騎士団長戦
迫ってくる2人をまずは分断しないといけない。そう考えると「炎壁」を2人の間に打ち込み、シークに耳打ちをする。だが、流石は騎士団長、火の壁が自身の方向に地面を張っていくのを2人同時に同じ方向に避ける。
当然そうすると思っていたので、それはブラフで本命はこっちである。
騎士団長2人は横から来た火の壁と私達の事に丁度意識が集中しているので、このタイミングでの死角からの攻撃、真後ろに回った火の壁から炎の腕が伸びて掴まれてもすぐに対処出来ない。
ユミルの襟首を掴み後ろに引き込む。すぐにトネードも気付いて剣で腕を斬ろうとするが、魔法を発動した後一気に接近していた私が剣で攻撃をして邪魔をする。
「させないよ、シーク!そっち頼む」
ユミルはそのまま火の壁から反対側に引きずり出され、その場にはシークが回り込んでいる。
「ぬっ!壁関係は防御力を上げるために設置場所を固定する筈なのだが………まさか読んでおったか?」
「まぁね、軍隊方式なら、分けるよりコンビネーション技でやるだろうと思ってたよ」
「かぁー、やっぱりお嬢ちゃんは本気でかからんとなぁ!」
「そう来なくちゃ」
またも激しい剣戟が始まる。
だが今回は私が魔法を使える事が分かっているので、トネードは少し周りを警戒しないといけないのでこちらに集中し切れていない、剣の振りがさっきより遅いのがその証拠だ。当然私はこの好機を逃さない。
トネードの剣を弾いたと同時に左足を一歩下げ、右上にあげた大太刀春光を流れるように右下に下げ。
「大太刀ニノ型「峻」」
右下からの袈裟斬り、トネードを斬ったが浅い。一瞬後ろに下がりダメージを少なくした。
トネードは倒れるがすぐに地面から飛び上がり立ち上がる。
「ふぅ、間一髪だったぞ」
「流石は元騎士団長か。ちゃんと入ればステージ外に行けたのに」
「ほほ、それはお嬢ちゃんがするべきだぞ!」
トネードは剣を構えながら走って来るが、私は自殺行為だが大太刀を背中の鞘に戻し目を閉じる。その行動に理解出来ないトネードは足を止める。
「お嬢ちゃん、負けを認めるのかい?」
「………………」
「居合か………こちらも最速で応対しよう」
トネードも両手で剣を持ち横に構え、一瞬で距離を詰め斬りかかる。
トネードが剣を振る瞬間、私はゆっくりと目を開け、右手で大太刀の柄を持つ。
(身体強化、豪腕、神速、気配遮断、予知、縮地、アンナ流居合型ニノ型「迅」)
武技を発動した瞬間、私はトネードの背後に居て納めた剣を鞘から抜き、そのままトネードの方には見向きもしないで歩いて行く。
「私の方が速かったね」
「ほほ、儂もまだまだ未熟者か……」
そう言い残しトネードは消え去った。
シークの事が心配なのですぐに反対側に回るが、その場の光景を見て私は足を止めてしまう。
両手を短剣で地面に突き刺ささられたユミル、それをシークがユミルの顔を右足で踏み付けて、左足で横腹を蹴りつけていた。
私は一瞬で近づき蹴ろうとしている左足とユミルの体の間に足を入れて止める。
「シーク、やり過ぎだ」
「………ダメージは入らないんだからこれぐらいやっても構わないよ」
こちらを向いたシークの顔が目が鋭く冷徹な眼差しをしている。私を少し見て、すぐにユミルを見るその目は、ユミルの事をただのゴミかのような目である。
私が萎縮しては止めれない。そう思い肩を掴む。
「それでもだ、辞めろシーク」
「………もうトネードはやったの?」
「まぁ……」
「じゃあ私達はもう同盟相手じゃないんだ………逃げた方がいいと思うよ?」
こちらを睨み殺気を向けて来る。さっきまでのシークとはまるで別人、殺気の圧が全く違う。何か私の中で疼くものがあるが、そんな事よりまずはシークを止める。
「逃げない。シーク、貴女をまずは退場させる」
「ふふ、それは出来ないよ。これで終わりだから」
シークは右手に持っていた剣をユミルの体に突き刺し、ユミルは消えてしまった。それと同時にゴングの音が鳴り響く。試合終了の知らせだ。
「いい気味ね、舐めてかかってきたのが運の尽きよ………アンナもお疲れ様、次はトーナメントで会いましょ」
そう言いシークは私から離れて行く。追おうと思ったが、何故か気が引けシークに近づけなかった。
1人ステージ上に立って観客から煩い歓声を受けていたが何も感じなかった。私は青が澄み渡る空を見上げたのだった。
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「………流石はアンナ、強いなぁ………今の私とどこまでやり合えるかな…………それより先にまた会おうかな………」
雲が少なく日光が照り暑い中、片手にジュースを持ちストローで飲んでいる茶髪の女性は1人で陽気に鉄格子に腕を乗せステージを見ていた。そんな暑い中、甲冑を付けた2人の兵士がやって来る
「すまない、ここらで黒髪の女性を見なかったか?こんな顔をしている」
1人の兵士が人の顔が描いた絵を見せる。誰が見ても美人の絵である。
それを横目で見て女性は首を傾げる。
「さぁ?」
「そうか、ご協力感謝する。この顔を見かけたら受付所、または署に連絡してくれ」
2人の兵士が女性から離れていき、また別の観客に話を聞いているのを、女性はジュースを飲みながら見て少し微笑み、またステージ上を見るのだった。
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