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封殺するは手段③



アンナとラディウスの勝負が終わった頃、地上、海上では雲が赤く染まるほど火が燃え上がっていた。

巨大な化け物に対抗している冒険者ギルドの船は無数に出ていて、大砲の砲撃、魔法を使い化け物を海上に押し留めていた。

その中の一隻、陸に近い一隻にシルヴィア達も乗り込んでいて、サリメールさんや冒険者達のリーダーが集まり、セッカのリヴァイアタンとの戦闘情報を説明してもらっていた。


「あの化け物、名前は一応リヴァイアタンとして、リヴァイアタンの攻撃の殆どが自身の周りにある海水での攻撃よ。近づいたら自身の体を使う事もあると思うけど、鈍感かも知れないし気付かないかも」


セッカは少し冗談を言うが、皆突っ込まず真剣に聞いているのを見て真面目に話し始める。


「まぁそんな事より重要なのはリヴァイアタンにスキルまたは魔法を使うと使えなくなるわ。実際、私の弓のスキル「星の導き」も発動出来なくなってて隕石を落とせないでいるわ。魔法も同じで使ったの魔法だけ使えなくなってる」


「効かない訳じゃ無いのね?」


真横でシルヴィアが腕を組みながら聞く。


「一応効くわ。けど、使うならリヴァイアタンを倒すまで使えないと思った方がいいわ。それで重要な攻撃方法は物理、剣や弓、砲撃でもいいわ。スキルとかはパッシブスキル系なら効かないわ」


「と、言う事だ!みんなパーティー内の仲間と船上にいる奴らに伝達!急げ!」


サリメールさんの声と共に冒険者達が動き出すが、シルヴィア達とサリメール、他Bランクなどの強い冒険者達はその場に留まっていた。

サリメールさんが周りにいる全員の顔を確認する。


「よし、集まって貰った私達はこれからリヴァイアタンに直接攻撃、突貫チームとなっている。

事前にグループ分けを行ってるAチームが前方右手から、Bチームが前方左から高速艇を使って攻め、リヴァイアタンの目を街の方角から沖側にそらし、その後遅れてCチームが真後ろになったリヴァイアタンを後ろから船の砲撃との一斉攻撃だ。

分かっていると思うが、私達がやる事は重要な事だ。特にA、Bチームは重要な事だと意識してやってくれ、以上解散!」


シルヴィア達はAチーム、右手から攻めるチームでチーム内は全員アンナのパーティーである。

サリメールさんが命令してみんな移動していく中、シルヴィア達は動かずその場に留まっていた。

その中でもシルヴィアは空を見上げている。


「はぁ、アンナはどうしてるんだろ…」


「そうですね…もう戦っているかも知れませんね」


ほぼ独り言だが、真面目なガウェインはちゃんと答えるのを見て周りのみんなは少し笑顔になる。


「流石ガウェインだね。アンナのことは心配だけど、ここに帰って来たアンナが安心出来るようにここを守り切り、リヴァイアタンを叩き潰すわよ。まぁ私は戦力外なんだけどね」


「セッカは普通に弓矢で打っても強いですよ。このチームで魔物を倒すのは久し振りですね」


クズハがセッカの強さを指摘すると、昔のことを思い出す。


「ええ、「長靴を履いた猫」での戦闘ですね。こっちに来てからは別行動が多かったですし」


「そうだにゃ!みんな本気でやるやらこれを食べるにゃ!」


ガウェインが思い出していると、ショウヨウがバックから出来立てのような香ばしいいい匂いの料理を取り出す。


「にゃん特性即座に食べれる料理、「層乳牛のチーズと三季野菜のモッツァレラピッザ」にゃ!召し上がるにゃ」


みんな唾を飲み込むと同時にピザの切れ端を取って口に運ぶ。

食べればチーズのとろりとしたのと、野菜の優しい味が絶妙に交わっていてとても美味しい。

それに力も湧いてくる感じがし、シルヴィアは手を握ったりしている。


「よし、これで準備万端にゃ!」


「そうね、みんな行きましょうか」


この船の隣に並走させている高速艇に順番に乗り込む。最後はシルヴィアが乗ろうとするが、まだ船の上にいるクズハが陸の方を見ているのに気付き話しかける。


「どうしたのよ、何か気になることある?」


「いえ、アリスはどうしたものかと…」


「あぁ、あの子ね。宿屋にクロワと一緒に居るんじゃない?」


「……意外ですね、貴女は気付いてないんですね」


「ん?何の事?」


シルヴィアは頭を傾げるが、クズハは頭を横に振り「何もないですよ」と言い船に乗り込んで行き、シルヴィアは少し複雑な心持ちで船に乗り込み船を発進させる。

この高速艇は石炭と火魔法で水で水蒸気を発生させ高速で水面を走らせる船であり、常時水面を跳ねて移動する為乗り心地は最悪であるが、今回セッカが風魔法で調整してくれているので乗り心地は良くなっている。


走らせて30秒も経たずにリヴァイアタンから50m程の距離まで来て、流石に体の大きいリヴァイアタンでも小さな船を見つけた様で無数の水柱が襲ってくる。


それを見て船の脇に居るセッカ、テトラ、ヘプタが爆発する弾丸の魔銃と爆弾を付けた弓矢の弓を水柱に当てて消滅させていき、後ろで剣を抜いたガウェインとスイゲツを胸ポケットに入れたシルヴィアが水柱が無くなると同時に海上に飛び出し、ガウェインは「円卓の騎士」のスキルでシルヴィアはスイゲツの水魔法で海面を操り海面を走って行く。

リヴァイアタンも気付きシルヴィア達に攻撃して着ようとするが、反対側からも砲撃を受けて反対側を向き、その隙に沖の方に走って行き海上でガウェインが剣を構える。


「ガラティーンよ、遮断解除。そして全てを焼き尽くす業の炎を吸収せよ」


ガウェインが紅で纏い周りの温度が急上昇するが、それら全てがガラティーンの刃に吸収されていき、アカネとの戦闘時の様な剣の長さになる。

巨体だが一瞬で上昇した空気を感じとったリヴァイアタンはすぐにガウェインの方を向くがもうガウェインの準備は終わっていた。


「王秘武技 焔」


構えたガラティーンを横に一瞬で振り抜き、炎の斬撃は海面を蒸発させ、リヴァイアタンを斬りとばす勢いだ。


「さて、どうでしょう」


しかし、リヴァイアタンは当たる寸前で水の防壁を作りあげ威力を弱めたダメージを減らしたが、威力は絶大でリヴァイアタンが悲鳴をあげる程の熱量で体を焼き切る。その悲鳴に冒険者達は歓声をあげ、一斉に砲撃を始める。


しかし、リヴァイアタンもやられる一方ではなく。冒険者達が乗る船の下から海水を持ち上げる。船内は退却の声が上がり一斉に海に飛び込んで行くが、船をひっくり返し海に叩きつけて帆先から沈んで行く。しかもその船はBチームのものだった。

その異常な光景にさっきまで上がっていた歓声は静まり返り、冒険者達は現実を飲み込めず膝をつく者、小言を言い続ける者、足が震える者がいた。

マズイと思ってシルヴィアは移動しようとするが、女性の大声が響き渡る。


「撃て!撃って撃って撃ちまくれ!反撃される前に撃ち、奴に攻撃の隙を与えるな!助かりたいなら撃ちまくれ!仲間の仇を取れ!」


サリメールさんの声で冒険者達は自身が助かりたい、また仲間の仇を取る為に大砲で撃ち始める。


流石、リーダーになるだけの人物である。とシルヴィアは思い、自身もリヴァイアタンの気を引く為に光魔法「フラッシュ」を発動する。シルヴィアの右手に小さな光の玉が集まり、それをリヴァイアタンの目めがけて投げ、目の高さでタイミングよく玉から光が放出されリヴァイアタンの目を一時的に封じる事が出来た。


その隙にガウェインが「王秘武技 焔」の構えを取るが、スキルが発動しない事に気付きシルヴィアに指先に火を灯してサインを送る。


シルヴィアもサインに気付き、自身で魔法を発動しようとリヴァイアタンの方を見ると、こちらを睨んできていた。

目が慣れてシルヴィアに気付き、海上の敵の倒し方を学んだリヴァイアタンはシルヴィアの真下の海水を操り、シルヴィアを空中に撥ね飛ばす。


「ヤバイ!スイゲツどうにかして!」


「クソ!海面から届かん!」


シルヴィアが空中で手足を動かしても無駄だと知りながら動かし、スイゲツが水で引っ張ろうとするが届かないでいる間に、リヴァイアタンの大きく開いた口が迫る。


「ヤバイ!「水牢」」


「ディフェンスアップ」


シルヴィアの近くに居たガウェインも助けに向かおうとするが、リヴァイアタンが動いたせいで波が立ち前に進めない。

高速艇に乗っているクズハ達も撃ちまくるが、もうシルヴィア達の目の前まで来ていた。


シルヴィアとスイゲツはこの水牢で防ぎ、その隙に逃げる事に集中するが、予想以上に大きい口に不安を抱きながら、噛まれると思ったが何も衝撃が来なかった。それどころか下に落下している感じである。

まさか飲み込まれたと思い、水牢を少し解いて見ると上には黒い雲が広がっている空が見えて、下には海面が広がっているのが目に入る。

海面にぶつかる前に急いで水牢を解き、シルヴィアは海面を転がって衝撃を逃しながら着地する。すぐに起き上がり、リヴァイアタンからの攻撃を警戒するのにリヴァイアタンの方を見ると目を疑った。


リヴァイアタンの開いた口に弾力のある黒いゼリーのような物が挟まっていて、リヴァイアタンの鼻の先には火、水、土、木、雷の球体が浮かんでいて、その中心には雲で暗くなっていても分かる赤い目がある黒猫のアンナが立っているのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その頃、レベラルの人影が全くない街角にたどり着いたアリスは気配のする方角にゆっくりと歩いていた。

そして、目的の人物がいると思う場所に曲がり角から顔を覗き込ませるが人っ子一人いない。

少し怪しみながら近くの柱に隠れながら進むが、次の柱に移動する直前に身体に身震いが起きる。


「例の人の周りに余計な物が居ると聞いたので飛んできたら、まさかの吸血鬼とはね…」


背後からの声に驚きながらも、すぐさま振り返り周りを警戒する。


「それがどうかしたの?貴女も同族でしょ?」


アリスの質問に少しの静寂の後に笑い声が返ってくる。


「ふはははは、まさか私は血は啜りませんよ」


「え!だってこれは…」


「罠ですよ。貴女をここに誘き寄せる為のね」


その発言と共に曲がり角から出て来たのは、1人の赤の髪が綺麗な女性であるが、こめかみの部分に羊のような黒い角が生えていて、アリスにはその特徴的な角に最近読んだ本で見覚えがあった


「まさか魔族がこんな所で何してるんですかね?魔族領から遠いと思いますが」


「ふふ、結構遠かったけど命令があったから仕方なく来たのよ。それでちゃんと命令通りに復活出来たから、ついでに貴女を始末しようと思ってね」


「復活って……まさかリヴァイアタンを!」


「そうよ。「節制」のリヴァイアタン、見た能力を封じ込める事が出来る、敵に出て来たら面倒くさい奴よ」


「色々教えてくれるね。最後だからとか?」


「あら、よく分かってるじゃない。他に言いたい事は?」


魔族の女はニヤニヤとしながらアリスの事を一方的にどうやって殺すか考える。

しかし、アリスは少しのがっかり感と憤怒で攻撃体制に入っていて、アンナにずっと隠して来た右胸の魔術刻印を指で押す。

その瞬間、周りから音が一切消え、ニヤニヤと笑っていた魔族の女の顔がそのままの状態で止まり、時間が空間が凍ったように止まった。




「これは私が自由になる為の旅だ」




「これは私の家族を探す為の旅だ」




「これは私の目的を探す為の旅だ」




「それを邪魔する者は排除するのみ」




最後の言葉を言うと、固まっていた時間が動き出し、魔族の女はニヤニヤしていたが目の前に起こっている状況に驚愕の表情を浮かべる。


「………え?貴女は…」


「あら、忘れたの?さっきまで話してたでしょ?ほら構えなさい」


アリスは懐から氷の杖を持ち出す。だが、魔族の女は状況を飲み込めていなかった。


さっきまで居た10歳程度の子供が一瞬、目を瞑ったのか意識しなかった一瞬で、身長が伸び、顔も幼い顔でなく大人びた美顔で、服装も黒白のドレスではなく氷のような白銀のドレスの女性に入れ替わっていたのだ。


「嘘よ!あの子供はどこにやったの!」


「私は私よ、現実を受け入れなさい。魔王である貴女が見窄らしいわよ」


「な!なんで私のことを…」


「魔力がそこらの奴らとは桁違いだからすぐ分かるわ。これじゃあ私も魔力量では負けてるわね」


「そう………私の事を見破るのは凄いけど、だから何って話よね。前言通り殺してあげるわ」


「はぁ、面倒ね。全力で行かせてもらうわ、吸血鬼だけが持つ氷魔法でね」


アリスの体から白い空気が流れ、周りが一瞬で温度が下がっていく中、魔王は一瞬、力を込めて周りの冷気を吹き飛ばした瞬間、どちらも一斉に魔法を発動し、街の一角が吹き飛んだのだった。




誤字脱字報告有難うございます

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