奈々美サイド〜囚われてから数日〜
王様とあった後はすぐに2人と会えて色々話し合い、ここからは簡単に逃げられないという結論になり機を待つことにし、各自1人部屋に戻った。
それから初めの頃は3人一緒で、一日中の殆どを王城内の庭で騎士達と一緒に特訓することが占めていた。休憩は朝昼晩の食事とお風呂ぐらいだった。
ある程度私達が騎士との訓練に慣れてきたのが分かったのか、次は実戦訓練として騎士との1対1での対人戦闘をした。
私は魔法師だが、近接戦闘の剣士としたり同じ魔法師とも戦闘して、ぼろぼろに負かされた私は実戦経験が無いことを実感した。
その後から、自室で魔法の特訓をやったり、本を戦術本を読み漁り、そして対人戦をやり、少しづつだが勝利を収めてきた私達は、次に魔物との戦闘訓練をする事になって、王城内に連れてきた魔物と戦闘をしたりした。はっきり言って手加減なしの魔物より、この王城内の人達、騎士、衛兵、魔法師、メイドさん達の方がかなり強いと思う。手加減されても負けるし。
そんな特訓が1ヶ月以上経ち、今日から王城の外に出れる事になっていて、今は雪乃と暁人、それに付添人でマリナさんが一緒に街ついて来ていた。マリナさんは服装がメイド服ではなく、カジュアルな服装であった。
初めて見るズベーリア王国の王都は、アナスタリカ聖王国の王都より華やかであり、品があり、絵で見たことのある日本の明治時代の頃のようなレンガの建物で溢れていた。
道も車道と歩道で別れていて、交差点もあり人や馬車が行き交っていた。
「なんか色々と凄いですね……」
「ここを何処だと思っているのよ。ここはスベーリア王国の中で1、2番を争う街よ、凄い筈がないじゃない」
「あ!あそこに服屋さんあるよ、ナナミン行こうよ」
「ちょっと、先にやる事あるでしょ!服を買うのはその後よ」
「そうだったね、まずは冒険者カード?だっけ?作らないといけないんだね」
「そうよ、貴方達はこの国での証明書が無いのだから作っておかないとね」
「そういうのって城で作れなんいですか?」
「証明書の偽造はいけないのよ、知らない?それとも、王城なら簡単に作れると思った?」
「まぁ作れるかと」
「色々と契約があるのよ………たまに作るけど」
マリナさんは私から目を逸らす。
やはり国のトップならやってるか、大きい組織ほどやってそうな事だと思っていると思うし。
「そんな事より、着いたよ。ここが冒険者ギルドよ」
私達の前には高さ15mはあり横は更に長い煉瓦の建物が建ってあり、大きな門のような入口からは冒険者が沢山出入りしていた。
「ほら行くよ、ここで止まると詰まるから」
私達が驚きのあまり固まっている中、マリナさんが背中を叩き中に入って行く。
その後を追って急いで入ると中は沢山の冒険者で賑わっていて、私が想像していた冒険者ギルドとは違い掃除が行き届いていて綺麗であった。
マリナさんの後を追い受付のカウンターまで行くと少し見渡し、空色の髪の女性に声をかける。
顔を下にして熱心に何かやっているのかと思ったが、よく見ると顔を伏せて項垂れていた。近づくとより分かり、彼女の周りだけ負のオーラが流れているようだ。
「あれ?ソフィアじゃない、どうしてここにいるのよ?」
「………その声は、マリン?」
「マリナよ、ソフィアが名前間違えるなんてどうしたのよ」
「はぁ………やってけないわ」
「本当にどうしたのよ」
マリナさんが慌てて肩を持ち体を揺さぶる。
「えっと、彼女は?」
「冒険者ギルド受付嬢のソフィアよ、私の飲み友なんだけど、名前を間違えた事なんて事なかったし仕事をしてないなんてどうしたのよ?貴方らしくない」
「私ね、ある冒険者の専属になって、王都に行く事になって後から来たのだけど………来てないのよ。1週間待ったんですけど、来ないんですよ。日が経つごとに最悪のことを考えてしまうんです」
「そうなのね………今夜でも飲みに行く?」
「そうですね一緒に飲みましょうか。まぁ毎日飲んでるんですけど。それより、後ろのはお客さん?」
「そうそう、彼女達の冒険者カードを作って欲しいの、作るのは魔物討伐ありの方ね」
「分かったわ、ええっとちょっと待ってて」
ソフィアさんはカウンターから離れてある部屋に入って行き、暫くすると戻ってきて着いて行くと水晶玉が置いてあった。
普通はギルド長と模擬戦闘をしないといけないらしいが、マリナさんが融通を利かせてくれたらしい。
ソフィアさんが説明をしてくれて、一人一人水晶玉に手を触れてカードを作っていく。
久し振りにステータスを見る、前に貰ったカードはもう無くなっていて、今のステータスを見たことはなかった。
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名前:野村 奈々美
種族:人間族
年齢:17
職業:魔法師
レベル:35
体力:1584
魔力量:1970
物理攻撃力:580
魔法攻撃力:987
防御力:452
器用さ:458
素早さ:456
スキル
速読lv3、気配探知lv3、身体強化lv1
魔法スキル
火魔法lv4、水魔法lv3、土魔法lv3、木魔法lv2
パッシブスキル
言語理解lv-、魔力量増lv3、剣術lv3
ユニークスキル
4属性魔法適正lv-
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うわぁ!かなりレベルが上がっている。
特訓の成果があってよかった、あんなに頑張ったのにレベルが殆ど上がってなかったら泣いているところだ。
私の他にも雪乃と暁人もカードを見せてくるほど喜んでいた。
今はソフィアさんが部屋から出て行き4人で待っている。
私もカードを見ていると、マリナさんに後ろからカードを取られる。
「あっ!」
「お、かなりレベルが上がったわね。流石勇者と言うところかな」
「頑張りましたからね」
「兵士達と互角以上に戦えるくらいには強くなったわよね。一応ここの兵士はそこらの国よりかなり水準高いわよ」
「へぇーそうなんですか………気になったんですけど、マリナさんが知る中で1番強い人って誰ですか?」
「あ!私も気になる」
「1番は当然我らが王、アギルバルト様よ。王以外あり得ないわ」
「じゃあ2番目は?」
「ん〜〜〜…………魔聖王国セシルの剣聖セフィロス、格闘家ラークス、獣王ラーム・カストリアかしら。どの人も闘技大会で優勝した人よ」
「剣聖、獣王は強そうですね……マリナさんは勝てます?」
「無理よ、1分耐えれたらいいと思うくらいよ。暗殺ならいけると思うけど」
「マリナさんでも無理かー」
「あら?雪乃、私と後で組手でもする?」
「え、遠慮しときます!」
「俺が相手して欲しいですね」
「ほぅ?言うね、帰ったら相手してあげるよ、まだ自身が弱いことを自覚するにはいいからねぇ」
暁人とマリナさんが火花を散らしているところに、ソフィアさんが笑顔で戻って来て、マリナさんの手を握る。
「やった!やったよ!」
「ど、どうしたのよ?」
「さっき話してた消息不明のアンナさんが生きてたの!私の専属の人が!」
「よ、良かったじゃない。それより、手を揺らすな!」
ブンブンと降っていた手を無理矢理離して離れる。
それより私が気になったのは「アンナ」と言う知り合いの名前が出てきたことだ。
この世界に同名の人など沢山いると思うが、何故か気になっている。
まだ喜びを抑えきれてないソフィアさんがマリナさんに掴みかかっているところに聞いてみる。
「あのソフィアさん、アンナさんってどんな人ですか?」
「え?アンナさんは可愛い獣人女の子ですよ」
「え!もしかして黒猫の?」
「えぇ、そうですよ。背が低くて赤い目で可愛いんですよ。けど、使う武器は背丈と同じくらいの大太刀なんですよ」
私は驚きを隠せないでいた。
同姓同名であり姿も同じで使っている武器までもと同じ、ここまでの偶然があるのか?まさか………。
「あら?奈々美が知ってる人なの?」
「いえ、多分違う人ですね」
「まぁ、今はレベラルにいるらしいですので知らないと思いますよ。私もさっきレベラルから来た冒険者の人の話を聞いて分かったんですから。私は早くギルド長と話し合うので、またギルドで用があれば呼んでください。では」
ソフィアさんはあの状態のまま部屋を出て行った。ギルド長とは何を話すのか分からないが大変そうだ。
その後私達はギルドから出て、殆ど着替えがなかったので服を買い漁り王城に帰ってきて晩御飯を食べて、今は雪乃の部屋で集まっていた。
「で、どう思う?」
「主語を言わないと分からないぞ。まぁ大体察するが、アンナの事だろ?」
「そうよ、アンナのことよ」
「話を聞いてたら、アンナと瓜二つだよね。ビックリしちゃった」
「私もよ。ここまで偶然が重なってるなんてそうそうないことだと思うわ。だから案外アンナが奏人だと思うの」
「おいおい、それはないだろ。ここはゲームの世界じゃないし、奏人は男だ、ネカマでも性別変換までしないだろ」
「けど、奏人くんだからあり得そう」
「あり得そうなのよね。それでなんだけど、マリナさんに聞いてレベラルに行ってみない?」
「いいね!私は行きたいよ、アンナのことも見てみたいし」
「俺も賛成だ。アンナがハズレでも旅行が出来るしな」
「暁人は何でも悪い結果の方から考え過ぎよ」
「普通だろ?奏人も同じじゃないか?ゲームしてる時とか特に」
「奏人は最高のことと最低のことどっちも同時に考えてるわ。ゲームの時だけ」
「「ふはははは」」
私と暁人が大笑いして話し合いが終わり、私と暁人は自室に帰って行く。暁人とは方向が逆なので、帰りはいつも1人だ。しかも、雪乃の部屋から1番遠く、少し薄暗い王城の通路を歩いて行く。
だが、私の部屋の近くには良いところがある。それは、王城内にある小さな小池があるのだが、夜になると蛍のような虫が綺麗に光っているのだ。毎回帰りはそこに立ち寄り、そこに備え付けてあるベンチで、少し池の水面や魚や虫、風景を楽しんでから部屋に戻るのだ。精神が安らいで眠りやすくなっていると思う。
そして、今日も立ち寄って行こうと思っていると、いつも座るベンチに誰かが座っていた。
流石に他の人と見るのは気を使うので、その前を通るだけにしようと思ったが、月明かりが出てきて座っている人物が誰か鮮明に見えて立ち止まってしまう。
あり得ない、あり得ない、そんな筈がない。だってあれは……。
「アンナ………?」
月明かりで映し出されたのは、2つのピンっと伸びた猫耳と、暗い中でも分かる2つの赤い目があるアンナだった。
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