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第2のASOプレイヤー



アリアさんは驚いて後ろによろめくのを私が手を取ってあげて止める。


「驚き過ぎだよ」


「驚くわよ!」


「まぁ後ろから声をかけたのはごめんね。あ、お話中だった?」


アリアさんの前には銀髪の男性と、黒髪ロングのエルフ女性がいた。

あれ?どっかで見たことあるようなぁ………。

そう思っていると2人は慌て始めて頭を下げて手を出してくる。


「アンナさん!お、お久し振りです!お、俺はAランク冒険者「レッドブルズ」のリーダーのアーギットっていいます。ASOではカイチって名乗ってました」

「アンナさん!私も同じく「レッドブルズ」の副リーダーのフミヨと申します。ASOではリーチって名乗ってました」

「「よ、よろしくお願いします!」」


「ああ、カイリチーか!見覚えあると思ったよ」


カイチ・リーチの2人組、略してカイリチーと呼ばれ、ランキングで1000位に入る猛者である。大会でも何回か戦ったことがあり、なかなか強かったのを覚えている。

ランキングは1000位だが、ランキングは私みたいな例外以外、殆どが全てのイベントの成績を元にしているので、この2人は対人戦闘においては私は100位に入ると思っている。

そんなことを私は思い出し、2人の出された手に握り返す。


「よろしくね。いきなりだけど、2人は何でこっちの世界に?」


「俺もフミヨも覚えてません。気付いたらこの世界に居たとしか。アンナさんは覚えているんですか?」


「私は死んじゃったんだ」


「そうなんですか………アンナさんは元の世界に戻れると思いますか?」


その言葉に少し胸が痛くなる。


「今は分からないけど、帰る方法は見つけるつもりだよ」


「そうですね。俺達も探してるんですよ。まぁ成果は無いんですが………」


「そうかぁ……そうだ、私も大会出るけど、みんなは何で大会に出てるの?」


私にはきつい話なので、無理矢理だが話を変える。


「私は入賞してお金稼ぎね」


「俺達も金稼ぎ目的です。アンナさんは出るからには優勝ですか?」


「まぁ、今回私は絶対に優勝しないといけないからね………」


あのカストリア王をぶっ倒してシルヴィア達を必ず助け出す。

そう思っているとみんなが震えているのが分かった。


「どうしたの?」


「………いえ、何でも無いわ。アンナは何グループ?私は第8グループでカイリチーは第2グループよ」


「私は第4グループだよ。みんなとは違うグループだから、入賞は出来るかもね」


「8位までに入らないといけないから、次でアンナと当たったら終わりだけどね」


「その時は全力で相手してあげるよ」


『只今より第2グループの招集を開始いたしますので、選手の方々はお集まりください』


「あ、もう時間か。私は席に戻っとくよ。試合楽しみで待っとくね。また会おう、じゃあね」


招集のアナウンスが流れる。

私はどこかに行きたい気持ちだったので、これを利用して3人から離れて行く。

胸が締め付けられる、家族のことを思う程締め付けられる。こんな想いは今したくない。落ち着ける人が居ない静かな所を探しに行く。

少し歩くとトイレがあるのに気付き、そこに駆け込んで洗面器に手をつき、深呼吸を落ち着かせる。少し落ち着きだし顔を上げると前に鏡があるのに気付き、私がどんな酷い顔なのか確かめるが、違うことに気付く。


「え、なにこの左目……」


左目が赤い眼でなく金色の眼で、瞳が奥に広がっていって不思議な眼になっていた。

何がどうなって眼がこうなったのか分からないが、不思議と悪い物ではない気がする。


ステータスを確認するが表示されていない。試しにアイテムボックスから「賢者のモノクル」を取り出し見てみるが、表示されるのだが全て黒く塗りつぶされている。


はぁ、分からない眼になってるけど見えるからいいかなぁ………いや、今後支障を来すかもしれないしなぁ………はぁ、セッカとかに聞いてみようかな。


がっくりとうなだれて目を閉じ少し考え、溜息をしながら眼を開け、鏡を見て背後に黒髪の美しい女性が立っていることに驚く。

ここはトイレなので人が居るのはおかしくはないが、こちらを艶を感じる微笑みで見ているからだ。


寒気がし、すぐに振り返るが女性に両腕を抑えられ壁に押し付けられる。

この女性の意図が分からないが、まずは女性が片手で抑えてきてるので腕に力を入れ抜けようとするが抜けない。即ち私より力が圧倒的に上とだという事だ。

少し私が暴れたからか空いた片手で口を押さえつけられ、艶な美しさがある顔を近づけて来る。


「ごめんね、アンナ。少しの間だけ眠ってて」


女性が目を見つめて来て、ふわりと宙を浮く感覚になり、一気に睡魔が襲い瞼が閉じてしまったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〜アリア視点〜


アンナが私達から急いで離れていく。まるで何かから逃げるように走って行った。

私が少し心配している中、2人は先程のアンナについて話していた。


「さっきのアンナさん。優勝発言の時、周りに向けた殺気がマジで死ぬかと思った。まだ軽く心臓バクバクしてる」


「私も。アンナさんは本気で優勝を取りに行く気だね。まぁ、私達とはグループ違うし、トーナメントで1回戦以外で当たったら、棄権するか」


「ほんと逃げるが勝ちだな」


アンナは無意識だったようだが、周りの人が全員固まる程の殺気を向けていたのは確かだ。

それにアンナの左目が赤ではなく金色の綺麗な目に変わっていたのも驚いた。聞こうと思ったが、イメチェンもしたのだろうと納得していたが実際どうなのだろうか。今更だがあれはコンタクトでは表現出来ない目のはずだが。


次第にアンナの事の心配が膨れて来る。

ああ、もう一度アンナに会おう。


「ごめん、ちょっと行ってくる。また試合後に会いましょ」


「おう、先に上がってる」


「お先にね」


手を振り、2人から離れてアンナの事を追い掛ける。アンナがどっちに進んだか考えながら進むと、進行方向にトイレがあるのが見え、女の勘的にそっちだと思い歩いて行く。


曲がり角を曲がってトイレの看板が見え、そこまで歩いて行くと丁度中から人が出てくる。

トイレから人が出てくるのは普通になので別にいい。だが、眠っているアンナをお姫様抱っこして出て来る奴は別だ。

悪い人ではなくただ単にアンナが気絶したのを助けた人かも知れない。


「ど、どうしたのアンナ!あ、すみません。私その子の保護者なんです、預かりますね」


私は精一杯の演技をしながら女性に近づく。

だが、女性は私の方に見向きもしないでアンナをの顔をずっと見ている。

この女、何かおかしい。


私はそう思い強引にでもアンナを回収しようと一気に迫り掴む。だが、掴んだ手は空を掴み、女が背後に移動したのが分かる。

すぐさま振り返り肩を掴もうとすると、アンナが少し浮いたと同時に拳が飛んで来る。

とっさに両腕を重ねて防ぐが、かなりの威力で後ろの壁まで吹き飛ぶ。


「ぐはぁ!」


軽く吐くがすぐに立ち上がり、アンナを抱いたまま歩いて行く女に腰の剣を抜き構える。


「待ちなさい!アンナを下ろしなさい。さもないと斬るわよ」


脅しは効くのか分からなかったが、女はその場で止まり、顔をこちらに向け冷ややかな目でこちらを見てくる。


「はぁ、さっきので力の差が分からない馬鹿なの?それともドMだからもっとされたいの?」


「私は馬鹿でもないしMでもないわ!アンナを下ろしなさいって言ってるのよ!」


「何で貴女に従わなくちゃいけないのよ。アンナは私の愛する人、命のある限り愛し続ける。それを邪魔するなら殺す」


女から殺気が出て周りの温度が変わる。

そして私はその場で立ち竦んでいた。いや、前進しようとしても体が震えて拒否反応が出て動けないのだ。

だが、目の前でアンナが連れ去られるのを黙って見ているのなんて嫌だ。

私は手で震える足を動かし前進する。


「ほぅ、こちらに来るのか。その場で居た方が寿命は長いと思うよ」


「はぁ、はぁ、アンナを捨てて、この後の人生生きたら絶対後悔するわ。だから、絶対にアンナを………」


ブスリ、と肉がナイフで刺したような音がして聞こえる。私の口から何か垂れるのが分かる。手で拭き取ると赤い液体、血であるのが分かる。もう分かっているが下を見て確認すると土手っ腹に剣が貫通していた。

私は膝から崩れ落ち横倒れになる。


「言う割に呆気ない。もっと出来る人かと思ってた」


コツコツと女が近づいて来るのが分かる。

これでも私は死ぬがトドメでも刺しに来たのだろう。

目が掠れてくる。靴が近づいてくるのが見えてそのまま私は目を閉じてしまった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



この女を喰らえば更に強くなれる。

そう本能的に考え女の元に辿り着くが、横から剣が現れ遮られる。

横を見ると金色の髪の獣王、カストリアが剣で遮っていた。


「邪魔……」


睨み殺気を当てる。しかし、獣王は少しも感じていないようだ。


「ふふ、なかなかいい殺気をするじゃないか。お主が大会に出て居れば、何かと面白くなっただろうにな。それとも今から出るか?」


「……後のブロックで出るわ。それより邪魔なんだけど」


「なんだ出てるのか。我は倒れている人を助けるのなら手を退けても良いが、お主は違うだろう?お主の目は獲物を捕らえる目だ。それにその子、アンナも置いて行ってもらわないとな」


「………断る」


剣を掴み力尽くで退けようとするが、キィーン金属音が鳴るだけで動かない。


「おいおい、お主の手はどんな硬さだ。アスカロンが悲鳴をあげてるぞ」


「ちっ、鬱陶しい!」


アンナを少し浮かせ、その瞬間に回し蹴りを獣王の顔に当てる。確実に踵が当たったかのように思われたが、当たった感触が無かった。


「おお、怖い怖い。当たったら顔が粉砕するかもな」


後ろから声がし振り向くと、獣王が倒れていた筈の女を背負い、アンナをお姫様抱っこしていた。私は一瞬で頭に血が上る。


「アンナを返せ!」


瞬時に手から剣を取り出し一瞬で近づいて斬りかかるが、横からの剣で防がれる。


「お主、すまんがやってくれ。我はアンナを運ぶ」


「貴方に言われるのは癪ですが、了解致しました」


獣王が後ろに下がり、その前に白銀の騎士が現れる。


「お前は……」


「さぁ、やりあいましょうか」


剣を向けられ一気に迫られ、私も剣で受けてその男との戦闘が始まったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「何これ………」


たまたまそのトイレに向かった観客はその光景に驚く。

闘技場の壁が黒く焼き焦げ、反対側はすっぱり壁が綺麗にくり抜かれて、綺麗な青空が見える。トイレも水が溢れて床に広がっていた。

誰かが乱闘した跡にしては酷過ぎる現場に驚きのあまり、ただ呆然とするしかなかったのだった。




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