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それぞれの動向



レベラルから王都ソリヤテルに向かう道中には山道があり、その1つに山賊道がある。

名前の通り魔物の代わりに山賊が住み着いていて、何度山賊狩りをしてもまた新しい山賊が棲み着く事で有名である。


そして現在、その場を治めていた「スピリッツハング」のボス、ナーギは目の前の状況、部下が無残に殺されていく状況を飲み込めずにいた。


理由はある女が1人でこのアジトに乗り込んできた事から始まった。

普通一人で山賊のアジトに乗り込むのはヤバい奴しかいないが、部下は女だと舐めて扉を開いたのがいけなかった。

そこからは地獄だ、両手に剣を持った女に向かって行った奴は一撃で地面に倒れる。逃げようとしても入り口は女の方にあり、逃げようすれば一瞬で背後から突き刺される。10人で周りから一斉に襲っても全て返され、地面に倒れる。


奴には勝てる筈がない。だが、これでも「スピリッツハング」の長、部下に見せる顔がないと思い、ナーギは大剣を担いで突っ込む。


「テメェら!俺が抑えてる間に逃げやがれ!」


ナーギは大剣を振り上げて女に迫り思いっきり振り下ろす。女に地面に亀裂がはいる程の威力の攻撃が当たる。

しかし、この感触は違和感があった、何か硬いものを切っている感覚だ、例えば硬い岩を切れないナイフで当てるみたいに。

それを見たくはなかったが、女は剣を右に退かして無傷な姿を見せる。


「リーダーみたいなかっこいい台詞だったけど、ごめんね、私には効かないから」


女の笑顔と共にナーギの見ている光景が一瞬でひっくり返り、天井が見えて全てが赤く染まって行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



元山賊のアジトだった洞窟はもぬけの殻となっていて、ただ1人の女性だけが料理を作って食べていた。


「今回はなかなか良い情報を得れたな。それに食べる肉は料理した方が美味しいな」


パクパクと口に運んで行き、料理を食べ終わると倉庫に行き、貴重品などを全て回収していく。

倉庫から出ると、足元に大剣が転がっているのに気付き持ち上げる。


「この剣なかなかいいな。前の剣、血を吹いてないから切れ味悪くなってたんだよね。貰おう」


剣が収まるケースを作り出し背中に背負い剣をなおす。


「ふふふ、これでマスターとお揃い。もっと細い剣でいいのがあったら今度はそれにしようかな」


女性は喜びながら洞窟を抜けて外に出る。

日が眩しいと思っていると前から10数人の人が来ているのに気付き、何もする気はないが少し待ってみる。近くに来て分かったのは彼らの服装からして冒険者であるのが分かった。


彼らも女性の存在に気付き近づいて行き、その中のリーダーらしき少し歳をとったおじさんが声をかける。


「嬢ちゃん、ここで何してるんだい?」


「私はさっきまでそこで食事をとってたんだよ」


女性は後ろの洞窟を指指す。それを聞きおじさんは頭を傾げる。


「んん?そこは確か儂らが攻める山賊のアジトだろう?」


「そうなんだ。けど、もぬけの殻だよ」


「何?」


おじさんが仲間の2人を手で呼び、その2人で洞窟に近づいて行き中を確認しに行かせる。


「それで嬢ちゃんは1人で食事してただけじゃないだろ?目的があってこの山賊道を通った筈だ、違うかい?」


「まぁね、山賊が居れば狩ろうと思ってたんだけどねぇ……」


女性は残念そうに肩を落とす。

それを聞いておじさんは目を細める。


「へぇ………じゃあ何であんたがナーギの剣を持ってるんだ?」


女性は失敗したようにため息をつきながら頭をかく。


「なーんだ、この剣知ってるだ」


「まさか嬢ちゃん1人で山賊をやっちまったのかい?」


「そのまさかならどうする?」


少し空気が変わり、おじさんの後ろに居た冒険者達は武器に手をかける。

しかし、おじさんがそれを手で制する。


「辞めろ、1人で山賊狩る嬢ちゃんに敵う筈ないだろ。お前らは少し考えてから動け」


「へぇ、鋭いね」


「何年生きていると思ってる、こんなもん場慣れすればいいだけだ。さっきの返答は何もしないだ。まぁ、ある程度説明しては欲しいものだがな」


「そうかぁ………面倒なんだね」


女性が話す直前に洞窟からさっき入って行った1人が走って戻ってくる。


「おい、マジでもぬけの殻だ。何一つ残ってねぇぞ」


それを聞きおじさんが驚く。


「嬢ちゃん、君がさっきやったんじゃあ?」


「やったなんて一言も言ってないでしょ?この剣は落ちてたから拾っただけ、洞窟内に落ちてたから山賊のだとは思ってたけどね。もう行っていい?夜になるまでに近くの町に行きたいの」


「すまない、無駄に責めてしまって」


「別にいいよ。あなた達の仕事だからね」


女性はそう言いおじさんの横を通って行き、山道を下りて行く。


「はぁ………あのおじさんとか強そうだったし、やっぱり食べればよかったかなぁ。けど、「色欲」を試せたからよかったかな。結構使えるからどんどん使おうか」


少し今後の事でワクワクしながら、木漏れ日を浴びながら山道を陽気に下りて行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私が筋トレと稽古を開始した日から1週間が経ち私は本調子に戻ってきた。

そして今日は獣王国の王都ガダリーマークに場所で私とマーニさん、サルナさんと向う事になっている。


昨日は盛大にお別れ会が行われてみんなで一緒にお酒を飲んだりしたりした。

毎日一緒に遊んでいたエイアちゃんは泣きながら抱きついてきて、マーニさんも泣き出して大変な事になった。

サルナさんも何か言おうとしていたが、顔が赤くなって倒れてしまった。何を話そうとしたのだろうか?


そして1日が経ち、今は玄関の前でまた泣き出したエイアちゃんの頭を撫でている。


「お姉ちゃん、行かないでよ」


「別れたくないのは山々なんだけど、私にも待ってる仲間が居るんだ。心配してると思うから早く会わなきゃいけないの。ごめんね」


「ぐずっ、分かった。また会える?」


「また来るよ。その時は仲間も連れて来るよ。面白いひとばっかりだから仲間の方が好きになるかも」


「そんな事ないよ!」


「あははは、ごめん、ごめん。冗談だよ」


もう一度頭を撫でてあげて立ち上がって、エミリさんとマルガさんにお辞儀をする。


「今日までお世話になりました」


「退院おめでとう。久し振りの入院患者だったよ」


「そうだな。その患者が食事の時間、とても面白くしてくれたがな」


2人が笑いながら少し涙を流す。


「とても楽しかったよ。またいつでも来な、お仲間歓迎するぞ」


「はい、仲間を連れてまた来ます」


再度お辞儀をして玄関を出る。外にはマーニさんとサルナさんが馬車の積荷の準備をし終わり待っていた。

それに乗り込み顔を外に出すと、3人共家から出てきていた。


「アンナさん、行くよ」


マーニさんに言われ急いで声を出す。


「また会いましょう。さようなら」


「また来い!」

「さようならーーー」

「次は海に落ちたらダメよ!」


3人の声と共に快晴の馬車の上で手を振り続けたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〜エミリ視点〜


アンナさんが泊まっていた部屋を片付ける。殆ど綺麗にしていてアンナさんが綺麗好きなのが分かる。


「掃除して帰ったのかな?綺麗過ぎるわ」


試しにタンスの裏など見ると埃がなく掃除して帰ったのが分かった。

そこまでしなくてもいいのに……。


次にアンナさんは衣服などをマジックバッグで持ってきてたので忘れ物がないか確かめに引き出しなどを開けて行く。

無いか確認しテーブルの1段目の引き出しを開けると中に袋があるのを見つける。

中に何が入っているのか見てみると黄金の輝き、大量の紙幣が入っている。


「あ、アンナさん、凄いもの忘れてる!?」


どうしようと思っていると袋の中に紙が入っているのに気づく。

折りたたまれた髪を開くと「治療代です。少ないですが1000万メル置いておきます。私には返さず自由に使ってください」と書いてある。


「はぁ………アンナさんは律儀過ぎだし、こんなに受け取れないわよ」


エミリさんがこの1000万メルを使い、カジノで大当たりする事はまた別のお話だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〜???〜


「あーあ、次々と仲間が消えて行くわね」


「その分追加されるだろうじゃろ。儂らは次の作戦に取り掛からなくてはな」


そう言いせかせかと何かを弄っている爺「隠者」と、顔を隠した女性「恋人」が窓の無い部屋で作業をしていると、一つしかない入り口から背の高い赤髪の男性が入ってくる。


「まだ準備中か?」


「おお、『星』か。こっちはまだ準備中じゃ」


「そうか。ならまだゆっくり出来るか」


男性はソファに座り煙草を吸い始める。


「はぁー………そうだ、『魔術師』がやらかしたって聞いたぞ。『節制』は復活したんだろう?何したんだ?」


「あら知らないの?確か殺せと言われてた奴を殺し損なったとか」


「仕方なくじゃろ。彼の方が計画を前倒しにして「器」に早くに入れたらしい。しかも2つじゃ。だからその場から強制撤退じゃ」


それを聞き他の2人が息を飲む。


「マジか。それなら仕方ないか……」


「そんな終わった事より、『星』も出来ておるんじゃろうな?」


「ああ、『塔』の封印は時期に切れるよう細工した。1ヶ月後、少し前に解ける具合だ」


「まぁそれぐらいならいいじゃろ。あとは他のメンバーを待つだけか」


「確かこのメンバーに「吊られた男」だけか。どこ行ってるんだあいつ?」


「時期に帰って来るじゃろ。次は龍王討伐じゃ、死ぬ覚悟で行かないと行けないじゃろ」


「はぁ、存在しているかも不明な世界最強の1つ、竜達の王か。お伽話に挑むのは楽しみだな」


「伝説に残るわよ。龍王殺し、キングドラゴンスレイヤーってね」


「「ぶははははは」」


『星』と『恋人』が爆笑していると、『隠者』が机を叩く。


「煩いわ!大声出すなら外です出せ!」


「すまん、すまん。あれは『恋人』が悪い」


「ごめんなさい。さてと、作業に戻りますか」


『恋人』は作業をし始め『星』は黙って本を読み始め、特殊な音だけでが響く部屋になったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私達がエミリさんの家から出てから2日が経った。

目の前には20mはある巨大な壁が聳え立っていて圧巻だ。やはり王都なので、入る人が多く並んでいる。

仕方ないので待つ事1時間、やっとの事で検問所に着き私達は1人ずつ証明書を出して見せて行く。

みんな冒険者カードを作っているようで見せて行き最後に私の番になりカードを渡すと、それを見た検問所の獣人の男性が何かのチェック欄を見て、後ろにいる人にも小声で伝えて驚いた顔をして急いで出て行った。


何事かと思っていると目の前の男性が1度咳をして言う。


「冒険者Cランク、『長靴を履いた猫』所属のアンナさんで間違い無いですよね?」


「カードに書いてあった通りだよ?何か問題があった?」


「いえ、記載通りです。記載通りなので王城までご同行お願いします」


男性の話にポカンとしていると鎧フル装備の警備兵の人達が周りを囲む。


私何かやらかしちゃいました!?




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