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アンナの秘密



宿に戻ってからは大変だった。

まずはガウェインを4階まで上げる事だ。装備を外したとしてもガタイが大きいので体重は重いので運ぶのに苦労した。

その後の皆んなが帰って来てから一から説明するのも色々と分からないこともあり大変だった。

今は私の部屋でシルヴィアと椅子に座り、お酒を飲みながら話していた。


「ガウェインが負けるなんて……あり得ないと思ってたわ。対人ならほぼ勝ち目ないと思う」


「ガウェインは対人より大軍戦の方が強いよ。対人の方も強いけど、全体の方が効果を発揮しやすいからね」


「どっちでも強いと思うわ。けど、アカネはそれ以上なのかしら……」


「アカネは対人戦専門かな。相手の行動を観察して予測出来るようにするには1対1じゃないと流石に無理だよ」


「アンナは出来るの?」


「ある程度予測は出来るよ。けど、あそこまで完璧にやれと言われても出来ないな」


「そう………………アカネにまだ聞きたいことあるのよね?」


「………あるよ。だからまた会いに行くよ」


シルヴィアは何も言わずにお酒を飲み、グラスの中に入っている氷の音が静かな部屋の中に響く。

少し飲むとシルヴィアは息を吐いて、私の方に向く。


「それって私に秘密にしてることよね」


「………え?」


私は驚きグラスを落としたが、机からあまり離れてなかったので溢れることもなく落ちる。

2人の間に沈黙が包む。


「やっぱりか………まぁ大体分かってたけど」


「え、えっとー」


「アンナが何を聞きたいかは大体予想はついたわ」


「え!何のことか分かってるの?」


シルヴィアは少し呆れた様な顔をして話す。


「………分かってるに決まってるでしょ?アンナが異世界人なんだから当然元の世界に変えれる方法を探す、なら聞く相手はこの世界の権力者か、アカネの様な強い人物に聞くしかないでしょうね」


「な、何で異世界って、」


「召喚魔法でどれだけ人を出していると思っているのよ。ちょっと考えたら分かるわよ」


「いつから気づいてたの?」


「アルーラの町でクサントスとクズハを召喚した後ぐらい」


「そうかぁ……」


私も一気にお酒を飲む。こちらの世界に来てからは結構飲んでいるので慣れているが、飲み過ぎると酔うのは分かっているので適量のグラス1杯分を飲み干す。


「正直に話すよ。私は異世界人で元男性です!」


「お、思い切って言うのね。って男性!?」


シルヴィアは驚いて席から立ち上がる。


「そうだよ、私は1回死んでるんだよ。そしてこの世界でこの体で生まれ変わった感じかな」


「だ、男性だったのね……しかも死んでるのね」


「そうだよ!理不尽だよ、いきなり通り魔に横腹刺されたんだよ!痛かったなぁ……」


「そ、そうなのね。それより、ベヒモスにやられた方が痛そうだったけど」


私は手を伸ばして酒ビンを取り、グラスに注ぎ飲む。


「どっちも痛いに決まってるじゃん!けどまぁ、死んだなぁって思う思ったのも3回目なんだけどねぇ………昔、父さんに森の中で修行した時に谷から落ちて死にそうになったんだ……気付いた時は病院にいて、父さんに運ばれてたらしいんだ。まぁその父さんは母さんに拳骨落とされながら怒られてたけど」


「お父さん凄い人だったのね……」


「そうだよ、父さんは自衛官の将官でね、凄く強くて怖い人で、とても優しい人だよ。母さんも子供思いの人だよ、背が低いから子供と間違えられることが多かったけどね」


「いい家庭だったのね」


「うん。それに自慢の妹が居てね、兎に角可愛い、シルヴィアと同じくらい可愛い妹が居るんだよ。家事も出来る凄い妹なんだ。まぁ、嫁には出さないけどね」


「シスコンなのね」


私はお酒をグラスに注ぎまた飲む。


「皆んな言うけど、シスコンじゃないよ!可愛い妹を持ったら分かることだよ」


「私は一人っ子だったのよ」


「じゃあ、結婚したら子供は3人は欲しいね。妹の可愛さが分かるから」


またお酒をグラスに注ぎ飲む。


「ちょ、ちょっと待って!急に飛び過ぎよ!それに私とアンナでは子供出来ないし、子供は妹と違う感情を向けると思うわよ。あと、お酒飲み過ぎよ」


シルヴィアは私の手からグラスを取り上げ、グラスの中身を全部飲み干す。


「ふぅ、アンナ飲み過ぎて酔ってるわよ」


「酔ってない!それにやってみないと子供出来るか分からないでしょ!」


「酔ってるわね………どうやっても子供は出来ないわよ。ほらさっさと寝るよ」


シルヴィアは私の両脇を持ち上げてベッドに運び横にして、その横にシルヴィアが来る。


「シルヴィア〜、そんなことないでしょ?」


「無理なことは無理よ、明日恥をかくのはアンナよ。まぁもう遅いけど」


「不可能なんてことはない!人間何でも何遂げてきたから」


「けど0からは何も産まれないわ。ほら、おやすみ」


シルヴィアは頭を撫でて私はだんだんと瞼が落ちてくる。


「うぇ〜そんなこと嫌だなぁ…………」


「………寝たかな」


アンナがスヤスヤと寝始めたのを確認したシルヴィアは部屋を出てクズハとガウェインの部屋に入る。

中はクズハが武器の手入れをしていて、奥にはガウェインがベッドで眠っていた。

今日は看病をする為、ガウェインとアリスを入れ替えているのだ。


「シルヴィアですか、どうしたんですかこんな時間に」


「ちょっとアンナと話しててね、アンナが異世界人だって事を聞いたの」


クズハの手が止まるが、また刀の刃の手入れをし始める。


「………そうですか、アンナとはどうするつもりで?」


「愚問ね、ずっと付いて行くわよ。アンナが何処へ行こうとね」


「それわよかった、アンナはメンタル面が脆い気がするのでね」


「メンタルか………さっきも家族の話しばかりしていたわ」


クズハの手紙止まる。


「アンナの家族………拙は聞いたことないですね」


「え?いつも一緒に居るんじゃないの?」


「いつもは違います。毎日数時間一緒にいるだけです」


シルヴィアは困惑する。クズハが言っていることが理解出来なかった。


「えっと、じゃあアンナがもともと女じゃなくて男だったのは知ってるわよね?」


「はぁ?何言ってるんですか?シルヴィアでも流石に怒りますよ」


「ええ??アンナの家族に会ったことは?」


「無いですね」


「じゃ、じゃあ、アンナとクズハは何処で出会ったの?」


「宿屋の「色彩」です」


「ん???」


シルヴィアは更に困惑し頭を抱える。

クズハはその様子を手を止めて見ている。


「1人で頭を抱えてどうしたんですか、さっきの受け答えでおかしなところがあるんですか?」


「うぅーーーん、色々分からないことばかりだわ、一旦寝て明日アンナに聞いてみる」


「そうした方がいいですね、馬鹿は風邪を引いても分からないと言いますから、恋の病も大変ですよね」


「ちょっと何言ってるか分からない」


「………何でもいいでしょ、ほらさっさと戻って寝るんです」


クズハはシルヴィアの肩を押して廊下に押し出す。


「分かったわよ、おやすみ」


「ええ、おやすみなさい」


シルヴィアはドアが開く閉まったのを見て、自室に戻り、アンナが寝ているベッドに向かうとあることに気づく。それはアンナが涙を流して横になっていた。


「…………アンナ、ごめんね」


シルヴィアは毛布に入ると腕を回してアンナを優しく抱きしめる。


「アンナも家族に会いたかったんだよね………私が代わりの家族になれたらいいなぁ………」


シルヴィアは抱きしめながら考える。

元の世界に戻る方法、私が知ってる限りではなく全く無く、あったとしても、移動したその世界が全く違う場合のものだ。

昔、1人の勇者が元の世界に行く為に異世界移動の魔法を使ったが、全く知らないこの世界に来たことを私は知っている。そしてその勇者が絶望して自殺したことも。

アンナにはそうなって欲しくない、異世界移動の方法が分かっても、私は絶対に止める、私が命を張ってでも止めるつもりで行こう。

そうじゃないとアンナを…………。


シルヴィアはいつのまにか寝ていて、アンナのことを強く抱きしめて眠っていた。



よければブックマークと下の評価ボタンを押してください。執筆が捗ります。不備な点があれば感想にて優しく教えてください。よろしくお願いします。


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