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魔術学院生の付き添い③



3日目、今日は1日目と同じくレベラルのダンジョンに向かう。私達にとっては再挑戦の様な感じで、昨日の特訓の疲れはちゃんと寝て落としてきて今は絶好調である。

今日も付き添いはアンナさん達で昨日の試合のことで全生徒から注目の的になって、ダンジョンに行くだけでも私達は質問責めにあい、それを潜り抜けてダンジョンにはいった。

私達は順調に進み、前に詰まった三層目も難なくクリアして先に進もうとするが、アンナさんにかなり長時間戦っていることを指摘されて一旦休憩で昼食を取りに前に行った広い空間に向かって昼食は全員分を私達4人で作り、今はみんなで昼食を食べている。

私はアンナさんが食べている横に行き話をしていた。


「昨日の試合は元から考えていたんですか?」


「考えても無かったし、まず昨日初めて聞いたからね」


「え、じゃあマーキュリーの対策は?」


「あんなの私の力と離れてるのが分かっての力尽くだからね。あの人は普通に剣技は良かったと思うし、それにマーキュリーは前に体験したしね…」


「え?前にってアンナさんは何歳なんですか?」


「……15歳…」


「アンナは13歳よ。逆に鯖読むなんてね…」


アンナさんが少し気まずそうに言った後にシルヴィアさんが後ろから訂正してきた。

この身長でこの可愛さなら15歳より13歳の方が真実味がある。


「ちょっとシルヴィア!?」


「13歳…そっちの方が納得出来ます」


「アーチさん!?」


「ずっと隠してきたから私も最近知ったんだけどね」


「へぇー、案外私の予想通りね」


セッカさんも初耳の様でニヤニヤしながらアンナさんの頭を撫でる。


「子供扱いするなー!」


「まぁまぁ落ち着いて、アンナが可愛いんだから仕方ないよ」


「それが子供扱いなの!」


アンナさんとセッカさんが取っ組み合いをしていると、近くにいたクズハさんが立ち上がる。


「アンナ、入り口付近に誰か来ました。多分ですが冒険者かと」


「…私が行ってくるよ」


「私も一緒に行くわ」


アンナさんは先程までとは違い、真剣な顔つきになりシルヴィアさんと2人で広場の入り口にまで歩いて行った。数名の冒険者達と話をしているようで、少しすると戻ってきた。


「うーん…」


「どうかしたんですか?」


私が聞くとアンナさんは少し悩んで口を開く。


「えっと、ラディウスさん?がダンジョン内に入って行方不明になったらしくて、私達が見てないか聞いてきたの」


「え!ラディウス先生が?」


「1人でダンジョンに入って行ったらしくてね。普通は1人でなんて入らない所だし、何か起こる前に見つけようと冒険者が探してる最中らしいけど…」


「ラディウス先生なら1人でも大丈夫だと思うけどな」


ガダルはそう言うとアンナさんは首を振る。


「私でも1人は無謀だね。最深部で大怪我をした場合、連絡手段が無いからね。最低でも3人はいると思うよ」


ここはそこらの洞窟ではなくダンジョンなのだ、1人でなんて無謀だ。


「それでアンナはどうする?」


「……私達は探すのと同時にアーチさん達の付き添いを続行で、セッカは地上に戻っておいてくれない?こっちで何か起きた場合に連絡出来るし、洞窟内より地上の方がいいでしょ?」


「分かったわ。洞窟は蒸し蒸ししてる気がするから嫌たがら丁度良いしね。じゃあ、私は先に行くわ」


「出たら合流しようね」


セッカさんは後ろを向かずに手を振って出て行った。その後は何もなく準備をし終わり、広場から出て私達は四層目に向かう。


順調に因縁のホーンラビットも倒し、他の魔物も倒して少し気が緩んで進んでいると、立っていられないほど地面が大きく揺れて進行方向に上から岩が落ちて来た。

もう少し進んでいたらと思うと身震いがする。


「危険だからすぐに戻るよ!生き埋めにされたく無かったらみんな走って付いてきて!」


アンナさんに急かされ跡を急いでついて行く。急がなければという恐怖の思いの裏腹に、アンナさんが前方に出てくる魔物を全て斬り伏せているのを見ていると安心感がある。


落石を避けながら走っている中、ふと疑問が出てきた。ダンジョンは順序通りに進まないと行けない構造であり、壁や天井などはハンマーで殴ってもかけら程度しか取れない程の硬さで通り抜けなどは無理なのである。

その強度の為か昔にマカナダンジョン付近で地震があってもビクともしなかったと聞いている。

しかし、今居るレベラルのダンジョンではそこら中で落石やひび割れなどが起きている。もしかして、ここは…。

考え事をしていた瞬間、前に出した右足が宙を蹴る。その瞬間私の中に悪いイメージが浮かぶ。

そのイメージ通りに右足の出した地面が崩落していって体重が前のめりになり、暗く全く先が見えない穴の中に落ちて行く。


「きゃあぁぁぁぁぁあ!」


私は叫びながら落ちて行く。入り口の光が小さくなって行くのを見て、落ちて行くのを実感しながら私は最後のことを考えて目を瞑った。









「大丈夫?起きてる?」


顔を掌で軽く叩かれる。

目を開けるとアンナさんの顔が目の前にあった。死後の夢かと思いまた瞼を閉じる。


「いや、起きろ!」


「痛い!」


思いっきり平手打ちされる。穴の中にいい音が響いている。


「そんな事より、なんでアンナさん居るんですか!?」


「そりゃぁ、アーチさんが落ちたからね。ダッシュで壁を走って追いついたよ」


やたらとアンナさんの顔が近いと思って、少し顔を動かすと自身がお姫様抱っこされているのに気が付いた。


「アンナさん、下ろしてください!」


「こら!暴れちゃ駄目!落ちたら水の中に落ちるよ」


「え?」


恐る恐る下を向いてみると、アンナさんの足の下に波紋が見えて水面があるのが分かった。状況が理解出来て私は石の様に固まる。


「下は海水、上は岩石。生き埋め状態だね」


「なんでそんなにリラックス出来るんですか!私達はもう…」


私のせいだ。私が落ちてしまったから、アンナさんは助けに来たのだ。アンナさんは関係無いのに、私のせいで…。


「まぁ、死んで無いしどうにかなるよ。諦めて何もしないよりマシだしね。それにアーチさんは自身のせいにしない事だ。私は覚悟の上で落ちて来たから、私が死んでもアーチさんのせいじゃ無い。勝手に助けに来た私のせいだ」


「で、でも…」


「そんなに後悔するなら助かってから後で沢山するんだね。まずは脱出方法を考えないと」


その通りだ。助かったんだから、アンナさんの為にも何か考えなければ。それが恩返しになるのだから。




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