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魔術学院生の付き添い②


みんな驚きで喋れないのか、誰も喋らず1分ほど歩いて休憩する場所に着く。

休憩する場所は広い空洞となっていて、入り口が1箇所で休憩するにはピッタリな場所であった。


中に入って何も居ないのを確認出来た私は、ほっと一息する。やはり、初めてのダンジョンなので、緊張などしていたのだろう。

私は壁にもたれかかって座り込み、みんなも釣られて私の横に座り込む。


「はぁ疲れた……やっぱり実践は難しいね」


「第二層までは数も少なかったからなぁ」


「私の判断ミスよ。あの数相手に4人じゃ無理だったのなんて、勉強してた時から分かってたはずなんだけど」


「百聞は一見にしかずだね」


「けど、あの数相手に1人で全滅させたあの、えーと」


「アンナさんね」


「そうそう、アンナさんは思ってた魔法剣士と違ってCランク相応の強さだったよな」


「私は思ってた以上だったわ、この洞窟内であの長さの剣を扱うなんて普通壁とかに当たって使いづらい筈なのに、アンナさんはこの場所で使いこなしてた」


「俺も見たわ。後で教えてもらおうかな」


「タンクのガダルより俺の方が教えてほしいわ」


私達が話していると話の中心の人、アンナさんが近づいてきた。


「今更だけど怪我とか大丈夫?アーチさんとマイラさんは治したって聞いてるけど……ショルク君、足をやられてるだろ見せてみろ」


「え!」


私はショルクは何もないと思っていたが、ショルクを見ると嘘がバレたかのように焦っている。


「だ、大丈夫ですよ。これぐらい…」


「その油断がダメなんだよ。ほら見せて」


アンナさんが近づいて片手で腕を抑えて無理やりズボンをめくると、ふくらはぎの部分に浅めだが切り傷が付いていた。

アンナさんはこんな所まで気づいていたなんて…。


「ホーンラビットの角でやられたのかな「ヒール」これでよし」


アンナさんが手をかざしてすぐに退けると綺麗に治っていた。

一瞬で治ったのも驚いたが、魔法を無詠唱で使ったのにも驚く。


「アンナさん、魔法を無詠唱で使えるんですか!?」


「ん?使えるよ。無詠唱にしたいなら想像力を高めることだね。使う魔法を何回も見るとかしていたら出来るようになるよ」


私も頑張って勉強しているが、そう簡単にいかずにある程度しか破棄出来ない。

また驚かされていると、アンナさんはショルクから離れる。


「それじゃあ、他に傷は無さそうだし、昼食取ろうか。昼食は持って来てる?」


「は、はい。持って来てます」


腰のウエストポーチから固形の携帯食料を取り出す。これは口の中が乾燥するので余り美味しくないが、エネルギーにはなるのでよく売られているものだ。

それを取り出し食べようとすると、アンナさんに手で止められた。


「え?アンナさん?」


「……これを食べるよりかは作った方がいいから、今から料理するよ。それはバッグになおして付いて来て」


「「「え、えぇ!」」」


私はバッグに戻してアンナさんが行く後を付いて行く。


「アンナさん!料理って食材はどうするんですか!それに調理器具も」


ガダルは私も気に成っていたことをアンナさんに聞く。すると、首を後ろにしたアンナさんはニヤリと笑いながらこちらを向く。


「調理器具は持って来てるよ。冒険者には必需品だと思うから、今度から持って来た方がいいよ。一番気になってると思う食料はさっき狩ったばかりのホーンラビットがいるでしょ?さっき二羽持って来てるからそれを調理するよ」


え?さっき狩ったホーンラビット?今見た所持って来て無さそうだが。

そう思っていると、アンナさんがショルダーバッグから死んだホーンラビットを二羽取り出し、他にも包丁などの料理器具も取り出した。


「これをまずは解体するよ」


「ちょ、ちょっと待ってください!マジックバッグに入ったんですか!?」


私はみんなが思ったことであろうことを聞く。マジックバッグなのだろうが、あの大きい体のホーンラビットを丸々二羽分入れれるて他にも調理器具以外にも入っているだろうと思うが、普通のマジックバッグでは入りきれない筈だ。それこそ貴族が使う高級なマジックバッグじゃなければ。


「ん?入ったよ。それより解体の仕方を教えるね。まずは……」


またもや驚かされて、質問を普通に流された私は余り解体の話が入らないまま目の前の光景を見ていたのだった。


アンナさんは5分ほどでホーンラビットの解体を終わらせて、もう一羽の方を私達が解体することになり、間違っていれば後ろからアンナさんが教えてくれて、10分ほどで解体が終了する。

一息つきたかったが、次は料理で解体した部位を鍋に入れる。今回は簡単なスープにするそうで、アンナさんが一から作り方を教えてくれて、隠し味など色々教えてもらった。

シルヴィアさんにも調味料や切り方など色々教えてもらった。


料理が出来て配膳すると思って、何処で食べるか鍋から目を離して周りを見ると、いつの間にか後ろにテーブルと人数分の椅子が並んでいた。みんなも気付いたようで目を丸くして驚いていた。

アンナさんはそんなこと気にせずにスープをお椀に入れてテーブルに運び、この事には誰も突っ込まずにみんなで食べ始めた。

スープは獣臭さはないが、ちゃんと肉の味はしていて、とても美味しかった。

初めはダンジョン内で暖かい食べ物を食べることは出来ないと思っていたが、ちゃんとした物を食べれてしかも暖かく美味しいときたら、驚きと喜びが混じりあっていた。


ご飯を食べ終わるとアンナさんがまたマジックバッグから何かを出し始める。


「よいしょっと、服はこれでいいかなぁ。あとは剣と鎧か…」


「え!アンナさんそれって着替えですか?」


「そうだよ、鎧とかもさっきので痛んでるでしょ?服も着替えたいと思うから、必要になると思って持って来てたんだ。はい、これはアーチさんのね」


そう言い鎧と服、短剣を渡される。

見ると全員分の装備があるようで、アンナさんのマジックバッグはどれだけの量が入るのだろうか。今見た限りの物だけでも、普通は入りきれない筈だ。

私はアンナさんが出してくれた仕切りのパーティーションで隠れて着替えると、ある事に気付く。この服、私のサイズとほぼ同じなのだ。

着替え終わってアンナさんに聞きに行く。


「アンナさん、前から私のサイズ知っていて、このサイズの服を持って来てたんですか?」


「違うよ。全部のサイズ4着ずつ持って来てたんだ。それでさっき見た時にサイズは大体分かったから、合うサイズの服を渡したんだけど、サイズ合わなかった?」


「いえ、丁度良いサイズです。それにこの鎧とか前のより良いものですが…」


見た限り、前の革製の物より今着ている革製の方がかな作りもしっかりしていて防御力はかなりたかそうだ。


「別に良いよ。遠慮せずに使ってね」


だが、アンナさんは何てことないかのように言う。

ここまでの温情が普通あるだろうか。致せり尽せりで、まだ初日だが他のチームとは違う環境にいる気がする。


その間にみんなも着替え終わり、アンナさんも出していた物を全て片付けたようで、第三層から戻り、第二層からもう一度気を引き締めて出発する事になり、第二層に上がる坂まではアンナさん達がお手本を見せてくれる事になった。


アンナさんが凄いことは分かっているので、後ろでちゃんと見るのは凄く勉強になるだろう。

私はそう考えていたが、すぐにその考えを変える事になる。

アンナさんに私達も一緒に警戒するようにと言われていたので警戒していたのだが、先頭を歩いているアンナさんが足を止めて、私達を止める。私達は何故止まったのか理解出来ていない内に、アンナさんが凄い速さで走り50m先の十字路の右に入ったと思うと魔物の断末魔が聞こえた。

それでようやく私達も魔物が隠れていた事に気付いた。


アンナさんは戻って来て「お手本になってないね。ごめんね」と謝った、可愛い。

また魔物がいた時は、剣が捻じ曲がって見える速さで切っていたので分からず。次はシルヴィアさんがやったが、無詠唱で魔法を発動し一度で全滅して、クズハさんもやったが移動速度が速すぎて分からなかった。


唯一分かりやすくやってくれたのがセッカさんで、短剣を使ったどの部位を切り、いかに早く殺す方法だったが、周りに敵に囲まれても終始のんびりしながら敵の攻撃を避けて一撃で殺していったのは参考に出来ないだろう。


そうしている内に第二層に戻り、フォーメーションは前と同じで、敵の位置、数、能力を見極めながら戦った。

初めての第二層よりかは戦闘が楽になり、もう少し考えてやっていたらと思う。

1時間ほどして、今日は終わりにして戻る事になり、ダンジョン入り口までは楽に進めてダンジョンから出る。

ダンジョンから出ると先に出ているチームもいて、みんなヘトヘトに疲れているようだ。

私達も疲れているが、昼にちゃんとした料理と綺麗な着替えに着替えられてまだ他の所より良かったと思う。


少しすると全員帰って来たようで、今日は終了で宿屋に戻る事になった。

帰り際にアンナさんに挨拶しようと思ったが、もうその場には居らず。この貰った鎧などはどうしようかと考えたのだった。




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