報酬と再会
翌日の朝、1階のレストランで朝食は取らずに各部屋でテトラ達に作ってもらったサンドイッチを食べて、私とシルヴィア、ガウェイン、スイゲツ、クロワで冒険者ギルド行き報酬と情報収集、テトラとヘプタ、クズハ、アリスちゃんは食料と衣服の買い出しをしに行く。
朝のレベラルは海洋の町と言われるだけであって中央の広い道ではそこら中で朝市が開いており、取れたての新鮮な魚介や野菜、肉類などが売られており人で賑わっている。
その人混みの中を通り抜けて、一際大きな木造の建物の冒険者ギルドに入る。
中はアルーラのギルドより広く、中央には大きな木造の柱が立っていて、柱の表面は冒険者達がつけた自身の名前などが掘られており歴史を感じる。
私達がギルド内に入ると、前と同じく冒険者達が目を向けてくる。女子2人に背が高くてガタイの良い男がいるのだ、注目するなと言う方が無理だ。
アルーラの時は人が少なかったので何も起きなかったがここには冒険者がかなり居て面倒な事になるかと思っていたが、私の後ろでガウェインが睨みを利かせているのか誰1人としてちょっかいなどをかけるものは居らず、そのまま受付に直進する。
受付には黒髪を後ろで束ねて眼鏡を掛けて作業をしている女性がいた。やはり受付の人は美人ばかりだ、美人の方が対応がいいのかもしれない。
私達が来た事に気付き作業を中断して顔を上げる。
「いらっしゃいませ、ご用件は何でしょうか?」
「あのメーラさんの護衛の報酬のことで」
「分かりました、少しお待ちください」
席を立ち後ろの書類棚の所に歩いて行きった。
「ナターシャさんもそうだけど、受付の人は美人ばかりだよね」
「そうね………ナターシャって誰?」
「さっきの受付の人、胸元のプレートに名前書いてあったよ」
「今の一瞬で名前を見れるなんて、アンナは凄いわ」
「そうかな?相手の動きを注目して見ておけばすぐに分かるよ」
シルヴィアと話している内に、ナターシャさんが口元に手を置きながら戻ってきた。
「………えっと、貴女がアンナさんですか?」
「はい、メーラさんに伺ってませんか?」
「いえ、お名前は拝見させてもらっていましたので、ギルドの方で調べていたのですが、まさか私より年の低い少女とは思っておらず………それにCランクですね」
「見た目はちんちくりんですから」
「こちらのご無礼です。先程のメーラ氏と奴隷の護衛の報酬は10万メルです。それに追加でオーク20体、ゴブリン24体、ウッドフール4体の報酬分20万メルがお支払いされます」
「ちょ、ちょっと待って護衛の分はともかく魔物の分は知らないよ」
「魔物の方はメーラ氏が魔物の証明部位を取っており、アンナさんに渡して欲しいと伺っています」
魔物の素材はまだアイテムボックス内に沢山あるので要らないやって思って取らなかったけど、まさかメーラさんに渡されるなんて。
「その分は私達は受け取れません。メーラさんに渡しておいてください」
「それは無理です。アンナさん、契約書に書かれている事をお読みしましたか?」
「………契約書?」
え?何があったっけ思い出せない。
私が頭を抱えていると、ナターシャさんが1枚の契約書を見せ、ある一文を指差す。
『依頼人が手に入れた素材及び物資は依頼を受理した者にも受け取る権利がある。依頼人が報酬に加算する場合受理した者は拒否権はない。ただし、ギルドの審査が通った物のみ』
なんだこの文章は、人権があるのかないのか微妙である。拒否権くらいあっていいだろう。
私の呆れた表情を見たのか、ナターシャさんは契約書を戻す。
「お分りいただけたでしょうか」
「………はい、仕方ないので受け取ります」
追加された報酬全てを渋々受け取り、シルヴィア達とギルドを出ると人がごった返していて、朝市だからかと思っていたがギルドの前で何か起きているようで冒険者ばかりで人だかりが出来ていた。
面倒なので避けて通ろうと思っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。だが、その声はあった時とは声色が違うかった。
「あの声」
「マスター?」
私は気になって人混みを分けて通ろうとするが、屈強な冒険者達を退かすことは出来ず跳ね返されるとガウェインにキャッチされ、そのまま肩車させられた。
「これで見やすくなるでしょう」
「うん、ありがとうね。けど、めっちゃ恥ずかしい」
ガウェインの背はかなり高く190cmはあると思う。そしてその肩の上に乗っている私は第2の注目の的として見られている。
だが、私よりも人だかりの中心では、女2人対男3人で向かい合っていた。
1人は1日前にあったアカネとその横にかなり怯えている背の高い女性がいた。
そして男の方も見覚えがあった。確かアルーラの町に出禁になった馬鹿3人だ、名前は忘れた。名前を思い出そうとする前に、怒声が聞こえてくる。
「俺はそこの女に用があるんだよ!金を盗んだのは分かってんだよ!」
「はぁ?カスどもが、それが私の友人に対する態度か?」
「はぁ?こっちが言いたいわ!人を舐めてんのか?」
「ちょっと、アカネちゃんやめようよ。その傲慢さは羨ましいけど、この能無し野郎共に無駄に使うべきではないよ」
「おい!このアマなんて言った!」
「グシュタードはじっとしてればいいから。まずは私の眼下の人間は跪くのが道理だろう?」
「このアマ、横から入ってきやがって何様のつもりだ?」
「アカネ様だ。二度言わなければならないか?『跪き黙れ』」
「はぁ?何言ってっ」
男Aが反論した瞬間、3人同時に足と手を曲げ跪く。
『そして無能な自身を呪い、自身の手によって自害せよ』
アカネが発言した瞬間、3人とも自身の手で手加減なしで自身の首を絞める。
「アカネちゃん、流石に殺すのはダメだよ、目立つからね、あとそのスキル欲しい」
「………そうね、辞めとくわ。別に目立っても私には関係無いけど。『自由にしなさい』あとこのスキルは渡せないわ」
「はぁー羨ましいなぁ」
「さて、やることやりましょうか」
男3人は泡を吹いて気絶していて、その横を通り過ぎる直前に後ろに振り返る。
「そうそう、ここのギャラリーの皆さん『今あったことは忘れろ』、それじゃあね」
そう言い歩いて行った。
その場の冒険者達は一瞬ぼーっとした後、目の前で倒れている男3人をギルド内に持って行った。
そして、私達はこの場を立ち去ったアカネとグシュタードを追いかけ始めた。
「何あのスキル、神経掌握のスキル?」
「知らんが我の「酔夢覚醒」のお陰で助かったのは良かった」
何故私達だけ記憶を消されていないのは、スイゲツのスキル「酔夢覚醒」を全員にかけてもらっていたのだ。
効果は幻惑解除やステータス変化などの状態異常無効、今回の操作不能などだ。デメリットは1日1回のため、この後アカネに記憶操作されたらおしまいという事だ。
「スイゲツの念の為が役立って良かった」
「ふふん、我をもっと褒めろ」
「マスター、それよりアカネを追ってどうするんですか?」
「そうよ、追いかけてきたって分かったら何をされるか分からないわよ」
「ちょっと聞きたい事があってね」
アカネには約束があるから会って話してみたい。それとも私は記憶を消されるかもしれないが。
私は少しの期待と緊張をしながらアカネの後を追いかけた。
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