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静止した世界で



レベラルの壁外から5キロ離れた森にて、街を半壊させる程の魔法を打ち合っている両者は急に現れた殺気に両者共々固まってしまう。だが、考えている事は両者で異なつている。


(…誰?目の前の魔王より格上、私でも数分戦えたらいいレベル。まさか龍王?)


(どういう事!?アレに入れるのはまだの筈だけど、明らかに2つ入ってるわ…)


アリスは怯え、魔王は動揺している。どちらも動かず相手の出方を伺っていたが、魔王の方が眉をひそめ苛立ちの表示をする。


「ちっ!帰路につけって命令が来たから帰るわ。また今度やり合いましょ、じゃあね」


その瞬間、魔王の姿が一瞬で消え、転移したのだと分かった。


「はぁ、追い返せたのはいいけど、新しく出て来た問題の方が大変そうよね…仕方ない、まずは見に行きますか」


アリスは海へ歩き出そうとすると膝から崩れ落ち、手を地面につく。


「くぅ……もう、時間……切れか……せめて……街に…………」


足を上げて進もうとするが、体が少しずつ萎んでドレスが氷の様に溶けていき、元の幼い姿のアリスに戻り力尽きた様にその場で倒れこんで気を失ってしまった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



(アンナ!?どうなってるか分からないけど助け出す!)


シルヴィアは常闇の丸い球体に近づこうとするがスイゲツが声を上げて止める。


「お主馬鹿か!空間が歪んでる所に突っ込んだら、どうなるか分かるだろ!」


「けど、あそこにもしかしたらアンナが…」


ピシッ


球体から目を離した隙に卵にヒビが入る様な音がする。恐る恐る見てみると球体にヒビが入り、ヒビが広がっていき欠けた場所から手が出て一気に球体がガラスが割れる様な音と共に崩壊し、中に居た人に纏わり付いていき、浴衣の様な漆黒の服に変形する。


雪の様に純白の足元まで伸びた髪と猫耳、右目が鮮血の様な深緋色、左目が金色で瞳が複数重なって、身長も少し大人びた18歳ほどの背の高さになって、胸も出ておりアンナとは別人に思える。


「あ、アンナなのか……?」


「アンナじゃないみたいだけど、アンナよ」


スイゲツは分からないが、シルヴィアは確信できた。理由は分からないが確信があった。強いて言うならシルヴィアはこの姿のアンナでも可愛らしいと思えたのだ。自身の愛する者と同じ感情を抱いたからだ。


「アンナ、私のこと分かる?」


シルヴィアは少しづつアンナに近づいて行きながら質問する。だが、返答はなくただ虚空を見上げる。


「アンナ……?」


「まずい、シルヴィア!その場から離れろ!アンナの魔力が桁違いに高まってる!」


スイゲツの注意にすぐに体で答え、もどかしい思いをしながらその場から一気に離れる。

シルヴィアが離れ走って行く時にアンナが魔法を発動する。


「タイム トゥ ルイン」


パキィッ


アンナから距離を取ろうとして走るシルヴィア、海面の波、流れる雲、それに他の全てが彫刻の様に絵画の様に全ての動きが止まる。


その中でただ1人、アンナが何かを感じ警戒していたリヴァイアタンに向かって歩いて行く。

この魔法は時間自体は進んでいてアンナ以外が認識出来ないし動けず、その間に行われた生物に与えた攻撃の威力により、解除と同時に攻撃した場所から範囲攻撃を与える魔法だ。


そんな事はアンナは知らない。いや、知っていても滅ぼす事に変わりはないのだから躊躇なく使う。それが使命であり自身の目標でもあるからだ。

そして、歩みが止まる。リヴァイアタンを殺す為に。


アンナが右腕を上げ、体の常闇を移動させ大きなリヴァイアタンを輪切りに出来る鋭い鉤爪に変形し、怒気を込めて一気に振り下ろす。

が、リヴァイアタンには当たらず不自然に曲がって横の海を海底まで見える程引き裂く。


「ふぅ、間に合った」


その声にアンナは冷徹な眼差しで声の方に向く。そこには、黒い髪と猫耳、赤い目をした少女、アンネが大太刀を手に持ち海面に立っていた。


「アンナ、久し振りだねって言っても返事は出来ないか。まさか2つも能力を持つなんて私も思ってなかったよ」


アンナが無表情でアンネに一瞬で手を振り下ろすが、また不自然に横を通り過ぎる。


「アンナ、貴女はそんなに心が弱い子だったかなぁ………それに初めての姉弟喧嘩はもうちょっとマシなのが良かったよ。奏人とはね」


言い終わりの瞬間にまたアンナが両腕を鉤爪に変形させ振り下ろし水飛沫が舞う。


「遅い、居合「涼」」


アンネはすでに後ろに立っていてアンナは袈裟斬りされていた。


「うゔぅぅぅぁあああ!!!」


「能力は「力」と「悪魔」、ラブズとグラスのか厄介な能力だな」


アンナの姿が消えアンネの背後から手に剣を持ち斬りかかるがまたも不自然に逸れて当たらない。その隙に2度アンナの足と体を斬る。


「グヴゥゥウウア!」


「はぁ、一方的になるから嫌だったんだ。無駄だと思うけど言うね。アンナに理性があったなら勝機はあるけど、今のアンナに勝ちはないよ」


「グヴァフゥゥウ!!!」


アンナの体から闇が溢れ、先端が鋭くなり四方八方からアンネを襲う。が、アンネには全て当たらず、一瞬でアンナに近づいて体に手を触れる。


「さっさと私の大好きなアンナに戻りなさい!「天元乖離」」


体と手の接触部分から光が溢れる。アンネはアンナから能力を引き剥がそうとする。それに抵抗してアンナは手を引き剥がそうとアンネの腕を両手でへし折ろうとする。


「ぐぅぁぁぁあああ痛ぃい!やっぱり馬鹿力過ぎる!だけど、こっちの方が早い!」


光が増して行きアンナを満たして行く。が、あとひと押しの所でアンナの姿が一瞬で消える。手に力を込めていたアンネは前に倒れかかるのを耐えたが、アンネの胸から刃が突き出ていた。


「がふっ!そっだった……「悪魔」の変換能力で………私との位置を変換したのか」


アンネは片手で持っていた剣を振り返りながら斬りかかり、アンナの腕を斬りすぐにその場から離れて「再生」を使って傷を癒す。


「ふぅ、一筋縄ではいかないか…」


目の前ではアンナに付けた全ての斬り傷が再生されていって行く。


「今更だけど白髪で成長したアンナは綺麗ね。私も成長させてみよっかな」


アンネは自身の側にある髪を弄る。

それを無表情で見つめるアンナは自身の髪を持ち見る。


「へぇ、今のアンナでも意識してるんだ」


アンネが茶化すがアンナは冷徹な眼差しのまま、自身の常闇の服が両側に2つに分かれ、人の形を成して行きアンナが3人に増える。


「手数で勝負か、面倒だなぁ」


アンナが3人同時にアンネに一瞬で近づく。背後から回った1人が剣を振り下ろすが、やはり不自然に逸れる。

その隙を突こうとアンネが仕掛けるが、一瞬で光景が変わりアンナに背後から両腕を持たれて捕まえられる。そして前方から2人のアンナが剣を振り下ろす。


「それは無駄」


アンネの言った通り、またもや不自然に両側に逸れる。アンネが避けたわけではなく、アンナが当てようとして当てれていない。


アンネは外した隙に背負い投げをして背後のアンナを海面に叩きつけ、アンナから距離を取り、少し思ったこと考える。


(何で理性が戻ってきてるの?さっきまではがむしゃら感があったのに何故?あのクソ野郎、アンナに何をした?まさか、計画を前倒しにしたのか!?)


アンネは考え付いたことに頭に来る。アンナに能力を与えたクソ野朗に。


(それなら、早くしないとな。剥がすのはさっきのを警戒されてるだろうし難しいかな。仕方ないけどね封印してから剥がすか。それでも私は少なくとも1回は攻撃を受けないといけないかな…)


アンネは決断し、冷徹な眼差しでこちらを伺うアンナに突っ込む。

それをみすみす逃すこもはなく全方位から無数の鋭い闇が襲うが、全て不自然に逸れてアンネには当たらず一瞬で近づかれる。だが、この距離はアンナの剣の間合である。


両側に居るアンナ達が一気に詰め掛け、片手を闇で鋭くさせ突き刺すが、アンネは右から来たのを剣で流し反対に居るアンナに突き刺さり、突き刺した方を縦に両断すし、闇が散らばった瞬間、腕が突き刺さった方のアンナの体から剣が伸びてアンネに突き刺さり体を貫通する。

それはアンナの背後から剣を突き刺したアンナ本人であった。


「がふっ、「絶対防御」が働かない瞬間を、狙ってくるなんて………理性と言うよりかは………学習して行ってるな」


分身が全て霧散し、アンネを剣を突き刺したまま海面に突き立て、冷徹な眼差しで大の字のアンネをしゃがみ込んで見下す。


アンネは今しか無いと思い、両手でアンナを顔を掴みこちらに寄せ、唇を重ね舌を入れる。アンナは流石に考えていなかったようで、驚き少し固まったがすぐに顔を離そうと暴れるが、アンネは自身の尻尾とアンナの尻尾を絡ませ腰砕けにしアンネの方に寄せる。

そして、アンナが剣から手を離した瞬間に足を鍔に当て思いっきり引き抜きアンネの体が自由になり、まだ力が少しあるアンナを抑える為、脚を絡ませて動けなくする。

アンネはより顔を寄せ舌を絡ませて、アンナとの接続を強固にする。


(準備は出来た、「相性呪印」)


アンナの純白の髪が黒く染まり始める。

封印されているのに気付いたアンナは抵抗しようとするが服が霧散して力が入らずアンネの成すがままだ。

アンネはゆっくり愛撫して封印していき、唇を離す頃にはアンナは元の幼い姿に戻っていて気絶していた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、こんなに……長い時間するなんて………思ってなかった。けど、これで強力な封印は出来た。私も影響受けちゃったけど」


アンネはゆっくり立ち上がり伸びをすると、指先が少しずつ霧散して行ってるのに気づく。


「はぁ、時間内にやれて良かった。アンナに何かあればと付けておいたのが良かった。けど、アイツらに私の居場所がばれたな。ギル……いや、アギルバルトの部下達に世話をかけたくないし、城からは出るか……」


アンネはしゃがみ、消えていく手でアンナの頭を撫でる。


「「幻想の防殻」これで大丈夫かな…………ごめんね………私の自己願望、復讐をする為だけに貴女を使ってしまって………本当にごめんなさい………アンナ、貴女がどうなってもずっと好きよ」


アンネがアンナの顔に寄りキスをして涙と共にアンネの姿が消える。

そして時間が経ち、魔法の効力が切れ時間が再始動する。


再始動と共にアンナとアンネが戦っていた場所から衝撃波が生じ、近くにいたリヴァイアタン、距離を取っていたシルヴィア、吹き飛ばされこちらに向かっていたガウェインの近い者から順に衝撃波を受け、吹き飛ばされて行く。

それは中心にいるアンナも例外でなく、衝撃波を受けるがアンネがかけた魔法「幻想の防殻」で守られる。

しかし、アンナは気絶しているので衝撃波で生じた波に呑まれる。


衝撃波をもろにに喰らったガウェインだが、後ろに倒れそうになるのを耐え、アンナが波に呑まれるのを目撃する。


「マスター!!!」


急いで走るが直前でシルヴィアも海に沈んでいるのを見つける。ガウェインにとってアンナの方が大事だが、シルヴィアを助けず奥にいるアンナを助けるのは外道だと考える。


甲冑を脱ぎ、海に飛び込んでシルヴィアを引っ張り上げ左脇に抱え込み、アンナの元に向かう。

しかし、運が悪く倒れたリヴァイアタンが起き上がり海が荒れアンナに近づけない。


「くっ!マスター!」


あと一歩、あと一歩の所で、リヴァイアタンが海に潜り込み、波に巻き込まれて海流に3人共巻き込まれる。





その日、リヴァイアタン討伐は撃退という形で終了し、約100人あたりが行方不明になるという失態になり、捜索依頼の中にアンナ達、3人の名前が書き込まれていた。




今日は後1話更新されるかも…です。


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