう少し話を聞いてくれ、いや、聞いてください。さっきの発言は、ちょっとしたジョークで、決して本心からの言葉ではなかったのです」
「嘘!」
「嘘じゃありませんよ」
「嘘よ。だって、あんたの言葉遣いがていねいになってる」
「そんなことないでございますよ」
「ほら、やっぱり。あんた、一体あたしをどこまで馬鹿にしたら気が済むの」
「だから、バカになんてしてねえっての」
「じゃあ、どういうつもりよ」
「それはだな」
「それは?」
二人の間に緊張感が走った。そして、知己は真友ちゃんのほうをじっと見ると、つぶやくように言った。
「お前のことが好きだからだよ」
「!!!」
真友ちゃんは驚きのあまり、絶句してその場に立ち尽くした。顔を見ると耳まで真っ赤になっていた。
「ていうのは、冗談としてだな。まあ、それくらいの軽い気持ちで言ったことだから、気にすんなよな」
私は知己の言葉に唖然とした。ていうか
(バカ!)
このときばかりは、私も知己のことを本当にバカだと思った。知己とは小さいころからの幼馴染だったけど、こんなにバカだと思ったのは久しぶりのことだった。
「まあ、とりあえず。この話はこれで終わり。さあ、宝探しの続きをしようぜ。おい、真友、いつまでそこで突っ立ってん・・・」
知己は言葉を最後まで話すことなく、真友ちゃんのフルスイングのビンタを左頬に受けて、宙を舞った後、地面に転げ落ちた。知己は意識をなくしたのか、しばらくピクリとも動かなかった。
「この!大馬鹿野郎!」
真友ちゃんは、地面の知己に向かって大声で叫んだ後、私に抱きついてきた。
「よし、よし。真友ちゃんは悪くないよ。悪いのはそこに転がっているバカ知己だから」
私が真友ちゃんを慰めている間、瞬は知己に近寄り何か話しかけていたけれど、知己からは一向に返事はなかった。
「・・・返事がない。ただの屍のようだ・・・」
そうつぶやいた瞬の横顔はなぜか嬉しそうだった。
「じゃあ、宝探しを再開しましょう。」
瞬の涼やかな声がそう宣言した。私と真友ちゃんは、引き締まった表情で「うん。」とうなずいた。知己はうつぶせに倒れたまま、右手を高く掲げて親指を突き出した。
「今、問題になっているのは、大杉が切り倒されてスタート地点からこの場所を確認できないことです。先ほど後藤さんから提案していただいた方法は、確かに実現可能な方法ではありましたが、今ここに必要な道具がない以上却下せざるを得ませんでした。そこで、僕が考えた方法を提案させていただきます」
そう言って、瞬はさっき見せてくれた地図を地面に広げた。
「今、僕たちがいる大杉のある地点はここです。そして、スタート地点はここ。このスタート地点から『大杉を右手に三百歩め』とあるとおり三百歩歩いたとします。そこで、問題です。このスタート地点から大杉を右手に見ながら歩いたとしたら、どんな軌跡を描くと思いますか?」
すかさず真友ちゃんが手をあげた。
「はい!質問です」
「なんでしょう、後藤さん」
「『軌跡』って何?」
「すみません。もう少し簡単な言葉で言いなおします。つまり、このスタート地点から大杉を右手に見ながら歩いて、しかも歩いた後に線を引いていったとしたらどんな線が引かれると思いますか?」
私と真友ちゃんはちょっと考えてみた。
「えーと、ここからスタートして大杉を右手で指差しながら歩いたとしたら・・・えーと」
頭でいくら考えても全然イメージがわかないので私は地図の上に小石を置いてみた。
「これが私で、こっちが右手だから前に進むとこんな感じになるのかな?」
私はスタート地点に置いた小石をゆっくりと動かしてみた。少し前へ進んでは、右手を大杉のほうへ向けて、また少し前へ進ませた。しばらく続けていると、真友ちゃんがパンと手を打った。
「分かった!丸ができる!丸になるんだ!のぞちゃん、ちょっとその石を貸してみて」
私から受け取った小石をスタート地点に置くと真友ちゃんは大杉を中心にぐるっと大きな丸の形に小石を動かした。
「瞬、どう?正解でしょ?」
瞬はにこっと笑うと、こくんとうなずいた。
「いえーい!のぞちゃん、やったね!」
真友ちゃんは右手を高く掲げた。私はすかさずハイタッチをした。
「そうです。大杉を右手に見ながら歩き続けるということは、大杉を中心に円を描きながら歩くということです。ということは、大杉からこのスタート地点までの距離を半径とした大きな円の線上に宝の在り処があるはずです」
そう言うと瞬は、ポケットから一本の紐で結ばれた二本の鉛筆を取り出した。
「高山さん、この鉛筆を大杉の上でしっかりと押さえていてくださいね」
私は言われたとおり、地図上の大杉の上にしっかりと鉛筆を固定した。瞬は、もう一本の鉛筆に巻かれていた紐をするすると伸ばして、スタート地点までの長さに合わせると、紐をピンと引っ張ったまま鉛筆を動かし地図の上に大きな円を書きあげた。
「つまり、宝はこの線で引かれた場所のどこかにあるということになります。」
「でかした、瞬!」
いつの間にか復活した知己が瞬の首元に背中から抱きついた。
「さすが、俺の親友だぜ」
「暑い、むさ苦しい、離れろ」
瞬の顔は不快そのものだった。
「おい、おい、冷たいこと言うなよ。二人で枕を並べて寝た仲だろ」
「野球の合宿でな。ちなみに、しかたなくだ」
「まあ、とにかくだ。宝の場所も分かったし、早速探しにいこうぜ!」
真友ちゃんはすかさず知己に問いかけた。
「ちょっと、待ってよ。いつ、宝の場所が分かったの?」
「???」
「???じゃないわよ。まだ、宝の場所は分かってないでしょ!」
「何言ってんだよ、真友。地図に描いてあるじゃねえか。」
「どこによ」
「ほら、ここに。」
そう言って、知己は地図の上に描かれた大きな円を指でなぞって見せた。
「瞬が言ってたろ。この線のどこかにあるって。だったら話は簡単じゃねえか」
「まさか、片っ端から探そうって言うんじゃないでしょうね」
「ビンゴ!その通りだぜ。じゃあ、早速行こうぜ!」
私と真友ちゃんと瞬は知己を無視して地図を覗き込んだ。
「おい、なんだよ。早く行こうぜ!」
真友ちゃんは、右手をひらひらと振ると冷たい口調で言い放った。
「一人で行けば」
「なんだよ、バカにしてんのか!」
「バカにしてるんじゃなくて、バカを相手にしている暇はないの」
「俺がバカだっていうのか?」
私たち三人は一斉に答えた。
「そう!」
私たち全員の肯定にさすがの知己も弱気になった。
「なんだよ、みんなして・・・俺のどこがバカだっていうんだよ。理由くらい教えてくれよ」
すかさず真友ちゃんが言った。
「あんたね、この地図見なさいよ。ここに描かれた円の端から端まで何メートルあると思ってんのよ。それに、最後の言葉を思い出してみなさいよ」
「最後の言葉って、あれだろ。えーと、『この下に宝あり』ってやつだろ」
「そうよ。あんた、探した場所全部モグラみたいに掘り返すつもり?」
「なるほど、それで俺のことをバカだった思ったのか」
瞬が間髪いれずに言った。
「思ったんじゃなくて、確信したんだ」
知己はうん、うん、とうなずいた。
「なるほど。よーく、分かった。じゃあさ、その線の上で三百歩歩いた場所を見つければいいんだろ」
「知己、見つけられるのか?」
瞬が驚いた様子で知己に問いかけた。知己は自信ありげな笑みを浮かべて地図を指差した。
「俺たちが最初に歩き出したのが、橋があった場所だからここだろ。ここから、四百歩歩いたのがここだから。橋のあった場所からここまでの長さが四百歩になるわけだ。ということは、ここから線をなぞって、四百歩の長さより少し長めの場所がだいたい七百歩歩いた場所になるというわけだ。」
「おー!知己、すごいじゃない!」
私と真友ちゃんはそろって拍手し、賞賛の声をあげた。
「まあ、まあ、あんまりほめるなよ」
頭をかきながら照れる知己はちょっと可愛かった。瞬は、そんな知己の肩をポンとたたいた。
「あんまり謙遜するな知己。こんなことめったにないことなんだから、しっかり褒めてもらえ」
「なんか、そんな風に言われると、あんまり褒めてられたように聞こえないんだが」
「そんなことないぞ知己。少なくとも俺はお前のことを見直した。やり方はずさんだが、答えへのアプローチの仕方はかなり的を得たものだったからな」
「おい、希望。瞬が今言ったことを分かりやすく言ってくれ」
「えーと、あのね。瞬は、知己のやり方じゃ宝の在り処は分からないけれど、考え方は結構よかったよ。って言ってくれたんだと思うけど。瞬、どうかな?」
「さすが、高山さん。お見事です」
「へへへ。瞬に、そう言う風に言ってもらうと照れるな」
私の説明を聞いてしばらく考えた後、知己はぽんと手を打った。
「なるほど。つまり、結構いい線いったけど、俺のやり方じゃ宝の在り処は分からないってことだ。って、なんでだよ!俺のやり方で完璧じゃねえか!」
ようやく自分のやり方ではダメだと言われたことに気がついた知己は瞬に詰め寄った。
「じゃあ、実際にやってみればいい。この地図を使って宝の在り処をお前の言った方法で探してみてくれ」
「まかせとけ!」
そう言って、知己は『橋』があった場所から四百歩歩いた場所までまっすぐな線を引いた。
「これが四百歩だ。これの2倍が八百だから、2倍よりも少し短くした長さが七百歩になるはずだ。おい、瞬。定規持ってるか?」
「どうぞ」
瞬はかばんの中から30cm定規を取り出した。由愛美小学校使用の竹定規だ。
「サンキュー。えーと。四百歩で、大体11cmか。その倍だから22cmが八百歩。それより少なめだから、大体20cmくらいだろ。それでだな、この定規で20cmを測ってだな・・・あれ?」
「気づいたか?」
瞬の言葉に返事をせず、知己は地図に描かれた円の曲線の上をまっすぐな定規をいろいろな方向からあてて測ろうとしていた。
「いいか、知己。お前のやり方だと、だいたいの長さで、しかも直線しか測れないだろ」
「ちょっと待て、いいことを思いついた」
そう言うと、知己は両手でものさしを強引に曲げ始めた。思ったより竹の定規は頑丈だったらしく、知己の力ではびくともしなかった。
「おい、真友。お前のバカ力でこの定規曲げてくれ」
「なに言ってんのよ!あんたの力で曲げられないものが女のあたしに曲げられるわけがないでしょ」
「なんでだよ。お前いつも俺をたたきのめしてるじゃねえか」
「技と力は違うの。単純な力だったら、間違いなくあんたの方が上」
「じゃあ、どうすんだよこの定規」
「知るわけないでしょ!大体、定規を無理やり曲げて長さを測ろうって考え方自体がおかしいのよ」
知己と真友ちゃんの口論が始まる寸前に瞬が口を挟んだ。
「というわけで、定規では円が描く曲線の長さを測ることはできないことが分かっただろ」
その時、私はピンと閃いた。
(じゃあ、定規以外のものだったら測れるかも)
私は、瞬が円を描く時に使った紐のことを思い出した。
「ねえ、瞬。その紐を貸してくれない?」
「いいですよ。何に使うんです?」
「あのね、知己の考え方をヒントにして思いついたんだけど。まず、四百歩の長さをこの紐で測るでしょ」
私は紐の端を『橋』のところへ合わせてからスタート地点までピンと引っ張った。そして、そこに結び目を作った。
「紐の端からこの結び目までが四百歩分の長さになるから、この倍が八百歩分の長さになるよね」
私の言葉に知己と真友ちゃんは「うん、うん」とうなずいた。私は、紐を結び目で二つ折りにして八百歩分の長さを作ると、今度はそこに新しい結び目を作った。
「今度は、この八百歩分の長さの紐を半分にたたむでしょ。すると四百歩分の長さに戻ります。その四百歩分の長さをさらに半分にたたむと、二百歩分になります。」
私が紐をたたんでいくと、知己と真友ちゃんは「おー!」と歓声を上げた。
「最後にもう一回たたむと百歩分の長さができるから。この長さを八百歩分の長さから引けば七百歩分の長さができます」
私は、最後にたたんだ百歩分の長さのところで結び目を作って紐を伸ばした。
「これで七百歩分の紐の長さの完成。これを瞬が描いた円の上に綺麗に載せていけば、スタート地点から七百歩歩いた場所が分かると思うんだけど。瞬、どうかな?」
恐る恐る瞬の顔を見てみると、満面の笑顔を浮かべていた。
「さすが、高山さんです!みんな拍手!」
知己と真友ちゃんはすかさず大きな拍手をしてくれた。
「すげー!希望、やるじゃねえか!」
「のぞちゃん、かしこすぎる!」
あんまりにもみんなが褒めてくれるんで、私はなんだか恥ずかしくなった。
(そんなことない。私だけじゃないよ・・・)
私は、心に浮かんできたことをそのまま口に出した。
「でもね、私一人で考えたんじゃないよ。知己や真友ちゃん、瞬の話を聞いたから思いついたんだし。だからね、私が偉いんじゃなくて、みんなが偉いんだよ」
私の言葉を聞いて知己と真友ちゃんは嬉しそうな顔をして笑顔を返してくれた。ただ、瞬だけが嬉しそうなのになんだか泣きそうな眼をしていた。
「瞬。どうかしたの?」
私は気になって瞬の顔を覗き込んだ。すると、瞬は顔をさっと背けてしまった。
(どうしたんだろう?)
私がさらに瞬の顔を覗き込もうとすると、瞬は左手で私を制止した。
「・・・なんでもありません。ただ・・あんま嬉しすぎて、つい・・・」
瞬の声がなんだか泣き出しそうな声だった。
(私、何か悪いことしたかな?)
私が不安そうにしていると、知己が突然横からわって入った。
「なんだよ、瞬。宝の在り処が見つかったのがそんなに嬉しかったのかよ」
そう言って知己は瞬の頭を右腕で抱え込んだ。
「おい、やめろよ知己」
「宝探しに涙は似合わねえから、涙がひいたらやめてやる」
「・・・じゃあ、しばらく頼む・・・」
「おう!」
(二人とも何をしてるんだろ?)
私は、二人のやりとりの意味が分からなくてきょとんとしていた。すると、真友ちゃんが耳元で「男の友情ってやつね」とつぶやいた。
(何が男の友情なんだろう?)
私の疑問はさらに深まったけど、それからしばらくして、また、もとの通りの四人に戻った。
明日も頑張って更新します。




