表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/135

呼び名



セッカ、ショウヨウを呼び出した翌日、私はシルヴィアと2人でいつも通り賑やかな冒険者ギルドに買取金を受け取りに立ち寄っていた。

ここの冒険者ギルドも慣れたもので、レベラルで留住している冒険者の多くは殆ど顔見知りだろう。ナンパしてきて、半殺しにした事もある馬鹿も数多くいるが、今はレベラルに初めて来てナンパをする馬鹿を止めるストッパーとなって大活躍してくれる。まぁすり抜けてくる馬鹿は沢山いるが。

カウンターまで歩いて行くと、手を振る冒険者などに手を振り返しながら、カウンターにいるナターシャさんを見つける。


「おはよう、ナターシャさん」


「おはようございます、アンナさん。いつものですね、少々お待ちください」


いつも通り少し待ち、ナターシャさんが袋を持ってくる。


「今回の売り上げの分を差し引いた額、600万メルです。ご確認ください」


袋から見えるお札を目視で数える。正確に数えれるので、いちいち出して数える事はあまりしない。


「はい、きちんと入ってますね」


「毎回思いますが、見ただけで分かるんですか?重なっててわからないと思うんですが?」


「ちゃんと見えますよ。それにナターシャさんが騙す事する訳ないし」


「あはは、私そんなに信頼されてるなんて………あ、ところで今週末は何か用事があったりしますか?」


「………特にはないかな」


「それは良かった。この付き添いの依頼をやって頂きたいのです」


ナターシャさんは机の上に置いてあった1枚の

依頼書を見せる。

私とシルヴィアは覗き込み、書いていた内容は、スベーリア魔術学院生のレベラルのダンジョン内での実戦訓練の付き添いの依頼であった。


「へぇー魔術学院の生徒がここに来るんですか。私は別にいいけどシルヴィアはどう?」


「私も別にいいわよ。生意気でなければ」


「ちょっとそこは難しいかも知れません。生徒の皆さん結構自信家が多いですので、毎年何かとトラブルが起きてますし」


「うわぁ、面倒くさい奴じゃん」


「条件が私達が付き添う子達は1番下の成績の子達にしてくれたら受けるわ。上位の奴よりましそうだし」


「出来る限り善処します。では、受理する形ですね」


私はもう一度依頼書を読み直す。


「特にコレと言った必要なものは無しか」


「Cランク以上という制限以外はありませんね。今更ですがアンナさんはもうAランクでいいと思うんですが?」


「目立つのは嫌かな」


「え?何言ってるんですか、もう目立ってますよ。アンナさん、なんて呼ばれてるか知ってます?」


「え?」


「「赤眼の黒猫姫」ですよ。レベラルの薄暗い洞窟内でも見える赤い目とその容姿から言われ始めたらしいです。他にも「魔法剣士の反転強者」「風神怒濤の黒猫戦車」なんてものも聞きましたね………アンナさんコレ何したんですか?」


初耳だぞ!なんだこの恥ずかしい呼び名は!

私はハッと思い後ろを振り返ると、さっきまで賑やかだったギルド内が静まり返っている。


「テメェら………ワザと私の前で言わなかっただろ!」


「「「「「………………ぶっはははははははははははははははははははは」」」」」


「やっと聞いたのかよ、みんな言わないようにしてたけど、知ってるもんかとw」

「流石、職業反転者w」

「可愛いのに残念な子w」

「もう王都とかにも広がってると思うぞw」


「テメェら、死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」


「ヤバイ、逃げるぞ!仕事受けられない体にされるぞ!」

冒険者全員が一斉に魔物から逃げる時より速く走しってギルドから出て行った。


「あの馬鹿共、後であったらしめてやる」


私は後で何してやろうかと考えていると、シルヴィアのことに気づく。


「シルヴィア………まさかだけど知ってた?」


「…………くっふふふ、ごめんなさい、前から知ってたわ」


「もう!教えてよ!」


「ごめんね、アンナが知らないとは思ってなかったのよ」


「………はぁ、もう帰ろうか」


私とシルヴィアはギルドから出ると、宿屋とは違う方向に向かう。

そこはアカネが入って行った細い路地の所まで来て私は手を壁に当てる。半信半疑だったが、壁が縦に避けた。

あれ以来来ていないので少し不安を持ちながら私達は中に入る。

中はむせ返るほど暑くなっていた。その原因は炉で鍛治を打っている長い髪を後ろで束ねたグシュタードさんの姿が見えた。

私達が入ってきたことすら気づかないほど集中して作っていた。

見ること10分間、グシュタードさんが作り終えたのはなんの変哲も無い小さな指輪であった。だが、何故か分からないがその指輪を見ていると引き寄せられるような感じに陥っている。

私が見惚れているとグシュタードさんが気づいた。


「あら、アンナさん、お久しぶりですね。この指輪気になります?」


「お久しぶりです。はい、何故か気になって……」


「私の作るものは持つ権利があるものにしか身に付けることが出来ないの。付けてみる?」


グシュタードさんから渡された指輪を受け取ると、流れるように指輪が私の左手薬指の所につけた。


「あら、やっぱり相性が良かったのね。シルヴィアさんはこれが気になってたんでしょ?」


グシュタードさんはもう一つ指輪を作っていたようで私はこの指輪しか見えていなくて、全く目に入っていなかった。


「はい、付けてみて」


シルヴィアは受け取るとするりと左手薬指につけた。


「あらあら、どっちも新婚さんなのかしら?」


「え!?いやこれは偶然だよ」


「……私は意識してやったのだけど、アンナは無意識でやってるなんて、やるわね」


「うぅ…」


私は恥ずかしくなって顔を隠す。

いずれはね、結婚とか考えてるけど、まだ早いと思うよ、だってまだ私、10代だし、それに、今ここで結婚とかの話したら、クズハとかも怒っちゃうし、それに親にも連絡しないといけないし、まだ早いと思うんだよね。


「挙式どうしようか……」


「あらあら、ど直球!」


「あ、アンナ!?な、何言ってるの!?」


「へぇ?今なんて言ったの?」


シルヴィアは顔を真っ赤かにしていて、グシュタードさんも凄くニヤニヤしている。


「無意識であの言葉を……なかなかの策士」


「今は付き合ってる状態だけど、結婚は早くないかしら、私はいいけどみんなが怒ると思うわよ」


「結婚!?ま、まだ早いと思うのよ、うん」


「いいと思うけどね」


3人の誰でもない声が後ろから聞こえる。

振り返ってみると、アカネが壁の裂け目から入って来ていた。


「ほら、貸してみて」


私は指輪を外すとアカネに渡す。アカネは人差し指の爪を伸ばして指輪に何かを書き込み、その後何か小さく呟いて私に渡す。


「これで錆びる事も曲がったりもしなくなるし無くなりもしないよ」


「え?何をしたの?」


「ふふふ、ひ、み、つ、だよ。耐久をあげたとでも思っておいて、あと名前も刻んでおいたから」


それを聞き私は指輪の内側を見てみると、 「Eternal love.アンナ.シルヴィア」と刻まれていた。アカネはシルヴィアからも受け取り、同じ様に作っていた。


「よしこれでいい。それにしても久々にここに来たね、お姉ちゃん寂しかったよ」


「えぇーほんと?」


「本当よ、机の上で項垂れて後悔してたしね」


「ちょ!言わない約束でしょ!」


「アカネはほっておいて、今日はどのようなお話?」


グシュタードさんに私が話そうとする前にシルヴィアが答える。


「アンナ、特定の異世界に移動するのは無理よ」


「え?」


「あー、その話か。私は知らないかな、知ってると思う奴は知ってるけど」


「え!?誰?」


私は驚きと期待を寄せてアカネに詰め寄る。


「うーん、今は言えないかな」


「なんで!」


「色々あるんだよ、それに私達明日から出掛けないといけないし」


「そうなのよ、明日から出掛ける事になっから明日来てもここの壁から入れなくなるの」


「それなら今教えてよ!」


「………じゃあ、まずアンナはどうやってこっちに来たか考えてみて」


私はここの世界に来た理由を考える。私が死んで、この世界に転成させたのは………。


「女神スティファ?」


「まぁ、それしか居ないよね」


「そ、そうかぁ……」


やはり、もう家族と会える事は不可能だろうか。

私はがっかりしていると、シルヴィアが抱きしめてくれる。何も声を掛けないが、今はこの暖かい体温が心地良かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ