王城に呼ばれた理由
私は今日王都の冒険者ギルドに行き、シルヴィア達への連絡をして観光をする予定だったのに、今は馬車の中でしかも窓を閉められ周りの景色も見れない。
それに目の前には2人の獣人の男性が座っている。
1人はずっと目を閉じていて腰に刀を差した黒髪の人、もう1人は眼鏡をかけてずっと資料に目を通している大臣みたいな人が居るのだが、この馬車に乗ってから今までずっと黙っていて私1人のため、凄く変な空気なのだ。
マーニさん達を巻き込みたくなかったので、夜に冒険者ギルドで集合となっている。
流石にずっと黙っておくのは気が引けたので、資料を読んでいる人の邪魔はしたくないので目を閉じている人に話しかける。
「あのーすみません。私って何で王城に向かわされているのですか?」
「む?いや、吾は知らんぞ」
「え?」
「貴女が呼ばれたのは郊外してはならない事になっていますので私達は喋れません。
あとで聞かれると思いますが私が説明をせず黙っていたのは話せないからです。そしてその事を話さなかったのは効率が悪いからです。話す事は以上です」
目を閉じたままの人には知らんと言われ、隣の人に質問しようとすると手元の資料を読みながら一気に説明された。
コイツ面倒くさい奴だ。
そして私は気になる事に突っ込む。
「理由は分かったんですけど、初めに説明した方が効率良かったんじゃ?」
私が言うと資料を読んでいた目が一点で止まる。少しするとかけていた眼鏡を少し上げこちらを向く。
「ご忠告ありがとうございます。以後気を付けます」
そう言い頭を下げてまた資料を読み始めた。
このタイプはお礼などは言わないと思っていたが言ったので少し驚いている。
少し感じていると馬車の揺れが止まり、ドアが開いた。前の2人が降り、私も降りると目の前には屋根が青く円型で壁が白で際立っていて綺麗な巨大な城があった。
感動していると目の前の執事服のお爺さんが綺麗なお辞儀をする。
「アンナ様、失礼ですが私めの後ろを付いて来て頂きます」
「はい、分かりました」
お爺さん執事の後ろを付いて行く。後ろにはさっきの2人が歩いて来ている。
どうやら馬車が止まったのは中庭だったらしい。王城なのでかなり広く、観賞用の草木も綺麗に整えられている。
歩いて行き目の前の王城の巨大な門が少しずつ開いて行くのは圧巻だ。
通路は天井が高く、床は綺麗な大理石で整えてあり、側面の窓からの日光が綺麗に反射していた。
この景色を見ていると、ASOでガウェインと出会ったブリテン城を思い出す。
確かこんな通路でガウェインと戦ったなぁ。大量の兵士をなぎ倒して行くのはなかなか楽しかった。
思い出を振り返っているうちに、目的の場所に着いたようで、お爺さん執事が少し大きな扉の部屋の前で止まり、手で先に行くよう促される。
ここで止まっても仕方ないので行こうとすると自動で扉が開いて行く。
鮮やかなステンドガラスの光彩が眼に映る。壁は白、天井は高く、天井には豪華なシャンデリアがあり、床は深紅の絨毯が敷いている。
そして部屋の奥には純白に宝石が施された王座があり、ここが玉座の間だと分からされる。
その玉座には獣人の男性が座っている。服は白に赤の装飾が綺麗で、頭には宝石の埋まった黄金の王冠を被っている。
それらも凄いがこの人自身がガタイが大きく、顔の金色のたてがみはライオンのようでまさに百獣の王だと感じる。
ここで気後れしてしまってはいけない。
そう思い顔を振ってから歩いて行き、玉座から10m程の距離で止まる。
「カストリア王。「長靴を履いた猫」リーダー、アンナ様をお連れしました」
後ろに居たお爺さん執事が跪いている。
そして王は鋭い目をしてこちらを見る。
その瞬間ゾワリと毛が立ち、反射的に背中の剣に伸ばし掛けたが腕が上がる前に腕に力を込め止める。
王の周りの側近もこちらを見定めるようにこちらを見てくる。
そしてカストリア王の口が開く。
「よく来た、アンナよ。我がガリア王国が王、ラーム・カストリアだ」
軽く威圧されているのが分かるが、意識しないようにしてお辞儀をする。
「御歓迎ありがとうございます。ですが、ただの一般市民である私がここに呼ばれる理由とはいかようなご用件でしょうか?」
王の顔をしっかりと見ながら質問する。王の目がさらに鋭くなり、圧が高くなった気がする。
そして王は玉座に掛けていた手を挙げ、兵士を呼ぶ。
「例のものを」
「はぁ!」
すぐに兵士は近くにあった黒い布で覆われた人より大きい謎の立方体の所に行き、布を払いのける。
私は払い除けた立方体の中身を見て、目を見開く。
それは鉄格子の牢屋であり、牢屋の中には手錠と猿轡が付けられた、シルヴィアとガウェインが閉じ込められていた。
「シルヴィア!ガウェイン!」
私が近づこうとすると牢屋の周りを兵士が囲む。私はカストリア王を睨む。
「どう言うことですか?説明してください!」
「其奴らが罪を犯した。ただそれだけの事だ」
カストリア王は低い声で答えたが、私はそんな事を信じられない。
「シルヴィア達が罪を犯した?どんな罪をですか?詳しく教えて貰わないとこちらは納得がいきませんが?」
「罪を犯した。それ以上言う必要があるのか?この国ではどの罪でも平等な罰を与えるのだ。罪の内容の説明など不要だ」
「はぁ?まずシルヴィア達が罪を犯した所からおかしいと私は思っているのに、説明は不要だと?巫山戯るな!」
私は怒声をあげ、私ははっきりとした怒気をカストリア王に向け、必死にシルヴィア達を助け出す方法を考える。
どうすれば良い、どうすれば安全にここから脱出出来る?………………そうだ、あれがあった!
それを思いついたと同時にカストリア王が口を開く。先に変な事を言われる前に先に言う。
「ほう、それならお主に条件を出そうか。条件は「私が闘技大会で優勝してやるよ」………え?」
カストリア王の先程の鋭い目がなくなり少し驚いているのが分かる。
そのまま私は追撃をかける。
「私が闘技大会で優勝して、1位の国王が王権を使って出来る事を1つ叶えるって賞品を使ってシルヴィアとガウェインを解放する!」
カストリア王が驚いて固まっていたが、また鋭い目になり口を開く。
「いいだろう。ただし、お主が優勝以外、途中で負ければ我の言う事を聞いてもらうぞ。それに我が出るのだから優勝はないのだ。諦めるなら今だぞ?」
「はぁ?当然、優勝するのみ。途中であんたと当たったら、ぶっ倒してやるから楽しみに待っとけ」
私は言い終わると、後ろに振り返り扉に近づいて行く。それを止めようと兵士達が来るが、殺気を浴びせ動けなくさせ扉に近づき、背中の剣に手をかける。
「アンナ流居合三ノ型、乱角線」
扉の一部を細切れにして通り、通路に出てさっき通った道を歩いて行く。
追ってくると思ったが、誰も来なかったのでさっさと歩いて行き、王城の外壁の兵士に「これ扉の修理代」と言い1億メルを袋に詰めて渡し、颯爽と王都ガダリーマーの人混みの中に入っていった。
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